映画「海と毒薬」観ました

製作:日本’86
監督:熊井啓
原作:遠藤周作
ジャンル:サスペンス/ドラマ
【あらすじ】毎晩のように米軍機による空襲が繰り返されていた昭和20年5月。医学部の研究生、勝呂と戸田は、物資も薬品も揃わず多くの患者に満足な治療が行えない中、教授たちの派閥争いに組み込まれてゆく。そんなある日、捕虜8名を使った生体解剖実験を手伝えと教授たちに言われ…。
これは疲れました…。
モノクロで生々しさがアップしてるような手術シーン(生きた動物を使ったらしい…)も重苦しい空気に押しつぶされそうになるんだけど、やはり人間的な感覚が麻痺してきている医者たちの言動の方が精神的にきます。
葛藤を抱える勝呂と対照的に描かれる冷淡な戸田は、何も感じなくなってしまった事に疑問を覚えている分、少しは人間味を感じるんですが(実は一番心が弱かったのかも?)、そんなところはとっくに通り過ぎてしまったという感じの教授が…。今から殺そうという若者を前に、ニコニコ笑いながら対応する様子には寒気を覚えました。
看護婦たちも、好きな人のためとか復讐の為とか、生体解剖した遺体の側で平気で話しているのが恐ろしい。殺し屋にも見えた教授ですら、手術室に戻ろうとして逡巡したあげくにやめたのに…。女が一番怖いのか!?
患者を”物”扱いするのは日常茶飯事だし、戦争で死が間近にあるというのも描かれていて、心が休まるのは勝呂が海を眺めるシーンぐらいでした。手術室の床を流れる水の音や、生体解剖実験後に響く赤ん坊の泣き声など、音の使い方も印象的。
良心というものの脆さを見せ付けられた二時間でした。
しかし、ゴーグルなしで手術とか、サンダルみたいな履物とか、滑りやすそうな床とか、血をぬぐったガーゼを床にポイポイ捨てていくのとか…別の意味でも怖い映画です。しかもリアリティを追求して、血液はスタッフから採血したものを使ったとか…。今じゃ考えられないですね。
■ Comment
遠藤周作は好きなのですが、これはキツそうですね.....
これは、本で読む方がいいのでしょうか。
でも、考えさせられる話でしょうね。今の時代にも通じるものがありますよね。
感覚の麻痺というのも頷けます。
今日はコメントを有難うございました☆
この作品ですが、例の代官山のお店に
mardigrasさんのイラストがありました。
宵乃さんのイラストとは感じが違ってて、でもやっぱりこの二人を描いていらして、
お二人ともそれぞれの個性が出ていて、凄いです~♪
>これは疲れました…。
お疲れ様でした。。。
>今から殺そうという若者を前に、ニコニコ笑いながら対応する様子には寒気を覚えました。
映像で見るのも怖いですが、文章を読むと
色々と想像して怖いです、すごく。
今でも私の頭の中で、ある文章が忘れられずこびりついています。
そう、今から殺そうとする人間に対して・・・!
>女が一番怖いのか!?
まぁいつの時代でも・・・ね。
>患者を”物”扱いするのは日常茶飯事だし・・・
苦しくなりますよね・・・。
>音の使い方も印象的。
>良心というものの脆さを見せ付けられた二時間でした。
いつか再見したいと、今初めて思いました。
>しかし、ゴーグルなしで手術とか、サンダルみたいな履物とか、滑りやすそうな床とか、血をぬぐったガーゼを床にポイポイ捨てていくのとか…別の意味でも怖い映画です。
まぁ当時の技術水準か?と。
>しかもリアリティを追求して、血液はスタッフから採血したものを使ったとか…。今じゃ考えられないですね。
この監督なので・・・どうもすみません。
(私が謝ることもないのですが・・・)
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ところで、さっき「25年目のキス」のコメント返信で、
バリモアちゃんの初監督作品って書きましたが
初製作作品の間違いでした。
書きなおすのも辛くて・・・こちらで失礼いたします。
2012/12/09 19:00 miri〔
編集〕
いらっしゃいませ!
かえるママさんは遠藤周作がお好きでしたか。わたしは彼の作品はきちんと読んだ事がありません。この作品が初ですね~。
映画は映像の印象が強く残りそうですが、原作は文章から想像が膨らんでもっと強烈みたいです?(未読ですが…)
> でも、考えさせられる話でしょうね。今の時代にも通じるものがありますよね。
> 感覚の麻痺というのも頷けます。
ホント、見終わってしばらく頭から離れませんでした。
戦時中でなくとも、周りの影響で良心が薄れていくことはあるんでしょうね。恐ろしいです!
いらっしゃいませ!
お~、mardigrasさんがこの作品のポップも描かれていたとは。
いつか観てみたいなぁ(こればっかり…)
> 今でも私の頭の中で、ある文章が忘れられずこびりついています。
> そう、今から殺そうとする人間に対して・・・!
やはり、原作の方が想像力が掻き立てられて怖いですか。このシーンはホント怖かったけれど、原作はもっと…!読むのが怖くなってきました。
> >患者を”物”扱いするのは日常茶飯事だし・・・
> 苦しくなりますよね・・・。
これは今もあるようで哀しいです…。以前、医者を目指す若者のドキュメンタリーを観たんですが、死に対して何も感じなくなるのだけは嫌だと、日記に書いているのが印象的でした。
> いつか再見したいと、今初めて思いました。
わたしの感想でそう思って頂けて光栄です。これは再見するのに相当気合が必要な作品ですもんね~。元気な時に挑戦してみて下さい。
> この監督なので・・・どうもすみません。
> (私が謝ることもないのですが・・・)
あはは、好きな監督さんの事だと自分のことのように考えてしまう気持ち、わかりますよ。よい作品を作ろうという気持ちが強い方なんですね。
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>
> ところで、さっき「25年目のキス」のコメント返信で、
> バリモアちゃんの初監督作品って書きましたが
> 初製作作品の間違いでした。
そうでしたか。彼女も色々な方面から映画に関わって、根っからの映画好きなのかな~。
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