忘却エンドロール

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映画「あるじ」観ました

 | コメディ  com(3) 
Tag:デンマーク 

あるじ
製作:デンマーク’25
原題:DU SKAL ARE DIN HUSTRU
監督:カール・テオドール・ドライエル
ジャンル:★コメディ/ドラマ

【あらすじ】家族に対して横暴な振る舞いをし、妻のイダにも容赦なく当たっていたヴィクトア。見かねた彼の元乳母マースは、イダにしばらく身を隠すように言う。マースはイダが病気で療養していると説明し、身の回りの事は自分でやるようにヴィクトアに言いつけるのだった。

冒頭で主婦が主役、主婦のための作品!と断言しているだけあって、普段から不満を抱えている主婦にはスカッとする作品です。
この父親がもう酷いったらないんですよ。口を開けばネチネチ嫌味しか出てこなくて、「お前は性質の悪い舅か!」と言いたくなる様な腹立たしさ。手を出さなきゃ虐待じゃないと思ってるんですよね~。既視感はんぱなかったです。周りの人々が「本当は愛し合ってる」と信じてるのが不思議なくらい冷酷な態度でした。
そんな虐待されるイダを黙って見ておられず、彼の元乳母マースが一計を案じます。
現代のコメディの原型でしょうか。他人の気持ちがわからない、わかろうとしない人間が、その立場になって悪戦苦闘を経てやっと自分の過ちに気付くという流れです。
あの冷たい目をした横暴な旦那が、しだいに乳母に叱られた幼い頃の記憶が蘇ってきて、従順な教え子みたいになっていく過程が痛快でした。なんたって、最初は父親の真似をして「凍えてしまえ!」と吐き捨てるように言った娘が、母親を恋しがる父親の姿にほだされそうになってしまうくらいでしたから。
最後のプライドを打ち砕くため、マースが手紙を使った一連の罠も面白かったです。

あ、書き忘れたけどサイレント映画です。こんな古い作品なのに、まったく時代を感じなかった。まだまだそこら中にあると思うよ、こういう家庭。

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2012/12/04 18:46  

覚えてます覚えてます!

宵乃さん、こんばんは。この映画私も観ました♪

でもこれを観た時に、この威張り腐った旦那さんにムカムカして「どうしてこの奥さんは、"夫のもとに帰りたい"だなんて思えるんだろう?どうしてここまで尽そうとするんだろう??」と思い、私が他人に対して冷酷すぎて感情を汲み取れないのか!?と悩んで結局レビューを書けないままでした^^;(よくこういうことがあります(>_<))

女性が離婚して自立するとか、ご主人に楯突くといったことが許されない時代だったのかなぁと、現代の感覚で観てしまうと前半の奥さんのあまりの健気さに辛くなってしまったのですが、でも宵乃さんの

>他人の気持ちがわからない、わかろうとしない人間が、その立場になって悪戦苦闘を経てやっと自分の過ちに気付くという流れです。

という文章を読んで、ドライヤー監督の描きたかった部分はここなんだなぁと思えました。監督自身の出生においても実の母親が大切にされていなかったという事実が、温かな家庭を取り戻すというラストにその思いも込められているのだろうなと改めて気づかされました!

自分のチッポケなムカムカより、ずっとずっと広い視点でこの映画をご覧になっていた宵乃さんのレビューに感謝感謝です。こうやって誰かのレビューを読んだり、ものの見方を教われることが本当に楽しいです^^

あ、乳母の出てくるパートはユーモラスで楽しかったですね。頼もしい乳母さんでした!宵乃さんのイラストの温かな雰囲気に、改めてこの映画に対してホッとしたものを感じられました。ありがとうございました♪

2013/07/08 20:12  はなまるこ〔編集

>はなまるこさん

いらっしゃいませ、はなまるこさんもこの作品をご覧になってたんですね。

> でもこれを観た時に、この威張り腐った旦那さんにムカムカして「どうしてこの奥さんは、"夫のもとに帰りたい"だなんて思えるんだろう?…

そうそう!
あの状態だけを見たら、もう彼女は旦那に上手く飼いならされてしまってるとしか思えませんでした。わたしなら確実に怒りのプレッシャーをじわじわ与えてるところです(笑)

> 私が他人に対して冷酷すぎて感情を汲み取れないのか!?と悩んで結局レビューを書けないままでした^^;(よくこういうことがあります(>_<))

わたしも小さなことに引っかかって、視野が狭くなってしまう事がよくあります。
とくに「第三の男」では、世間一般の評価と自分の感想がまるで違って、自信なくしちゃいましたよ~。

> 女性が離婚して自立するとか、ご主人に楯突くといったことが許されない時代だったのかなぁと、

そうですよね…。こういう作品や歴史モノを観ると、タイムトラベルが実現しても過去には行きたくないなぁと思います。時代ごとの風潮や常識を伝える作品は素晴らしいけど、実際には体験したくないものって案外多いです。

> 監督自身の出生においても実の母親が大切にされていなかったという事実が、温かな家庭を取り戻すというラストにその思いも込められているのだろうなと改めて気づかされました!

お~、そのような背景があったとは!
わたしの方こそ、はなまるこさんとこうやってお話できて新たな発見がありました。これからもよろしくお願いします。

> あ、乳母の出てくるパートはユーモラスで楽しかったですね。頼もしい乳母さんでした!宵乃さんのイラストの温かな雰囲気に、改めてこの映画に対してホッとしたものを感じられました。ありがとうございました♪

イラストも観て下さってありがとう♪
このシーンには乳母はいないけど、丸く収まったのをホッと見守っているという、鑑賞者と同じポジションかな~。彼女のおかげで最後まで楽しく観られました。
2013/07/09 10:57  宵乃〔編集
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