映画「ある公爵夫人の生涯」観ました

製作:イギリス・イタリア・フランス’08
原題:THE DUCHESS
監督:ソウル・ディブ
原作:アマンダ・フォアマン
ジャンル:★歴史劇/ドラマ
【あらすじ】18世紀後半のイギリス。スペンサー家の令嬢ジョージアナは、世界有数の名門貴族デヴォンシャー公爵と結婚する。だが彼は男子の後継者をもうけることにしか興味がなく、自分をまるで愛していないという現実を突きつけられ…。
これは凄かったですね~。ずっしりきたし、終盤はボロボロ泣いてしまいました。
最初はジョージアナを演じるキーラ・ナイトレイのキツイ表情はどうだろうと思ってたんですが、彼女の苦悩の日々を見るうちに納得。こんなに芯の強そうなひとでも、かろうじて耐えられるかという張り詰めた雰囲気が緊張感を増してました。
耐えるばかりの夫婦生活に沈む表情と、それを埋めるように社交界での八方美人な笑顔が増えていくんだけど、それが娘の前では別人のように幸せに満ちた表情になるんですよね。
イラストは娘が生まれて間もなくの頃。この作品のなかで初めて彼女を美しいと思ったシーンです。
一方、彼女に対してあまりにも無情であり続けた夫、デヴォンシャー公爵を演じるレイフ・ファインズも素晴らしかった。結婚は契約でしかなく、妻の役割は男児を産むことだけ。会話すら無駄な事だと思っているかのように、用がある時しか話さず、犬と戯れる時以外はほぼ無表情。
まるで苦痛に気付かないフリをする病人のようだと思っていたけど、彼を苦しめていたのは重すぎる家名…跡取りが生まれない間は常に、先祖代々の亡霊に押しつぶされそうな気持ちでいたんでしょうね、きっと。
そんな彼らの中に入ってきた強かなエリザベスも、辛い立場でした。
暴力亭主から子供たちを取り戻すためならどんな手段でも、と心に決めていただろうに、同じ様に結婚生活で苦しんでいたジョージアナを裏切った事、その罪悪感がひしひしと伝わってきます。ジョージアナの背中を押し、ひと時の甘い恋を味あわせたのも、少しでも償いたいという気持ちがあったからでしょう。
ジョージアナが娘たちのために戻った時、愛人との子供を手放した時、最も彼女の気持ちを理解し、子供への深い愛情と別れの苦しみを自分の事のように感じていたのは、エリザベスだったんじゃないでしょうか。
友情を裏切った事実は変わらないけど、彼女と寄り添う姿を見たらエリザベスがいてよかったと思ってしまいました。
でも、こんな彼らを見て涙しつつも、一番共感したのが屋敷の使用人たちだったりするのはどうなんだろう(笑)
どんなに近くにいても、見ていることしかできない辛さとか、映画を観ているわたしたちと近いものがある気がします。
■ Comment
☆ 美しいですね、描き甲斐があったことでせう ☆
3人とも自由のない貴族(それも公爵!)という
立場・家柄のせいで人生がこうなってしまいましたね。
ウイッキで事実を読んだら、泣けましたね。
でもまぁこの映画は見ても見なくても良かったな~と思いました(笑)。
まぁ自分的にそういう映画だという意味ですので・・・。
>でも、こんな彼らを見て涙しつつも、一番共感したのが屋敷の使用人たちだったりするのはどうなんだろう(笑)
>どんなに近くにいても、見ていることしかできない辛さとか、映画を観ているわたしたちと近いものがある気がします。
これは、宵乃さんの仰る意味もあると思うのですが、(私も使用人共感ですので)
いつも思うのは、やっぱり、今現代の日本に生きる私達には、
「貴族」とかがピンとこないからではないでしょうか?
前世ではお互いお姫様だったかも知れませんが(大爆)
どうしても今の自分の感覚・経験で、映画を見ているからだと思ったりします。
「日の名残り」を見た時も、同じように思いました☆
2012/06/08 16:56 miri〔
編集〕
いらっしゃいませ、コメントありがとうございます!
イラストのシーンはホント描き甲斐ありました。光の加減とか透明感が素晴らしくって、再現できたかどうか。
> ウイッキで事実を読んだら、泣けましたね。
ですね~。miriさんが仰っていたので、感想を書き終わってからわたしも読んでみました。
そしたら見覚えのある肖像画があって、以前「世界不思議発見」あたりで紹介されていたのを思い出しました。すっかり忘れてたなんて!
わたしもラストで”イライザは娘にジョージアナと名付けた”というとこで涙腺崩壊したのに、読んでたらまた泣けてきました…。
> これは、宵乃さんの仰る意味もあると思うのですが、(私も使用人共感ですので)
> いつも思うのは、やっぱり、今現代の日本に生きる私達には、
> 「貴族」とかがピンとこないからではないでしょうか?
仲間がいて嬉しいです。ホント貴族の気持ちなんてわからないですもんね。
「日の名残」は執事が主人公という事で共感しやすかったです。この作品も、もう少し使用人たちの事を描いても良かったかもしれません。
>友情を裏切った事実は変わらないけど、彼女と寄り添う姿を見たらエリザベスがいてよかったと思ってしまいました。
私は、公爵との間柄よりもエリザベスとジョージアナの不思議な友情関係に興味がいきました。
愛憎はあるけれど、二人の間に芽生えた友情はすべて消えたわけではないと思います。
残念ながらまだ記事にできていないのだけど・・・。
事実を知るともっと面白いわね。
あれほど望まれて生まれた待望の息子のウィリアムは、6代目デヴォンシャー公爵とはなったけれど未婚のままで生涯を終え家系は断絶しています。
さてどうなったか。
7代目公爵位は5代目公爵の弟、初代バーリントン伯爵の孫息子へバトンタッチされていました。
ちなみにこの孫息子は、5代目公爵とジョージアナの長女とカーライル伯爵との娘を娶っていて、
8代目公爵、9代目公爵もその子供が継承しています。
結局長女がデヴォンシャー公爵家にとって大活躍したから何とも皮肉な話しですよね。
日本の藤原氏を彷彿とさせる話しです。
詳しくは下のサイトでご覧下さいね。
http://sky.geocities.jp/pape1625/page006.html
2012/06/12 09:51 bamboo〔
編集〕
いらっしゃいませ、コメントありがとうございます。
ジョージアナとベスの関係も物語に深みを与えてましたよね。彼女がいなければ、本当に暗い救いの無い結末になっていたと思います。
> あれほど望まれて生まれた待望の息子のウィリアムは、6代目デヴォンシャー公爵とはなったけれど未婚のままで生涯を終え家系は断絶しています。
そういうのを聞くと、自分や母親のために父親に復讐したんじゃないかと妄想しちゃいますね~。きっと、彼は息子の事も”跡継ぎ”としか見てなかったと思うし。
> 結局長女がデヴォンシャー公爵家にとって大活躍したから何とも皮肉な話しですよね。
> 日本の藤原氏を彷彿とさせる話しです。
そうですね~。あの世で旦那も反省してるといいんですけど。
興味深い話をどうもありがとうございました。歴史に疎いので勉強になりました。リンク先もじっくり読ませていただきますね!
現代の感覚で考えてしまうと、ヾ(*`Д´*)ノ"彡☆
…てなことになりそうですが、当時としてはこれが普通、当たり前の世界だったんでしょうね
男子一番、子孫繁栄、家内安泰。
どれも大切なことだけれど、パートナーになる方には、
愛されて尊敬されたいと思うのは今も昔も変わらないことなのでしょうか
彼女の場合は、愛は得られなかったけれども、
ラストでわかる夫の気持ちが彼女の中にスッと入って言ったんじゃないかと思うと、
少しはうかばれるのかな
ラストのシーン、とても好きですね。
しかし華やかな衣装と映像美でした!
見ごたえたっぷりで、とにかくお茶会のピンクの衣装が可愛かったな~^^
いらっしゃいませ、コメントありがとうございます!
そうなんですよね~、現代の日本人の感覚で観たら公爵をぶん殴ってやりたくなるんだろうけど、この作品は自然と当時のことを考えながら観られました。まあ、それぞれ辛い立場にあっても思いやりを持つことはできるので、全面的に公爵を肯定する気にはなれませんが、それでも同情せずにはいられないものがあります。
> どれも大切なことだけれど、パートナーになる方には、
> 愛されて尊敬されたいと思うのは今も昔も変わらないことなのでしょうか
人間は愛があってこそ他人を思いやれる人間になれるんでしょうね。公爵の空っぽな感じが痛々しい!
> ラストでわかる夫の気持ちが彼女の中にスッと入って言ったんじゃないかと思うと、
> 少しはうかばれるのかな
> ラストのシーン、とても好きですね。
本当にラストのあのシーンは素晴らしかったです。あそこでやっと二人は夫婦になったんだなと。涙でよくみえなかったけど(笑)
ピンクの衣装はよく覚えてませんが、写真集とか出してほしいくらいの衣装でしたね~。