読み:やつらをたかくつるせ!
原題:HANG 'EM HIGH
製作:アメリカ’68 114分
監督:テッド・ポスト
ジャンル:★西部劇/サスペンス
【あらすじ】牛泥棒の濡れ衣を着せられたカウボーイのジェドは、裁判もなしに、ウィルソンたち9人の男によって縛り首にされる。だが奇跡的に助かった彼は、判事から保安官に任命され彼らの逮捕を命じられる。千載一遇のチャンスと次々リンチ犯を見つけ出し、保安官として対応していくが…。
いきなりクリント・イーストウッドが死にそうな展開で驚かされますね。直前まで、河を渡れない仔牛を抱っこして運ぶという微笑ましいシーンだったのに…。復讐に燃えるあまり(?)目が曇ってしまった人間の恐ろしさが主人公視点で描かれます。
だからこそ、普通の復讐モノにはなりません。復讐モノがやや苦手な私でも安心して見られました。
そもそも、当人が顔をハッキリ見ているので、魔法が存在する世界でもなければ復讐相手を間違えるということもないしね。ジェドは元敏腕保安官で人間観察も得意だし。
運よく通りかかった保安官に助けられ、きちんと正式な手続きで無罪となった彼は腕を見込まれ連邦保安官に。もっとも自分をリンチした9人への復讐心があるから、断るはずもないと見込んでのこと。街の判事が最初から一筋縄ではいかない感じをプンプン匂わせてます。
引き込まれる導入から、さらに興味を引いたのが誤って無実の人をリンチしたと青ざめる9人の描写でした。復讐者が復讐される側に回った時の心理を丁寧に描いているし、復讐というテーマを多角的に見られるのがいいです。どうしても片方だけの描写中心になりがちですから。
そして、復讐心にかられたジェドも、過去の自分のように”裁判もなしにリンチする”ということは絶対にしません。少しくらいは正当防衛になるのを期待してるところはあったと思いますが、ブレることがなかったです。
とくに、悪党にそそのかされて牛泥棒をしてしまった若者二人(初犯で殺してないと自供&捕まってから悪党に加担しなかった)と出会ってからは、復讐の炎も下火になっていきます。街の人たちも判事も処刑を楽しんでいたり、自分の都合で処刑を行っているところがあって、リンチをする人々とそう変わらないことに気付いてしまったから…。
終盤はヒロインとくっついたり(めっちゃしつこい男だった 笑)、保安官のバッジを返そうとしたけど結局続けたり、復讐相手2人のことは描かないなど中途半端な気もしたけど、処刑された青年二人のことを考えると自然な流れでした。
復讐心が人間の判断力を低下させてしまうこと。彼女が復讐のために一生を捧げるのを見てられなかったこと。リンチを止めるには結局のところ法の秩序が必要なこと。それらを実感しての決断だと納得できます。
見ごたえある作品で、クリント・イーストウッドの魅力も堪能できました。おすすめです。