忘却エンドロール

素敵映画に出会えた時の感動をそのまま書き綴る、映画感想ブログ.

映画「ミスト」感想

ミスト
製作:アメリカ’07
原題:THE MIST
監督:フランク・ダラボン
原作:スティーヴン・キング
ジャンル:パニック/モンスター/SF

【あらすじ】激しい嵐の翌日、デヴィッドは息子とスーパーマーケットへ買い出しに出掛けた。すると、朝から見えていた濃い霧が町全体を飲み込み始める。人々がマーケットに缶詰状態となる中、彼は霧の中に何物かが潜んでいると気付き…。

途中までは、シリアスなモンスターパニックとして楽しめました。こういう作品の真髄は、モンスターの怖さよりも、恐怖に脅える人々の群集心理ですよね。マーケット内に閉じ込められた大勢の人々、募る不安。それが狂気となり、人間同士で争ってしまう過程がうまく描かれていました。
ただ、死亡フラグも分かりやすい安心設計なんですが、死ぬのがわかったからといって、すべてを受け入れられるわけではないんですよね~。あの、不自然な言い回しの約束のシーンでは、『それはだめー!!』と叫びそうになってしまいました。本当は「死なないで。化物から守って!」と言ったんじゃないかと思って巻き戻して確認したけど、そんな事もなく…。もう、不吉な予感しかしない約束のせいで、後半はずっとストレスたまりっぱなしでした。

ラストは原作者も気に入ったとかで、好意的にみれば「最大の敵は、化物でも人間でもなく、自分の中にうまれる絶望だ」というメッセージが込められていると取れます(「ミリオンダラーベイビー」のふたりに見せてみたいかも)。でも、死ぬのは親や配偶者、友人でもよかったはずなのに、あえてそうしなかったというのは悪意を感じますね。まあ、飛び出していった女性が家族で生残っていたのは救いでしたが…。
後味がとても悪いので、わたし的には結末を描かないヒッチコックの「」の方が好きです。

で、その後味の悪さを忘れるために、描かれていない軍の行動について想像してみました。以下、ネタバレ注意!
まず、科学者が異世界を観察するため”窓”を開けようと考えたなら、閉める方法も考えてあったはず。思いがけず大きな穴が開いて、化物が入り込んできてしまったら、すぐに閉じにかかったと思います。その間、軍は化物と交戦。(1)霧全体がゆっくり移動しており、少しづつ拡散していること、(2)霧から出た化物は、しばらくすると弱っていく、もしくは死んでしまう事に気付きます。(主人公が化物の触手を切り落として、しばらくしてから突いたらどろどろに溶けてしまったことから)

そこで、軍は移動する霧を追いかけるように攻撃する作戦に。霧から出てきた化物を退治したり、死骸や巣、卵などを焼却。そして、生存者を拾って進んでいたのが、あのラストの一行ということですね。最終的に、穴が閉じられれば霧はいつか消えて、化物も死滅すると思います。
怖いのは、体内に卵を産みつけられた奴ですね~。科学者がサンプルとして持ち帰ったり、それを黙って帰ってしまった人とかいそう。「パラサイト」みたいに、寄生生物に進化したりして!

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■ Comment

イラストも切なさを感じます><

ラストばかりが取り上げられ気味ですがなかなか
面白いパニック作品なんですよね。
王道部分は王道ですし死亡フラグもたっぷり。
なにより全体的などんよりダークな雰囲気がたまりませんです^^
2011/09/09 14:19  shimaneman

>shimanemanさん

> ラストばかりが取り上げられ気味ですがなかなか
> 面白いパニック作品なんですよね。

「鳥」を意識してるなぁと思う部分もあったりで、見ごたえのあるパニック映画でした。
ラストは好きな方は好きなんでしょうけど、10年20年経ってもあれを観たいと思うかなぁ?と少し疑問です。

> 王道部分は王道ですし死亡フラグもたっぷり。
> なにより全体的などんよりダークな雰囲気がたまりませんです^^

たっぷりでしたね~(笑)
キング作品の映像化はよく失敗に終わってますけど、こうやってあっさり化物を見せて、極限状態における人間のエゴに焦点を当てたとこがよかったです。
化物がでない、「es[エス]」なんかもこういうタイプですよね。
2011/09/09 16:19  宵乃

No title

こんばんは!!
この映画は去年だったでしょうか?
見ましたが、後味の悪さしか記憶が無いです(^▽^;)

この映画を借りるのに、DVDのジャケットを見ながら
「どんな映画だろう??」と考えていました。

全く想像がつかなかったのですが、怪物が出てきた時は
スティーブンキングの映画なのに「なぜ気が付かん!!」と
自分を責めちゃいました(笑)

話は変わりますが、インクレディブルのコメの
「まずは柔軟から」に座布団5枚(爆)
2011/09/09 20:33  take 51

こんばんは~

キング作品とフランク・ダラボンの相性が良すぎです。
ショーシャンクしかり、ぐりーんマイルしかりで
だらんとしたラストになりがちなキング原作を
キリっとまとめる手腕はさすがです。

ミストは、パニックでありがちな人間の業描写だけに
とどまってないような気がします。それがなにかと問われると
困るかもです(笑)
2011/09/09 20:39  hiro

>take51さん

いらっしゃいませ!
この後味の悪さは、苦手な人にとっては他のよい部分も打ち消してしまうほどだと思います。

> 全く想像がつかなかったのですが、怪物が出てきた時は
> スティーブンキングの映画なのに「なぜ気が付かん!!」と
> 自分を責めちゃいました(笑)

あはは、彼の作品はダークで怖い印象のものが多いですからね~。クリーチャーが出てくるタイプの映画は、失敗してぜんぜん怖くなくなってる場合も多いですけど、これは怖かったですね!

> 話は変わりますが、インクレディブルのコメの
> 「まずは柔軟から」に座布団5枚(爆)

ありがとうございま~す♪
2011/09/10 07:20  宵乃

>hiroさん

こんにちは!
実は原作はひとつも読んだ事がないんですよね、ハハハ。
でも、彼が監督した作品は、他のキング映像作品に比べると突出してると思います。
「ミスト」はわたしには合いませんでしたが、この作品に合うアンテナを持ったひとなら、深いところまでわかるんでしょうね。
賛否両論わかれるのも頷ける作品でした。
2011/09/10 08:35  宵乃

☆こう言う(ラストの)状況では☆

『遊星からの物体X』の主人公の終盤のセリフを見習って、

「待ってみるさ・・これから何が起こるのかを」

って感じで、物事を急がないようにしたいと思います。

総てが落ち着いたら、主人公は2級(?)殺人罪で逮捕されちゃうんでしょうか・・(×_×)
2011/09/17 12:48  TiM3〔編集

>てぃむさん

> 「待ってみるさ・・これから何が起こるのかを」

渋いです!!
彼らも食料がなくなるくらいまでは耐えて欲しかったですよね。(カット版を観たので、耐えた後の絶望だったのかもしれませんが)

> 総てが落ち着いたら、主人公は2級(?)殺人罪で逮捕されちゃうんでしょうか・・(×_×)

さすがにあれだけのことをしたので逮捕されるとは思いますが、状況が状況でしたし、いちばん糾弾されるべきは政府だし、長くはないと思いますよ。もしくは病院行きかも・・・。
2011/09/17 13:52  宵乃

こんにちは

コメントありがとうございました♪

群集心理もなんですが、モンスターパニック映画としても
なかなか良くできた作品なんですよね~
ラストは絶望感が漂うので好き嫌いはあるとは思いますが…
最後の考察の方、読ませていただいてなるほど~と思いました
でも、確かに体内に気づかず卵を産み付けられていたりしたら大変ですね!
科学者がサンプルとして持ち帰ったりとかもありそうで。

序盤に外に飛び出していった女性が助かって、
マーケットの皆が死んでしまうというのはなんともいえない皮肉でしたね
序盤だからまだモンスターも近くにいなかった?とか?
2011/09/19 11:36  maki編集

>makiさん

いらっしゃいませ。
見ごたえのある作品だけど、人には勧めづらいですよね。好みがはっきり分かれますし。
考察も読んでいただけて嬉しいです。今まで誰も触れてくれなくて・・・(笑)

> 序盤に外に飛び出していった女性が助かって、
> マーケットの皆が死んでしまうというのはなんともいえない皮肉でしたね

あそこまで力の差があると、もうアリンコが踏まれるか踏まれないかの違いと同じで、運がよかったとしか言えないでしょうね~。本当に皮肉なもんです。
2011/09/19 14:11  宵乃

「映画史上かつてない、震撼のラスト15分」

映像的には全く容赦のないスピードで迫ってくる“霧”が、シャッターの隙間からはピタッと入ってこないとか、すっごくいい感じだったのですが、それには殆ど意味が無かったので残念でした

また人同士の疑心暗鬼、群集心理の怖さは感じるのですが、告訴バカの弁護士やおかしな宗教叔母さんに人々が先導されていくのが違和感と言うか異国感があり過ぎて理解できませんでした…

以前書いていた映画Blog「Cinematheque 5+」で取り上げたときの感想を貼らしてください
手抜きじゃないのよ~

このラストはダメだ!
確かに“映画史上かつてない、震撼のラスト”かも知れないがダメだ…

だって映画作りしてる人たちが、いかにこのラストを使わないようにするかってところに知恵を絞っているのに一番簡単な方法をそのまんまやっちゃうんだもの…
“映画史上かつてない”のは当たり前じゃん! 
 映画史上もっともやっちゃいけないラストだよ。


僕としてはコレに尽きますm(_ _)m
2011/10/02 14:44  |―|/‐\|\/|

Re: 「映画史上かつてない、震撼のラスト15分」

> 映像的には全く容赦のないスピードで迫ってくる“霧”が、シャッターの隙間からはピタッと入ってこないとか、すっごくいい感じだったのですが、それには殆ど意味が無かったので残念でした

たしかに、隙間からは入ってこなくて、霧のような姿をした生き物なんじゃないかと思わせるところもあったけど、思わせるだけで終わってしまいましたね。同じく霧を題材にした「ザ・フォッグ(05年)」よりは面白かったけど。

> また人同士の疑心暗鬼、群集心理の怖さは感じるのですが、告訴バカの弁護士やおかしな宗教叔母さんに人々が先導されていくのが違和感と言うか異国感があり過ぎて理解できませんでした…

日本に置き換えたら、モンスターペアレンツとかオバサマ集団とか・・・かな?
あの宗教で扇動されていた人たちの中には、信じてないけど長いものに巻かれろ精神で従っていた人もいると思います。

> だって映画作りしてる人たちが、いかにこのラストを使わないようにするかってところに知恵を絞っているのに一番簡単な方法をそのまんまやっちゃうんだもの…
>  映画史上もっともやっちゃいけないラストだよ。

パチパチパチ!
よくぞ言ってくれました。まさしくその通りですね!
キングが気に入ろうが何だろうが、これは一番簡単で一番やってはいけないオチだと改めて確信できました。
それをやって喜んでいるんだから、時代も人も変わってしまったんでしょうね~。
2011/10/02 15:20  宵乃

フランク・ダラボン

フランク・ダラボンってスティーブンキング原作を映画化してのし上がってきた人です。本作もその線なんだけど、原作の結末は違うんです。息子とモーテルに逃げ込み、銃の弾もなくなり建物の外は相変わらずアレがうごめく音が聞こえる・・・。といった結末をうやむやにして終わらせてるそうです。それをあえて監督があの結末にして騒然となりました。僕は、子を持つ父親として許せず一段とフランク・ダラボンがきらいになりました。彼自身は脚本家としても活動をしていて「インディジョーンズ4」の脚本がボツになったとき、安堵感と高揚感に似たものが自分の中で入り乱れたのを思い出します。「インディ4」の脚本はデビットコープになり期待したけど、がっかりでした・・・。
2011/10/14 07:52  庄屋弁当

>庄屋弁当さん

> フランク・ダラボンってスティーブンキング原作を映画化してのし上がってきた人です。

確かに、「ショーシャンクの空に」や「グリーンマイル」もキング原作ですもんね。原作の話はわたしも聞いたんですが、たとえキング自身が映画のオチを気に入っても、わたしはうやむやな結末そのままの方がよかったです。

> 僕は、子を持つ父親として許せず一段とフランク・ダラボンがきらいになりました。

あの結末は本当に、”衝撃”を与える為に子供を使うあざといやり方だと思いました。彼の作品全てが嫌いというわけではないけど、この「ミスト」は無理です。

> 「インディ4」の脚本はデビットコープになり期待したけど、がっかりでした・・・。

これは、何故今さら続編を作ろうとしたの?と問いたくなるような、投げやりでスカスカな内容でしたね。せめて、インディシリーズへの愛情が感じられればよかったんだけど・・・。
2011/10/14 10:28  宵乃

こんばんは☆

ムービープラスでオンエアしたので、見ました。
映画を見る事を再開した頃に、あちこちのブログで見かけた作品だったし、
宵乃さんもつい先日この記事をアップなさったから・・・。
イラストは本当に気持ちまで伝わってきます☆

いや~しかし、こういう映画、生まれて初めて見たかな~?って感じで
新鮮でしたが(やっぱり正体を見るまでは超・怖いですよね~)

よくよく考えると、大昔に「ウルトラマン」とかのシリーズで
いろんな怪獣を見ているので、なんというか段々滑稽な感じがしてきました。
あぁいうのを「モンスター」って言うのですね???
「死亡フラグ」って何?と思い、検索して分かりました。

>後味がとても悪いので、わたし的には結末を描かないヒッチ・コックの「鳥」の方が好きです。

途中で「鳥」の現代版かしらん?と思いました。
(ヒッチさんの真ん中に点は要らないと・・・あぁお節介・・・)

ラストは皆さん色々と書かれていますが、私も「なんじゃこりゃ?」でした。
・・・この後に悪態の数々が出そうなので、この辺で失礼しないと、私のイメージが悪くなるので(爆)

>せっかくサイドバーで見られるようにしたのに、

あれは見やすくて本当に良かったから、惜しいですね・・・。

>まあ、サイドバーだと長いタイトルが見づらかったから、いいんだけど。

でも確かにそうでした。短いのは良かったのですけどね・・・。

☆今は記事の方で索引が見やすくなって、とっても良いですよ~!!!
2011/10/30 22:28  miri〔編集

>miriさん

いらっしゃいませ!
まさかmiriさんがこの作品をご覧になるとは、驚きました。初めてのモンスターパニックでこれって、大丈夫でしたか?
でも、この作品が観られたなら、モンスターパニックはいけるかもしれませんね。これほど後味の悪いものはそうそうありませんし。「トレマーズ」シリーズは面白いですよ~。あっけらかんとした明るさがあって。

> よくよく考えると、大昔に「ウルトラマン」とかのシリーズで
> いろんな怪獣を見ているので、なんというか段々滑稽な感じがしてきました。

あはは、ウルトラマンも気味の悪いものから可愛いものまで、いろんなモンスターがいましたもんね。CGで生々しさはアップしてますけど、あのモンスターは謎が多すぎて、いまいちリアリティを感じませんでした。

> 途中で「鳥」の現代版かしらん?と思いました。
> (ヒッチさんの真ん中に点は要らないと・・・あぁお節介・・・)

わたしも思いました!原作者も意識していたようで、ラストもうやむやのまま終わるそうです。
映画のラストは意地が悪すぎますよね~!
あと、ヒッチさんの名前はうっかりしてました(笑)
ご指摘ありがとうございます。

> あれは見やすくて本当に良かったから、惜しいですね・・・。
> ☆今は記事の方で索引が見やすくなって、とっても良いですよ~!!!

どうも、わざわざ見てもらえて嬉しいです。これからも使って下さいませ♪
あと、今日の追記記事の予約投稿で、投稿を知らせるにチェックを入れ忘れてしまいました・・・。みなさん気付いてくれたかな?
2011/10/31 11:23  宵乃
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