忘却エンドロール

素敵映画に出会えた時の感動をそのまま書き綴る、映画感想ブログ.

映画「ひまわり」観ました

ひまわり
1mくらい離れて見てね!
製作:イタリア’70
原題:I GIRASOLI
監督:ヴィットリオ・デ・シーカ
ジャンル:★ロマンス/戦争

【あらすじ】貧しいナポリ娘ジョバンナとアントニオは、出会ってすぐ恋に落ち、間もなく結婚した。だが、第二次世界大戦が勃発し、アントニオは戦争へと駆り出されてしまう。終戦後、帰らないアントニオの生存を信じ、彼女はソ連を訪れるのだった。

今まで見た”戦争で引き裂かれた男女”の物語で、一番好きな作品になったと思います。
アントニオの生存を信じるために、魂をも消耗しているんじゃないか、というくらいのジョバンナの気迫が凄まじい。それと同時に、いつ燃え尽きてもおかしくない儚さも…。
それでも決して諦めず、夫を探し続ける彼女の姿に”見つかってほしい!”と祈るように観てました。
そして、待ち望んでいたはずの再会。駅で夫の帰りをずっと待っていた彼女が、こんな形で再会を果たすなんて。…遣り切れません。
何も言わずに列車に乗り込み、泣き崩れる彼女の姿は、涙なしには観られませんでした。
そんな彼女と夫の想いを悟って、静かに微笑んで夫を送り出す奥さんも切ない。

また、回想でしかでてこない、過酷なロシアの雪中行軍の様子も強烈でした。小さな家にぎっしり兵士が並んで、立ったまま仮眠。それすらもできず、雪の中でひとり、またひとりと倒れてゆく。
そして、この作品のタイトルであり、夫を追い求めるジョバンナの心を表しているかのような”ひまわり”も、その下に眠っているのは、ロシア戦線の犠牲者たち…。
生命力を感じさせる一面のひまわりも、これからは複雑な思いで見る事になりそうです。

<2018/06/26 再見>

そういえば徴兵逃れのせいでロシアに飛ばされたんでした。自業自得ですが、ロシアに飛ばされたからこそ生き残れたのかもしれない…。
思ってたより短い作品だったんですね。必要な部分だけを切り取ってあるので重い内容の割に見やすいと思います。
ただ、アントニオの母親についても省略しちゃってるのは気になりましたね~。ジョバンナと再会して、1~2年悩んでから故郷に戻ってきたというのに、母親に会わずに(もしくはお墓参りせず)帰ったの?
そもそも、アントニオの居場所がわかった後にジョバンナと義母はどういう関係だったんだろう…。実は義母だけアントニオの元へ行ったなんてことはないよね?
生きてるか死んでるかもわからない数年間、絶対に生きている、見つけ出すと言って行動してきたジョバンナに、アントニオの母親も救われていた部分もあったと思うんですよ。長年信じてきた夫が別の国で妻子を持っていたというジョバンナのショックも女として理解できたでしょうし、年齢のこともあるし、息子に会いたい気持ちはあっても大っぴらには会えなかったと思います。
初見時のようにジョバンナやアントニオ、ロシアの妻の気持ちには寄り添えたんですが、母親のことが気になって初見時ほどは引き込まれなかったです…。
切ないメロディと一面のひまわり、ずらーっと十字架が並ぶ丘の風景が印象に残りました。

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■ Comment

こんにちは☆

うん、うん、雰囲気とっても出ています。1メートル離れて見たこのひまわり・・・あの音楽が耳に、そして心で涙・・・。
この映画は素晴らしい名作ですね・・・今しばらくの間は再見できないけど、先日のオンエアを保存したので、いつか見ます。
高1くらいの時に2回見ているので、なかなか記憶にハッキリとあり、まだ子供でしたけど、男女の愛と、戦争への思い、忘れられない作品です。

>そして、この作品のタイトルであり、夫を追い求めるジョバンナの心を表しているかのような”ひまわり”も、その下に眠っているのは、ロシア戦線の犠牲者たち・・・。

これを知って本当に驚愕しました。
お花の下に・・・そんなこと考えた事もなかったから・・・この作品以降、そういう描写も時々見て、本当に戦争って絶対に駄目だな、っていつも思います。

>今まで見た”戦争で引き裂かれた男女”の物語で、一番好きな作品になったと思います。

宵乃さんのお気持ちが素直に書かれて、素晴らしいレビューだと思いました♪
2011/01/26 17:34  miri〔編集

>miriさん

> うん、うん、雰囲気とっても出ています。1メートル離れて見たこのひまわり・・・あの音楽が耳に、そして心で涙・・・。

ありがとうございます。もうこれは点描風にいくしかないな、と結構投げやりに描いたんですが、この映画を好きな人に怒られないか内心びくびくしてました。
あの音楽・・・!そうだ、音楽のこと書くの忘れてました。一度はどこかで耳にしている名曲なので、映画が初見でも懐かしさを感じました。これからは、映画の思い出が音楽でよみがえると思います。

> 高1くらいの時に2回見ているので、なかなか記憶にハッキリとあり、まだ子供でしたけど、男女の愛と、戦争への思い、忘れられない作品です。

わたしももっと早く観たかったなぁ!
ストーリーも、俳優の演技にも説得力があって、するりと感情移入してしまいました。強い反戦の思いも湧き上がって、多くの人に観てもらいたい傑作です。

> お花の下に・・・そんなこと考えた事もなかったから・・・この作品以降、そういう描写も時々見て、本当に戦争って絶対に駄目だな、っていつも思います。

あの地にひまわりの種を蒔いた人々の、この犠牲を忘れてはいけないという気持ちと、これから生き抜いて、あたらしい命を育んでいこうという力強い気持が伝わってきます。戦争の悲劇を伝えていくやり方はたくさんあるけれど、ひまわりの花で伝えるこのやり方は本当に素晴らしいですよね。
あの一面のひまわりや、世界中の同じような風景を失うことは、二度とあってはいけない。これからは、ひまわりを見るたびにそう思うでしょう。
2011/01/27 11:05  宵乃

戦争の悲劇?

ちょっとひねくれた見方かもしれませんがご容赦ください。

戦争の悲劇性について何ら疑問はありません。この映画に出てきたロシアでの過酷な行進などを見るまでもなく人類のもっとも愚かな行為で、でもそれがまだ世界のどこかで続いているのですよね。残念なことです。

ただこの映画の主題は確かにそうなのかもしれないんだけど、ちょっと違う気もします。たとえば単身赴任で海外に行ったとする。過酷な条件での労働が続き、ちがった文化のなかでの生活でストレスがかかり、精神的に疲れたあげく病気になってしまう。不安な日々が続くなか、そこであたたかく手助けしてくれた現地の人と愛が芽生えてしまう。日本に残された家族は...

こういうのって実際あるんですよね。ボクも海外に長い間住んだことあるんだけどこういうのよく見ました(もちろんボクではありません。念のため)。なかにはとんでもないひどい例もあるけど、まじめな人も案外そういうことに陥ってしまうものです。

この映画だって記憶を失くしその間面倒をみてくれたひとと愛情が芽生えて子どもまでできるんですけど、ずっと記憶がもどらなかったわけではないですよね。まさかあの駅でソフィア・ローレンをみた瞬間に記憶が戻ったということでもないでしょう。だったら国に帰ることはできたはずです。
でも人間って、男と女の関係はそう単純でもない。この映画の悲劇のきっかけは戦争だろうけど、戦争がなくてもこういうことは十分起きるということで、まあそれが人間のおもしろいところかもしれません。
2011/01/30 17:58  BBJJC

>BBJJCさん

こんにちは、いつもコメントありがとうございます。
戦争で引き裂かれた男女の物語では「自分勝手なだけじゃん!」と思うことも多かったんですが、この作品ではすとんと納得いきまいました。感想には書き忘れてしまったけれど、「心から安心できるのは、あの家だけだと思えた。あの時、僕は死んだんだ。そして、別人になった・・・」というアントニオのセリフ。あれがすべてを物語っていると思います。

> だったら国に帰ることはできたはずです。

怪我が治ったころには記憶も戻っていただろうとは思いますが、彼のようなイタリア兵がここで生き延びるにはロシア人になるしか、彼女に好意にすがるしかなかった・・・。それが、戦争が終わったからじゃあね、とはいかない気がします。ジョバンナが自分を追ってここまでくるとは夢にも思わなかったでしょうし。
きっと、全てを捨ててロシアで生きるつもりだったんでしょうけど、彼女の顔を一目見ただけでその決意が揺らいでしまうところは彼らしいですよね~。
2011/01/31 11:04  宵乃

>駅で夫の帰りをずっと待っていた彼女が、こんな形で再会を果たすなんて・・・

デ・シーカ監督には「終着駅」という名作がありますが、この「ひまわり」も列車と駅を使った名作ですよね。
再会と別離。駅にはお似合いのドラマ。
最初の再会は、その前からどうなるんだろう?という観客の気持ちが高まっているので、生きてて嬉しいけど、でも悲しいというか悔しいというか、ホントに複雑な気持ちになります。
一般庶民の悲劇を描いた反戦映画ですね。
2016/09/03 09:56  十瑠

>十瑠さん

「終着駅」は未見なんですよ。
デ・シーカ監督は駅を使うのが上手いのかな。いつか観てみたいです。

> 最初の再会は、その前からどうなるんだろう?という観客の気持ちが高まっているので、生きてて嬉しいけど、でも悲しいというか悔しいというか、ホントに複雑な気持ちになります。

ホントですよね…。登場人物の複雑な心情に驚くほどすんなり入り込めました。
きっと同じような悲劇がいくつもあったんだろうなぁと。
これからも多くの人に反戦のメッセージを伝えてくれる作品だと思います。
2016/09/04 12:16  宵乃〔編集
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