忘却エンドロール

素敵映画に出会えた時の感動をそのまま書き綴る、映画感想ブログ.

映画「野のユリ(ののゆり)」観ました

 | ドラマ  com(16) 

野のユリ
製作:アメリカ’63
原題:LILIES OF THE FIELD
監督:ラルフ・ネルソン
原作:ウィリアム・E・バレット
ジャンル:★ドラマ

【あらすじ】アリゾナの荒野を旅していた黒人青年ホーマー・スミス。ちょっとした用で修道院の世話になった彼は、教会建設の手伝いをさせられる破目に。院長マザー・マリアにシュミットと呼ばれこき使われるが、文句をこぼしつつも居ついてしまい…。

最初から最後まで清々しく、心地良い人の温かさを感じる作品。
ホーマーがほんといい人なんですよ。ちょっと水をもらいに寄っただけなのに”天が使わした労働力”扱いされ、何度も去ろうとしながらも戻ってきてしまう。根っからのお人好しです。
まるで”独裁者”のような(グサッとくる表現でした)院長にこき使われ、朝食は卵とミルク。そのうえ無報酬だし(院長は)感謝すらしてくれない…。そんな場所に誰が好き好んで留まるでしょう?

でも彼は、そんな場所で時おり安らぎを感じているような表情を浮かべるんですよね。
東ドイツから亡命してきた彼女たちに英語を教えている時、一緒に『Amen』を歌っている時、自腹で豪華な朝食を頼んでいる時、教会を建てるのが楽しくなってきた時。さらには、院長と聖書を使って反発し合っている時でさえ、どこか楽しそうに見えてしまいました。
見知らぬ土地で、援助もなく、ただ信仰心を支えにやってきた院長も、彼と接しているうちに頑ななこころがほぐれていきます。
そんな彼らの様子を見ているうちに、わたしも優しい気持ちになれました。

タイトルは、「働かなければ食っていけない」というホーマーに対し、院長が聖書の一節「野のユリを見よ。働きもせず、紡ぎもしない。ソロモンでさえ、ユリほど装わざりき。」を引用した事から。
『Amen』がいつまでも耳に残るラストが秀逸です。

<追記:2015/07/16>
久しぶりにリリア・スカラさんの院長を見てみようと思って再見しました。
序盤の院長はムカつくオバサンなんですよね~(笑)
強引に引き止めて、まともな食事も与えず「怠け者!」と馬車馬のようにこき使う!
お金のことを言われると、まだ英語はよくわからないからとはぐらかそうとするし、普通に詐欺罪で捕まってもおかしくありません。
でも、彼女たちの置かれた状況を見ると、本当に毎日食べるので精一杯で、彼女たちだけだったらいずれはにっちもさっちもいかなくなって路頭に迷っていたかもと思うと、彼女が必死になるのもわかるんですよね。
そんな中、自分が憎まれ役を引き受けて、厳しい現実に果敢に挑んでホーマーをゲットしたんだから大したものです。
ホーマーの功績はもちろん大きいけども、みんなで教会を完成させられたのは、やはり彼女あってのことでしょう。
印象に残ったのは、「Amen」を初めて歌ったシーンで、思わず院長の顔がほころぶところと、それぞれの聖書を使って議論するくだり、十字架の下に誇らしげに自分の名前を刻むホーマー、完成した教会(=奇跡)を目にして感無量の神父様などなど…。
そして、やはり一番は「Amen」を歌いながら去っていくラストですね。シスターたちは希望いっぱいで歌に夢中で、院長だけがホーマーとの別れを悟っている…。その直前になんだか暗い表情を浮かべていたホーマーのシーンもあって、二人の絆の深さがどれほどのものになっていたか伝わってきてホロリときました。
心温まる名作です!

■ Comment

偶然にも

同じ日に同じ映画の記事をアップしました。^^

事後で申し訳ないですが、画像を使用させていただきました。不都合がありましたら、ご連絡下さい。

>でも彼は、そんな場所で時おり安らぎを感じているような表情を浮かべるんですよね。

小さな聖書をいつも身に付けているようですし、私もいつしかホーマーが本物の神の使いように思えてきました。
ただ、終盤の浮かない顔の意味がよく分からないんですよねぇ。
2010/10/06 19:03  十瑠〔編集

おはようございます☆

素晴らしい映画でしたね☆
昔から聞いてきて、長いことずーっと見たかったので、オンエアが嬉しかったです♪
ポワチエというと、もうちょっとトシで太って「夜の大捜査線」が浮かびますが、この作品は、とても若くてビックリしました。

一番のシーンをイラストになさったのですネ!さすが☆ 
真っ青な空が、白黒映画で目にしみるほどに感じました。

>『Amen』がいつまでも耳に残るラストが秀逸です

宵乃さんはどちらの発音でしたか?
私はやっぱり両方が交互に浮かびました☆
神のなさる事はすべて時にかなって美しい・・・その言葉を、まさに映画化した作品だと思いました。
2010/10/07 08:46  miri〔編集

>十瑠さん

偶然でしたね~。昨日、遅くに気付いてコメントに伺おうと思ってました。
イラストはもちろんOKです。いつもありがとうございます!

> 小さな聖書をいつも身に付けているようですし、私もいつしかホーマーが本物の神の使いように思えてきました。
> ただ、終盤の浮かない顔の意味がよく分からないんですよねぇ。

わたしも、彼が聖書を取り出してきた時には、ほんとに来るべくして来た人なんだなぁと思えました。
終盤の浮かない顔は気になりますよね。単純に別れが寂しいというだけじゃなさそうだし、”特別”になりきれなかったという感じでしょうか・・・?
2010/10/07 11:07  宵乃

>miriさん

いらっしゃいませ。
ほんと爽やかで心あたたまる作品でした。
ホーマーの役者さんは「夜の大捜査線」で主演した方でしたか。機会があったらまた観たいです!

> 一番のシーンをイラストになさったのですネ!さすが☆ 
> 真っ青な空が、白黒映画で目にしみるほどに感じました。

聖書を引用しているシーンと迷ったあげく、こちらにしました。白黒映画だと忘れさせますよね~。

> 宵乃さんはどちらの発音でしたか?
> 私はやっぱり両方が交互に浮かびました☆

ずっとアーメンだと思ってました。地域によって違うんですかね?

> 神のなさる事はすべて時にかなって美しい・・・その言葉を、まさに映画化した作品だと思いました。

宗教に疎いわたしでも特別だと感じる作品でした。きっと、いつまでも心に残ると思います。
2010/10/07 12:13  宵乃

この前見ました。

すごく爽やかでしたね。
「Amen」を歌いながらさり気なくさって行くスミス。最後まで硬い表情のマザー・マリア。良かったです。

ほんのちょっとした事がきっかけで教会を建てる事になったスミス。
スミスや町の人達に手伝ってもらっているのに文句ばかり言うマザー・マリアに対して僕はイライラしながら見ていました。
だからこそ教会が完成して、スミスが去っていく場面は感動的になるんですよね。
マザー・マリアを演じた女優さん。名演です!
それと建設会社の社長を演じた役者がこの映画の製作と監督を兼ねていた事も後で知りました。
2010/10/10 06:29  間諜X72〔編集

>間諜X72さん

> 「Amen」を歌いながらさり気なくさって行くスミス。最後まで硬い表情のマザー・マリア。良かったです。

爽やかで、後味もよかったですよね。
こういう作品を放送してくれるから衛星映画劇場って大好きです!

> スミスや町の人達に手伝ってもらっているのに文句ばかり言うマザー・マリアに対して僕はイライラしながら見ていました。
> だからこそ教会が完成して、スミスが去っていく場面は感動的になるんですよね。

最初はわたしも院長の横暴に「おいおい」と思っていたんですが、なかなか素直に「ありがとう」が言えないところは可愛かったですね~。言葉にしなくても気持ちが通じ合っているところにじーんときました。

> それと建設会社の社長を演じた役者がこの映画の製作と監督を兼ねていた事も後で知りました。

お~、そうだったんですか。さすが間諜X72さん。
いつも耳寄り情報ありがとうございます!
2010/10/10 10:31  宵乃

シュミットとレティシア

これ、ほんとうにいい映画ですね。実は今回(恥ずかしながら)初めて見ました。「エーメン」という音楽は関光夫さんのNHKFMで何度も聴いた記憶があるんですけどね。

シドニー・ポアチエ、いいですねえ。人のよさが演技を超えてでているようで。彼の2番目の奥さまがジョアンナ・シムカス、あの「冒険者たち」のレティシアなんですね。ひとりで教会を建てることと、わけのわからないガラクタで前衛的なオブジェを創ること、なんとなく2人がつながった理由がわかるような気がします。

こういうの見ていると、申し訳ないけど今の映画見る気なくなりますね。コンピュータグラフィックなんていらない。白黒で十分。今日はこれからバーボン飲みながらゴスペルゆっくり聴いて、いい夢をみたいな。
2011/03/05 23:19  BBJJC

>BBJJCさん

> これ、ほんとうにいい映画ですね。実は今回(恥ずかしながら)初めて見ました。「エーメン」という音楽は関光夫さんのNHKFMで何度も聴いた記憶があるんですけどね。

いいですよね~、わたしも今回のオンエアを永久保存のために録画しました。
優しい気持になれる物語も、心に響く音楽も素晴らしかったです。

> 彼の2番目の奥さまがジョアンナ・シムカス、あの「冒険者たち」のレティシアなんですね。ひとりで教会を建てることと、わけのわからないガラクタで前衛的なオブジェを創ること、なんとなく2人がつながった理由がわかるような気がします。

お~、そうだったんですか!
夫婦ともに良い作品にめぐりあえた俳優さんとは。あのオブジェと教会と、面白い共通点ですね。

> こういうの見ていると、申し訳ないけど今の映画見る気なくなりますね。コンピュータグラフィックなんていらない。白黒で十分。

わかります!こんな素晴らしい作品が、わたしが生まれる前から存在したということに、ショックを受けました。そいういうことがある度に、最近の映画は技術に頼りすぎているなぁと思ってしまうんですよね。
でもまあ現代の作品でも、厳しい条件のなか努力と工夫で表現する、という気概を見せてくれる監督がいるはずだ!と希望をもって鑑賞したいと思います。

> 今日はこれからバーボン飲みながらゴスペルゆっくり聴いて、いい夢をみたいな。

いい夢はみられたでしょうか?
人生を豊かにする作品とこれからも出会っていきたいですね♪
2011/03/06 10:54  宵乃

♪エ~ィメン、エ~ィメン♪、日本だったら♪ヘイ、ヘイ、ホ~♪(笑)

宵乃さん、こんばんは。

これ地味だけど記憶に残る映画だと思います。
ホント、あーだこーだ言いながら教会建てるってだけの話なのに、
キャラクターが良くて、台詞の掛け合いが面白くて、ラストが素敵で。

昔々、日曜洋画劇場で観たのが初見です、「映画の中で歌ってた「Amen」、これはゴスペルって言うんですよ・・・」と淀長さんが説明してました。(多分)
ちなみに、その時、淀長さんは「エイメン」と発音していたので、僕は、ずっとエイメン派です。(笑)

今度の日曜に、しっかりと見直して記事を書こうかなと思っています。
(予定は未定にして決定にあらず、ちょっと前までの予定では「シックス・センス」でしたから(笑))
2012/06/30 01:12  鉦鼓亭編集

>鉦鼓亭さん

いらっしゃいませ~。
この作品は大好きで、この時の録画は永久保存版です♪

> ホント、あーだこーだ言いながら教会建てるってだけの話なのに、
> キャラクターが良くて、台詞の掛け合いが面白くて、ラストが素敵で。

そうなんですよ、何気ない会話が面白くて、意外と深くて、いつまでも心に残ります。
多くの人に観てもらいたい作品ですよね。

> 昔々、日曜洋画劇場で観たのが初見です、「映画の中で歌ってた「Amen」、これはゴスペルって言うんですよ・・・」と淀長さんが説明してました。(多分)

出ました!淀長さんのエピソード大好きなんですよ~。彼が活躍してた頃はまだ映画にあまり興味なかったからなぁ。機会があったら、他のエピソードも聞かせて下さい!

> ちなみに、その時、淀長さんは「エイメン」と発音していたので、僕は、ずっとエイメン派です。(笑)

やはり最初に聞いた方が定着しますよね。教会のシーンがあっても日本語吹替えでは「アーメン」って言うから、わたしはアーメン派です。

> 今度の日曜に、しっかりと見直して記事を書こうかなと思っています。
> (予定は未定にして決定にあらず、ちょっと前までの予定では「シックス・センス」でしたから(笑))

いいじゃないですか「シックスセンス」。映画はその日の気分で選べばいいんです!(笑)
2012/06/30 10:10  宵乃〔編集

そして疑問が残った(笑)

 宵乃さん、こんばんは

連休なので遠征(片道30分だけど)して借りてきました。

ホーマー、院長と闘うのに聖書を武器にするなんて、水の中で魚と喧嘩するようなもんでしょ。(笑)

昔観た時は解からなかったけど、ホーマーは、やっぱり「神が遣わしたA MEN(一人の男(人間)」なんでしょうね。
「救い」を求める人達の所へ現れ、終われば存在意義を失い、また別の場所へ流れていく。
だから建設会社の好条件に束縛されないし、そこは彼の居場所じゃないんだと思います。
でも、神じゃなく人間だから、なじんだ仮初めの場所でも去るのに、やっぱり思い入れが出来ちゃう、でも、幾ら考えても、ここに留まる意味を見つけられなくて・・・。
「エーメン」の歌、ホーマーが入れる合いの手の最後、「十字架(終わり)」の次が「復活(始まり)」で、そして「ハレルヤ」。
「復活」したホーマーが次の場所へ向かって行ってENDなのも、なにか暗喩のような気がしました。

ただ、高校時代、吹き替えで見た時の方が感動しましたね。
今回、改めて見直してみると、ちょっと途中タルかったというのが正直な感想で、少し残念でした。

で、ラストが記憶と違ってました。
僕が憶えてたラストシーンは、ホーマーが去った後、修道女達が「エーメン」を歌いながら、新しくレンガ積みを始めてるシーンで「END」だったんだけど、あれは、どういう幻だったんだろう。(謎)
似たシーンがないから混同しようがないし・・・。(笑)
(学校建てて病院建てて、という伏線だけはある)
2013/05/06 00:02  鉦鼓亭編集

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013/05/06 00:22  

訂正!

A MEN>MENは複数形だからAが付いたらオカシイですね。
訂正します。(大汗)
2013/05/06 01:34  鉦鼓亭編集

>鉦鼓亭さん

いらっしゃいませ、こちらもコメントありがとうございます!

> ホーマー、院長と闘うのに聖書を武器にするなんて、水の中で魚と喧嘩するようなもんでしょ。(笑)

ですよね~、無謀なのか相手の土俵で勝ちたい負けず嫌いなのか。
でも、何気に楽しそうなのが微笑ましいです。

> ただ、高校時代、吹き替えで見た時の方が感動しましたね。
> 今回、改めて見直してみると、ちょっと途中タルかったというのが正直な感想で、少し残念でした。

吹替え版ですか、それはちょっと観てみたいかも!
院長とのやり取りなど、耳で聞く方が楽しそう。
あ、昔の有名な声優さんで脳内再生が…。

> 僕が憶えてたラストシーンは、ホーマーが去った後、修道女達が「エーメン」を歌いながら、新しくレンガ積みを始めてるシーンで「END」だったんだけど、あれは、どういう幻だったんだろう。(謎)

あはは、鍵コメも読ませていただきました。検索したら見つかって、本当になんとなくストーリー繋がっていて面白いです!
ラストの印象が薄い作品なんでしょうか、わたしもぼんやりとしか思い出せない…。鉦鼓亭さんの記憶のラストでも違和感ないです(笑)

> A MEN>MENは複数形だからAが付いたらオカシイですね。
> 訂正します。(大汗)

いやいや、でも鉦鼓亭さんの考察は興味深かったですよ。とくに…
>でも、幾ら考えても、ここに留まる意味を見つけられなくて・・・。
という部分は、「ああ、そういう心情だったんだ~」と新たな見方に気付けました。
わたしなんて、この作品を観るまで「アーメン」と「エイメン」が同じ事も、この言葉の意味も知らなかったです!
2013/05/06 14:23  宵乃〔編集

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013/05/06 19:11  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013/05/06 21:18  
名前
タイトル
URL
本文
非公開コメント

■ Trackback

野のユリ
(1963/ラルフ・ネルソン監督・製作/シドニー・ポワチエ、リリア・スカラ、リサ・マン、アイサ・クリノ、スタンリー・アダムス/94分)
テアトル十瑠|2010-10-06 18:45
.