映画「ブラックボード 背負う人」観ました
製作:イラン・イタリア・日本’00
原題:TAKHTE SIAH
監督:サミラ・マフマルバフ
ジャンル:★ドラマ
【あらすじ】黒板を背負い、生徒を探して村々を歩く教師のサイードとレブアル。戦争終結でイラクの故郷へ戻ろうとする一団に出会ったサイードは、国境への道案内を引き受けた。一方、別の道を選んだレブアルは、闇物資を運ぶ子供たちと出会う。
衝撃を受けた作品でした。
黒板を背負った教師が生徒を求めて山道を歩いてゆくとか、鳥の羽ばたきで危険を察知して黒板の下に隠れるとか、最初からカルチャーショックの連続です。
二人の教師が出会う二つの団体は、どちらも生きるので精一杯で”そんな場合じゃない”と彼らを無視するんですが、彼らも次の村に行くまで食いつながなければならないので必死。
子供たちと出会ったレブアルは、読み書きができれば本が読めると交渉するけれど、「僕らはいつも逃げ隠れしてるから、座って本を読む暇は無いんだ」と言われてしまいます。でも、そんな状況でも”自分の名前を書いてみたい”という子供もいて、わずかな食料を分け与えて教えてもらおうとするんですよね。
下を向いて疲れた表情をしていた子供たちが、彼と勉強するようになってから見せる笑顔に感動がこみ上げます。子供が骨折し、黒板を割って当て木にするレブアルの姿にも心打たれました。
また、老人たちと出会ったサイードは、とにかく食糧確保のため一団に溶け込み、時間のある時に勉強を教える作戦に。くるみ数個のために黒板で病気の老人を運び、その娘と結婚もします。
結婚の儀式は黒板を挟んで誓いの言葉をかわす簡単なもの。最初に彼女に教えたのが「あなたを愛しています」という言葉なのが少し微笑ましい。
彼の父親が、何日か振りにやっとおしっこが出て幸せを感じるシーンも生き生き描かれていました。
戦争の爪痕と、そこにあるわずかな歓びの輝きを伝える作品だったと思います。