忘却エンドロール

素敵映画に出会えた時の感動をそのまま書き綴る、映画感想ブログ.

映画「カポーティ」観ました

 | 伝記/自伝/実話  com(12) 

カポーティ
製作:アメリカ’05
原題:CAPOTE
監督:ベネット・ミラー
原作:ジェラルド・クラーク
ジャンル:★ドラマ/伝記/犯罪

1959年11月15日、カンザス州の田舎町で一家4人が惨殺された。すぐに現地に赴いたカポーティは、本を書くため幼馴染ネルと取材を始める。やがて2人の容疑者が逮捕されると、彼はその一人ペリーの信頼を得ようとするのだった。

予備知識なしに観始め、カポーティって誰だっけなぁと思っていたんですが、カンザスの事件の事を聞いて思い出しました。私が高校時代に読むのを途中で断念した「冷血」の作者さんですね。傑作と言われているけれど、私の集中力では読みきれません。映画があるようなのでそちらを観てみたいです。
…そんな、カポーティに全く思い入れのない人間ですが、この作品はよかったです。なんというか、冷酷(冷血)さというのは、人間の弱さから起こるものなのだなぁと、つくづく思いました。

カポーティという人物は名声を得るためなら平気で嘘を吐くし、他人の不幸も、笑い話や同情を引くためのネタとして利用する冷たい人間です。そして、何より自分が傷つくのを恐れ、自分を守るためなら嘘も裏切りも辞さないという、根っからのエゴイストでした。
彼が利用しようとしたペリーもまた、自分を守る事を一番に考えてしまう人間です。あの惨劇に至った経緯もそうですが、カポーティという味方を得てからは、自分は”可哀相”で悪いのは共犯者のほうだと印象付けようとすることもしばしば…。結局はお互いに利用しあっていたんですよね。

しかしながら、お互いに近しいものを感じていたのも確かで、カポーティの「僕らは同じ家で育った。ある日、彼は裏口から、僕は表玄関から出ただけだ。」という言葉や、ペリーの描いたカポーティのスケッチがそれを表しています。
状況が違えばほんとうの親友になっていたかもしれませんが、自身の弱い心に負けて過ちを犯してしまった彼らには、重い自責の念と絶望しか待っていません。(ペリーはカポーティの存在によって少なからず救われたみたいだけど…)
「冷血」というタイトルを聞いた刑事の「それは事件を起こした犯人のことか、それともそれを書こうとするあんたのことか」という言葉がすべてを表しているようでした。
また、カポーティの幼馴染の「救いたくなかったのよ」という言葉もグサリときます。彼女のような理解者がいなければ、カポーティも”裏口”から出て行くことになっていたかもしれません。

余談ですが、観賞後に彼がゲイだと知って驚きました。あんなに魅力的な女性がいるのに恋人ではないみたいだから変だとは思ってたんですが…。というか、気付かない自分のニブさにびっくりです。あと、「ティファニーで朝食を」の原作者だということにも驚きました。

■ Comment

おはようございます、宵乃さん☆

私はカポーティって「ティファニーで朝食を」しか読んでいなくて「冷血」はタイトルだけ知っていました。
なので、ちょっと変わったモノ書きという感じで見たんですけど・・・

>結局はお互いに利用しあっていたんですよね

このひと言が全てを表していると思いますが、
カポーティの方が悪いと思います。
それは自由に動けて嘘も簡単につけるから・・・。
相手は「信じたい・信じられない」を繰り返すしかないのですものね・・・。
なんというか後味の悪い映画でした。

ゲイの件は、物語の最初から大っぴらに言っていたのと、彼女とは友達、そしてカポーティに来てほしいという男性がいた事で、分かりました。
あとで色々と調べて、これ以降長編が書けなかった事で「天罰」と思ってしまいました。

この映画の一点の救いは、彼女の存在(カポーティにハッキリとモノを言ってくれた事)でしょうか?幼馴染って良いモノですね!
2010/04/11 06:42  miri〔編集

>miriさん

いらっしゃいませ。
わたしは「ティファニーで朝食を」も読んでないんですが、そっちのほうも最後まで読めないんじゃないかと思ってます。映画の感想を読み返したら、猫カワイイばっかりでしたし(笑)
カポーティの本が肌に合わない理由が、この作品を観て分かった気がしました。

> カポーティの方が悪いと思います。
> それは自由に動けて嘘も簡単につけるから・・・。

う~ん・・・でも一家惨殺の事を考えると・・・。
あの数年、友人としてのふたりの間だけを考えればカポーティが悪いのはわかりますが、ふたりが根本的に同じだとするとペリーも同じ様に裏切って利用してを繰り返してきたんじゃないかと思うんですよね。あの姉の様子をみても、保身の為にとんでもない裏切りを家族に対して行ったのでは・・・と疑ってしまいました。

> ゲイの件は、物語の最初から大っぴらに言っていたのと、彼女とは友達、そしてカポーティに来てほしいという男性がいた事で、分かりました。

あれ、言ってました!? 自分が変わり者だからと言っていたのは覚えていたんですが、それは覚えてない・・・。さいきん(昔から?)、見逃したり聞き逃したりが多くて困りものです。

> この映画の一点の救いは、彼女の存在(カポーティにハッキリとモノを言ってくれた事)でしょうか?幼馴染って良いモノですね!

ほんとうに、裏切りとは無縁の彼女がいなければ、わたしも観てられなかったと思います。好きな登場人物がいないと観てられないタイプの人間なんですよね~。
2010/04/11 09:50  宵乃

またまたお邪魔いたします☆

>あの数年、友人としてのふたりの間だけを考えればカポーティが悪いのはわかりますが、

ゴメンなさい、私が書いた意味は、上記の意味だけなんです。
・・・浅い感想で恥ずかしいです。

>あれ、言ってました!? 自分が変わり者だからと言っていたのは覚えていたんですが、それは覚えてない・・・。

人間が一杯居るところで「ゲイがどうのこうの」と言っていて、
最初は他の人の事かな?と思っていたんですけど、
後で考えるとあれは自分も含めたそういう人の話だったんだなぁと思ったのです。
だから、もしかしたら「他人の話」だけだったかもしれませんね?

>さいきん(昔から?)、見逃したり聞き逃したりが多くて困りものです。

いえいえ、全然!先日の「インサイド・マン」には本当に恐れ入りました~!(ペコリ)
まだまだ大丈夫ですよ~♪
2010/04/11 13:27  miri〔編集

>miriさん

わたしも全体の印象は”カポーティって嫌なやつ”という感じだったので、miriさんの気持ちわかりますよ~。
ただ、「救えなかった」「救う気がなかったのよ」のくだりで、”救う”ってどういうことだったのかなぁと考えてしまったんですよね。本当の友情で答えてあげる事が一番の救いだったんでしょうけど、それはカポーティが本気で減刑のために動くということで・・・。そうすると、一家惨殺した男がいつか外に出てしまうかもしれなくて・・・あれ?これはいいことなの?ってなってしまったんですよ。
う~ん、この考え方って少しカポーティを庇っているみたい。

> 人間が一杯居るところで「ゲイがどうのこうの」と言っていて、
> 最初は他の人の事かな?と思っていたんですけど、
> 後で考えるとあれは自分も含めたそういう人の話だったんだなぁと思ったのです。

おお、そうでしたか。完全に聞き逃してました。教えてくれてありがとうございます!
これからも、覚え間違いや聞き逃した事があったら、お互いに教えあいましょうね~♪
2010/04/12 07:41  宵乃

洗濯機に呼ばれて

追伸へのお返事を忘れてました。
わたしの拙いイラストでよければ、どんどん使ってください。
ちょっと照れますが、すごく嬉しいで~す!
2010/04/12 08:32  宵乃

こんばんは。

自分は『冷血』を何度かチャレンジして、ようやく、読み終えた記憶があります。

ペリーも勿論、とんでもないひどい人間なんですが

圧倒されたのは
作家の業というのか
この作品で描かれている
カポーティのあまりにも赤裸々な
エゴイステックな姿です。

「実はお前、表から出てるって言っているけど
(ここにも、無意識の優越感を感じますが)
実はもっと、酷くない?」
と思ったことを思い出します。

実際に殺さなかっただけで

その本の中で
農場主たち四人だけでなく
犯人二人は
何度も、何度も読者が読むたびに
死んでいく。

それは、後世の人間たちに死者を悼む気持ちと恐ろしい犯罪に対する恐怖と怒りを思い起こさせますが。

ある意味、彼らを安らかにねむらさせない
死者への冒涜という意味では
はるかに業が深いという気がします。

ニーチェの言葉を借りるまでもなく
こういった怪物や深淵を取り扱った作品には

自分の中にも
そういった怖いものみたさや
エゴイズムなどの

同じような怪物などが
自らの中に存在することを
感じさせられるので

やはり、後味は良くないですね。

長文ですみません。
では


2010/04/12 20:05  きみやす

>きみやすさん

いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

> 自分は『冷血』を何度かチャレンジして、ようやく、読み終えた記憶があります。

きみやすさんでも!? そりゃあ、わたしじゃ読めませんね。(変な安心感)
正直、最初の部分(第一章は読んだんだっけ?)を読んだだけで、なんとなく嫌な感じがしました。

> 「実はお前、表から出てるって言っているけど
> (ここにも、無意識の優越感を感じますが)
> 実はもっと、酷くない?」

確かにそれは思いました。あそこまで事件や殺人犯に興味を覚え、踏み込んでいった彼は、殺人を追体験したも同じですよね。
でも、殺された一家と親しかった人にとっては、実際に殺したペールが憎いでしょうし、見方によって違ってくるとおもうので、どちらが悪いかは比べようがないんじゃないかと思います。

> ある意味、彼らを安らかにねむらさせない
> 死者への冒涜という意味では
> はるかに業が深いという気がします。

こういう本を書いたのは彼が始めてなんですよね?
となると、彼に続いて書かれたこのような本も、彼の業なのかもしれません。

> 同じような怪物などが
> 自らの中に存在することを
> 感じさせられるので
>
> やはり、後味は良くないですね。

そうですね、わたしもこれを観て丸一日、憂鬱でした。凄惨な事件を取り扱った映画もよく見ているので、自分も同じだなぁと考えさせられてしまいます。
そういう意味でも、心に残る作品でした。
2010/04/13 09:27  宵乃

しつこくて、ゴメンなさい☆

>”救う”ってどういうことだったのかなぁと考えてしまったんですよね。本当の友情で答えてあげる事が一番の救いだったんでしょうけど、

本当の友情で“救う”という意味を考えたら、
「自分のした事を心から反省して、次に生まれる時は真人間になる決意をして、死刑を喜んで受け入れるような気持ちにさせる事」だと思いますから、

そういう事は絶対に受け入れない人でしょうし、
そういう事を絶対に言える人でもないのでしょうから、

結局は、そういう二人の間の「友情」という名前の本当はその名前で呼べない、お互いの利害の関係だったのでしょうね~~。

この映画の翌日に「アビエイター」を見て、変人続きでガクッときて、
その翌日に「ウォーク・ザ・ライン」を見て、勝手な男の話ばっかりで、ゲッソリしました。

どうも何回もすみませんでした~!
2010/04/13 19:52  miri〔編集

>miriさん

ああ、よかった~。昨日、コメントをざっと読み直して、あの書き方じゃ言葉が足りなかったと思ってたんですよ。
本当に”救う”と言う事は、もちろんmiriさんの仰るとおりで”心から反省して罪を償う気持ちにさせる”ことだと思います。でも、彼にとっては私が書いたような”救ったつもり”が精一杯で、結局どう足掻いても、”ペリーが「ここから出して欲しい」と願い、カポーティが殺人犯としてのペリーに興味を抱いた”時点で真の友情はありえなかった・・・。だから、どちらか一方ばかりを責めるのは違うんじゃないかなぁと思ったわけです。

> 結局は、そういう二人の間の「友情」という名前の本当はその名前で呼べない、お互いの利害の関係だったのでしょうね~~。

そうですね。前のコメントで”あの数年、友人としてのふたりの間だけを考えればカポーティが悪いのはわかりますが・・・”と書いてしまったけれど、よくよく考えてみれば二人の間にあったのは”友情”ではなかったと気付きました。”友人になれればいいのに”という想いはあったと思いますが。

上手く伝えられず、miriさんを悩ませてしまって本当にすみませんでした。今度お返事するときは、時間のあるときにしっかり考えて書こうと思います・・・。(上のお返事でペリーをペールと書いてるし!)

> この映画の翌日に「アビエイター」を見て、変人続きでガクッときて、
> その翌日に「ウォーク・ザ・ライン」を見て、勝手な男の話ばっかりで、ゲッソリしました。

これは疲れますね。私は意外と好きな作品だけど、連続では勘弁です(笑)
彼らが凄腕のカウンセラーと出会っていたら人生変わってたんでしょうかね~?
2010/04/14 10:09  宵乃

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2010/04/15 10:56  

「ティファニーで朝食を」

先に映画を観て、その後小説を読んだら結末なんて全然違ってたので、あれーっと思いました。
先日、村上春樹の新訳本を買いましたが、「冷血」とは全然違う、ひとことで言えば村上春樹が書いたような文章でした。まだ、数ページしか読んでないんですがね^^
2010/04/21 17:46  十瑠編集

>十瑠さん

いらっしゃいませ。
「ティファニーで朝食を」は映画しか知りませんが、カポーティがマリリン・モンローでの映画化を望んでいたとかいう話は聞いたことがあるので、まるで印象が違う作品なんでしょうね。しかも結末まで違うなら、別の作品と考えた方がいいのかもしれません。

> 先日、村上春樹の新訳本を買いましたが、「冷血」とは全然違う、ひとことで言えば村上春樹が書いたような文章でした。まだ、数ページしか読んでないんですがね^^

村上春樹ですか~。見かける度に読んでみようかなぁと思いつつ、今まで手に取ったことがありません。たっぷり時間のあるときに一度挑戦してみたいです。
2010/04/22 09:25  宵乃
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カポーティ
(2005/ベネット・ミラー監督/フィリップ・シーモア・ホフマン、キャサリン・キーナー、クリフトン・コリンズ・Jr、クリス・クーパー、ブルース・グリーンウッド、ボブ・バラバン、エイミー・ライアン、マーク・ペルグリノ、アリー・ミケルソン/114分)
テアトル十瑠|2010-04-21 17:20
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