映画「野いちご(のいちご)」再見しました

原題:SMULTRON STALLET
製作:スウェーデン’57
監督:イングマール・ベルイマン
ジャンル:★ドラマ
【あらすじ】医学に貢献したとして名誉博士号を授与される事になったイーサク。しかし、昨晩の悪夢が彼を憂鬱にし、急きょ飛行機をやめ車で向かう事に。昔の住居に寄ったのをきっかけに、彼は自分の孤独な人生を振り返り始める。
わたしの大好きな作品。
大好きといっても、初めて観た時はあまりわかってなくて、いまいちよくわからないけれどじわじわ感動したという感じ。そんな”よくわからない”部分を見直そうと再見してみました。
まず、最初の悪夢。針のない時計と誰もいない町並、自分の棺おけ…この不安を掻き立てるような気味悪さは、まさしく悪夢を見ているときのそれ。イーサクの孤独、無為に過ごした時間、死への恐怖が伝わってきます。
悪夢をよく見る私としては、こういう夢(内容ではなく雰囲気)を見たときの漠然とした不安感がよみがえるようで、とてもリアルに感じました。
他にも、みっともない夫婦喧嘩、妻の密通を見てしまったときの悪夢、かつてのままの姿をした婚約者サーラに鏡を突きつけられる悪夢、息子が嫁に言った「何時でも死ねるように身軽でいたい」というセリフなどなど、グサッとくるシーンが結構続きます。
そんななか、途中で一緒になったヒッチハイカーの若者、特にサーラそっくりの無邪気なお嬢さんが輝いていました。イーサクにとっても彼女は眩しすぎて、始めは彼女たちをみて”もう取り戻せないもの”を痛感していたようですが、しだいにその思いも変わってきます。お別れに歌を贈り「おじ様がずっと好きよ」(うろ覚え)と笑顔で彼女が言った時、彼はもう過去を乗り越えて素直にそれを喜べるようになっているんですよね。
彼と長年一緒に居たメイドや息子の嫁との関係の変化、最後に彼が思いを馳せる幸せな光景など、とても希望に満ちたラストに自然と涙が零れました。
いつまでも心に残る名作です。
■ Comment
ベルイマン作品としては、宗教色があっても気にならない作品だと思います。老いとか人生について描いたと考えれば取っ付きやすいし、全てを受けいれたラストシーンには得も言われぬ感慨が。
最後に思い出すのが両親というのは、何処の国でも、いつの時代でも同じなんですかね。
いいですね~ベルイマン。
この映画の中身はよく覚えてませんが(寝てたのかも)、
白黒のイラストがいい感じです。
悪夢っぽいです。
そういえば僕は最近あまり悪夢をみないな~。
昔はよく恐ろしいバケモノに追われたんですけど(笑)。
『百万両の壺』、面白かったです。
やはり未見の作品でした(>_<)(←見てみないと分らないのです…)
ちょっと調べてから、来週にはブログに書くつもりです。
確かベルイマン作品を観たのはこれが初めてだったので、他の作品を観た時はちょっとびっくりしました。宗教には疎くて。
「秋のソナタ」は結構好きなので、もっといろいろ放送してほしいところです。
ラストシーンのあとは、しばらく動けませんでした。
20代でこんなに老人に感情移入してしまうのもどうかと思いましたが(笑)、もっとも安らげるがあの光景というのは年齢関係なく同じですよね。
2010/03/12 07:00 宵乃
悪夢っぽく描けてます?
いちばん「ぞわっ」としたシーンです。
わたしは悪夢が多いので(小心者のさが?)、あの雰囲気にのまれてしまいました。
むかしはバケモノに追われ、だんだん闘うようになり(笑)、最近はユーレイみたいに傍観してます。
> 『百万両の壺』、面白かったです。
あ、借りられましたか、良かった~。
ケンさんの格好いいレビュー楽しみにしてますね。
2010/03/12 07:14 宵乃
やっと昨夜鑑賞しました。
再見ですけど、前に私のブログにコメント下さったときの返信に書いたとおりに、全く覚えていませんでした。
でも、ラスト間近の野いちごの咲く野原のシーンは、見た事ある!と思いました。
なのでほぼ初見という感じで・・・数日前に「叫びとささやき」を見たから、「野いちご」は分かりやすい方の映画だと、納得しました。
感想ですが、タイトルの意味が、多分、婚約者のサーラが野いちごを摘んでいた日の出来事が違っていたら(弟との事も、本人との事も)そのまま結婚して、皆人生が全然違っていただろうけど、
それでも自分はこうして生きてきて、両親・長生きしている母・早くに他界した折り合いの良いとはいえなかった妻・たった一人の息子・いまひとつ仲の良くない嫁・長年の家政婦・・・
自分がこうして表彰される表の舞台での活躍は、その人たちの居たからこそ・・・と感謝して人生を終われる、そのことへの感謝、を感じました。
長々とゴメンネ!
あと、老人問題が、初見時よりもずっと切実で、自分の世代も、親の世代も、この映画の出来た頃より、ずっとずっと特に日本は難しくなっているなって思いました。
宵乃さんの前のコメントも、今回のレビューも、この作品への愛情を感じ、いつも書くことですが“真っ直ぐな視点”が眩しいくらいです☆
2010/03/15 09:13 miri〔
編集〕
いらっしゃいませ~。
ラストシーンいいですよね。それを眺める主人公の表情も、今までになく柔らかで。
わたし的には、あのままサーラと結婚していたら、サーラもあの妻のようになってしまったんじゃないかなぁと思います。そして、相手はやっぱり弟じゃないかと。
一見立派な人物なのに、側にいると優しさを感じられない。彼の身近なひとたちは皆そう感じて、そのために離れていったようにみえました。
> 自分がこうして表彰される表の舞台での活躍は、その人たちの居たからこそ・・・と感謝して人生を終われる、そのことへの感謝、を感じました。
これは私も感じました。これからは周りの人たちや息子夫婦(孫も見れるか!?)とのつながりを大事にして、最期のときまで精一杯、今までの空虚な人生を埋めていってほしいです。
> あと、老人問題が、初見時よりもずっと切実で、自分の世代も、親の世代も、この映画の出来た頃より、ずっとずっと特に日本は難しくなっているなって思いました。
そうですね・・・身近なことから少しずつ解決していければいいけど、それが”他人の事なんて知らない”になってしまったり。やっぱり、ひととのつながりは大事ですよね。
miriさんのコメントにはいつも励されてます!
これからも宜しくおねがいしますね~♪
2010/03/15 11:17 宵乃
宵乃さんからコメントを頂戴してから、長らく読んでいなかった愛読書「老いてこそわかる映画がある」を少し読み返してみました。
「野いちご」の中で「過去を振り返る事は人生を問い直す事である」という意味の一節が強印象でした。
奇しくも今、映画を通じて自分を回顧しています。若い頃に比べて「野いちご」のイサクの心境が、より解るような気もします。
私にもまだ未来が残っていると思います。プラス思考で生きたいと思いました。
このような機会を与えて下さった宵乃さんに感謝です。
2012/05/19 14:10 アスカパパ〔
編集〕
いらっしゃいませ、コメントありがとうございます!
「老いてこそわかる映画がある」という本があるんですね。わたしみたいに、あまり同じ作品を繰り返して見ないタイプの人間には必要かも。若い頃に印象に残らず、そのまま再見しない作品もたくさんありそうですし。
> 「過去を振り返る事は人生を問い直す事である」という意味の一節が強印象でした。
> 奇しくも今、映画を通じて自分を回顧しています。若い頃に比べて「野いちご」のイサクの心境が、より解るような気もします。
わたしもこのブログを読み返して、自分を見つめなおす時が来るんでしょうね~。
前はきちんと記録を残していなかったので、こうしてブログを始めて、アスカパパさんのような映画友達もできて、本当によかったです。
わたしの方こそ、「野いちご」の事を思い返すことができたし、こうやってお話できて嬉しく思います。これからもよろしくお願いします!
>初めて観た時はあまりわかってなくて、いまいちよくわからないけれどじわじわ感動したという感じ
そうそう!
私も観終わってすぐは呆然としちゃったんですが、
後からじわじわときてます!!
>彼はもう過去を乗り越えて素直にそれを喜べるようになっているんですよね。
心境の変化のきっかけはコレ!っていうのは
はっきりとはわからないけれど、
色んなことを経験したことで変わる事ができるのが人間なのかもしれませんね。
ウン十年と偏屈に生きていても、
きっかけがあれば変わる事ができるんだ、とちょっと安心できました。
私も結構かたくなだったりするので。笑
いらっしゃいませ、記事を見つけてくださって嬉しいです♪
やっぱりこの作品、じわじわ来ますよね~。
きっと誰でも共通するような、ひとが生きるということの根底の部分を描いている気がします。
> 色んなことを経験したことで変わる事ができるのが人間なのかもしれませんね。
> ウン十年と偏屈に生きていても、
> きっかけがあれば変わる事ができるんだ、とちょっと安心できました。
そうそう!主人公がもう変わりようのなさそうな、考え方も凝り固まった老人っていうのがよかったですよね。彼の変化も自然で素直に納得できたし、希望を与えてくれました。
> 私も結構かたくなだったりするので。笑
同じく(笑)
たまに見返して、前向きにゆっくり変わっていきたいです。