製作:日本’01
監督:市川崑
原作:山本周五郎
ジャンル:時代劇/ドラマ
【あらすじ】天保末期の江戸、飢饉により人々は貧窮に喘いでいた。泥棒に身を落とそうとしていた若者・勇吉は、金を溜め込んでいる貧乏長屋の噂を耳にする。さっそく泥棒に入った勇吉だったが、そこで5人の子供を育てる母おかつと出くわし…。
泥棒に入った勇吉がおかつに諭され涙するところまでは、私好みの人情喜劇だなぁと思っていたんですが、後半は意外と普通でした。
なんというか、おかつが一家総出で救おうとしていた男が、泣き所を間違えているような気がしたんですよね。自分がやり直すために精一杯のお金を用意してくれた事に感謝するのは当たり前なんですけど、彼にとって一番嬉しかったのは、間違いを犯した自分を変わらず受け入れてくれるひとがいるということなんじゃないかな、と。
だから、家の前で笑顔で迎え入れてくれた時に男泣きした方がいいのに、と思ってしまったんです。登場人物がいいひとばかりなので、お金を目の前に感涙するのは、ちと現金すぎる気がしました。
とはいえ、ちょこちょこ笑いを入れてくるので、最後まで楽しく観れます。
とくに、おかつ一家の陰口をたたく可笑しな四人組が、大家のものまねをして”あれを聞くだけでぞぅっとする”と話しているシーン。くるぞ、くるぞ、わかっていても、ちゃんと大家が現れてものまね通りに話し出したのには大笑いでした。
たまに入る音楽が合わない気がしましたが、後味も良く、なかなかいい雰囲気の作品です。