TV映画「ブロークン・トレイル 遥かなる旅路」観ました
空を描いているのが一番楽しいかもしれない。
製作:アメリカ/カナダ’06
原題:BROKEN TRAIL
監督:ウォルター・ヒル
ジャンル:★西部劇/ドラマ/アクション
【あらすじ】1898年アメリカ西部。甥のトムに母親の死を告げたプリントは、彼とオレゴンからワイオミングまでの500頭の馬追いの旅に出る。だが旅の途中、ひょんなことから身売りされようとしていた中国人の少女5人を助けることになり…。
アメリカのTV映画で、お昼に二日に分けて放送していました。
始めの中国人少女たちの様子は観ているのが辛くて、ややストーリーに集中できなかったんですが、プリントらと彼女たちが出会ってから一気に惹きこまれました。気さくな爺さんという雰囲気のプリントが、言葉の通じない娘達とコミュニケーションをとり、しだいに心通わせ笑顔をみせるようになるのがいいんですよね。西部劇というと活劇が見せ場というイメージですが、これはロードムービー部分がメインでした。
印象に残ったのが、広大な自然を500頭もの馬が走り抜けていく様子! わたしには絶対に描けないけど、あの迫力、美しさは頭から離れません。また、途中で出会うインディアンに通行料を要求され、馬二頭の代わりに木彫りの馬ともう一頭で済ませるのも良かったです。後ろで甥が銃を構えている中、プリントとインディアンが目で語って…格好いいなぁ。
あと、途中で仲間に加わった通訳の中国人が頭に怪我を負い、プリントとトムが「どう縫おうか」と話しているのが面白かったです。
そして、終盤の(短い)撃ち合いの後、逃げ去る悪漢をトムが拳銃で仕留めたのにはしびれました。いつもなら、悪人でも法によらず殺すのは…とかちょっと考えてしまう私ですが、流石に西部開拓時代(とくによそ者)はそんなこと言ってられないんだという事がわかってきた今日この頃です。
ラストの、トムとプリントそれぞれのロマンスの行方も、二人の性格が表れていました。
見ごたえ十分の大作だったと思います。
<再見追記:2015/10/10>
初見は例の93分番組で観たので、BSプレミアムでのオンエアにガッツポーズでした。吹き替え版でしたが、カットされていた部分も観られて満足です。
旅は道連れと仲間が増えていったり、ふいに命を落とす人もいたりと、厳しい場所で寄り添いながら生きていく人々から目が離せなかったし、草原を走り、山を駆け登る馬の群の美しさは何度観ても美しい。
それに、何気に彼らの仕事のことや旅の過程、時代背景がしっかり描かれていて驚かされました。
例えば序盤で、仔牛に焼印を押す作業の時、トムが何かを切り取ってバケツに棄てていて(しかも犬がそれを食べる)、何をやってるのかと思ったら去勢というから怖い。焼印だけでも痛々しいのに、麻酔なしでそんなことまで…。
しかも、このシーンが中国人少女たちの選定の直後に描かれるから、いろいろ考えてしまいます。人間、慣れればどんな事でもできるし、それをわかっているから同類にならないよう拒絶したり、他人のために頑張れるのかなと。
他にも、あれだけの馬をまとめられるのはリーダー馬をコントロールしてるからで、夜中はリーダーさえ捕まえておけば逃げないとか、旅の途中の食料は道中で獲物を狩ったり、出会った他の旅人(羊飼いとか先住民)と取引したりしてることなど、ちょっとした描写から伝わってきて「なるほど」と思いました。
また、後半は少女たちを取り戻そうとする追っ手の影が付きまとい、思ってたより緊張感ある旅になってます。せっかく少女たちが笑顔を取り戻し、彼女たちを番号ではなく名前で呼ぶように(プリントは照れ屋でなかなか呼ばなかったけど)なったのに、その幸せも一瞬で壊れてしまいそうでハラハラさせられるんですよね。
悪役の男の不気味さもよく出ていたし、途中で助けた娼婦ノラのエピソードも効いてます。
終盤、ついに火蓋が切り落とされたと思ったら、妙に存在感が薄かったバイオリン弾きの人が…(涙)
少女の一人にバイオリンを教えてるくだりしか印象に残ってないけど、とってもいい人でした。トムとプリントがちょっと険悪ムードになった時とか緩衝材の役目を果たしてたし、先住民と会話できるし、銃や馬の扱いも上手い。いるだけで雰囲気和みます。
ラスト、プリントがトムにお金を渡し、元手として土地は売ったと話したのは、そのお金でお前が買い戻せということだったのかな?
ノラに「理想の女に出会うなんて奇跡に近い。シャムの王になるのと同じようなものだ」と言っていた彼が、彼女と話したその川辺にシャムと名付けていたというのも、なんとも回りくどいメッセージ。
地味ながら、この時代に必死で生きていた人々の悲哀や力強さを丁寧に描いた作品で見応えありました。
困ったのは、最後の実話っぽいテロップですね。また英語の記事を調べまくってしまいましたよ(汗)
https://siambend.wordpress.com/broken-trail-and-siam-bend/
こちらの記事によると、フィクションだけど歴史的背景は忠実ということみたい。でも、脚本家によると日記や手紙などを基にエピソードを作り上げていったとのこと。
ちなみに、原題の意味は「とぎれとぎれの足跡」というところでしょうか?(英語苦手なので鵜呑みにしないでね)
彼らの旅はそんな感じだったし、脚本家(同じタイトルの小説も書いてる)も足跡を辿る気分で物語をつくったのかも知れません。