読み:ちりさんじゅうさんにんきぼうのきせき
原題:THE 33
製作:アメリカ・チリ’2016 127分
監督:パトリシア・リゲン
原作:エクトル・トバール
ジャンル:★ドラマ
【あらすじ】2010年8月5日。チリのサンホセ鉱山で落盤事故が発生し、坑道の奥深くに33人が閉じ込められてしまう。30人で3日分の食糧しかなく、場所が場所だけに救出もままならない。次第に生存が絶望視されていくが、事故発生から17日目、ついに33人全員の生存が確認され…。
2010年のチリ鉱山落盤事故で閉じこめられた33人が救出されるまでを描いた作品。ドリルで一直線に掘っても半月ほどかかる地下700mの避難所に閉じ込められ、食料は30人で3日分という絶望的な状況なんですが、ラテンのノリのおかげなのか意外とリラックスして見られました。生存確認までが割とサクサク進みます。
それでも伝わってくる悲壮感は、地上の明るさと地下の薄暗さのギャップのせいでしょうか。夫や息子の帰りを待ちわびる人たち、僅かな食糧で不安と戦いながら過ごす男たち、そしてプレッシャーがのしかかる政府のお役人さんなど、事故に関わった人々をわかりやすく描いていました。
印象的だったのが、最後の食糧を分けて食べるくだりです。たった一つの缶詰を33人で分け、薄暗い場所で静かに食べていたところ「無性に~の作ったエンパナーダが食べたい」という言葉をきっかけに、それぞれの妻や母親が好物を持って現れるんですよ。チリの家庭料理エンパナーダや巨大バーガー、混ぜご飯?にしぼりたての牛乳など、明るい光と美味しそうな料理の幻想シーンが、ほんのわずかの間繰り広げられます。そして、小さなコップに分けられた缶詰のスープのようなものを啜った瞬間に現実に戻ってくるんですよね。
もう食べ物は尽き、ドリルの音も聞こえてこないという絶望的な状況でも、人間は夢を、希望を忘れないのだと伝わってきました。
そこから生存確認、連絡手段の確保、新しい食糧と一気に自体は好転するものの、そのままハッピーエンドといかないのが人間です。家族と映像を通じて話せたからこそ、このまま上手く脱出できるかわからないといった不安が付きまといます。そんな不安から些細なことでケンカになったり、みんなの心が離れそうになったり…。
でも、やっぱりラテンの血なのか、ドロドロしそうになっても前向きに乗り越えられるところがいいですね。
エンディングで見られる実際の彼らの幸せそうな笑顔を見ると、きっと実際にこんな感じだったんだろうなぁと思えました。
年齢も人種も関係なく強い絆で結ばれた彼らの友情が、いつまでも続いていきますように!