忘却エンドロール

素敵映画に出会えた時の感動をそのまま書き綴る、映画感想ブログ.

映画「丹下左膳餘話 百萬兩の壺(たんげさぜんよわ ひゃくまんりょうのつぼ)」観ました

 | 時代劇  com(4) 
Tag:日本 

丹下左膳餘話 百萬兩の壺
製作:日本’35
監督:山中貞雄
原作:林不忘
ジャンル:★時代劇/コメディ/ドラマ

【あらすじ】ある小藩に伝わる”こけ猿の壷”に、百万両の在りかが示されていると判明した。だが、壷は婿入りした弟・源三郎に譲っており、彼もすでに手放してしまっていた。一方、矢場に居候する用心棒・左膳は、孤児・安吉を引き取り…。

タイトル漢字ばっかだし音質悪いし、どうかなぁと思って観始めたら超面白かったです。
主役は隻眼隻腕の恐そうな剣豪なんだけれども、情に脆くて安吉を引き取ってから完全に”親ばか”になってしまいます。
安吉に父親が亡くなったことを伝えられず、「お前男なんだから、そう簡単に泣いたりしないよな?」「一度も泣いたことがないんだな?」と念を押した挙句、「ああ、一度だけ泣いたんだった。おっ母が死んだときに。」と言われてやっぱり伝えられなかったり。(結局、矢場の女将お藤に頼んだ)
寺子屋でいじめられていると聞いて、いてもたってもいられず後から追いかけ、現れたいじめっ子を一喝したりと、どっからどうみても”ほのぼのパパさん”です。
一方、お藤はというと、「あんな小汚い子供、ここに置いてやるもんかい」とか「わたしは子供が嫌いなんだ。面倒なんてみないよ!」ときついことばかり言います。でも、画面が切り替わると、さっきやらないと言っていたことを母親のような顔をしてやっているんですよね。もう、いっぺんに好きになってしまいました。
他にも、安吉を道場にやるか寺子屋にやるか言い争う様子とか、お藤が唄いだすと左膳が招き猫を後ろ向きにしていたのを安吉がやるようになったりとか、口喧嘩を聞いて家を出た安吉を迎えに来た二人の様子とか、実に家族らしい家族でみていてあったかい気持ちになります。
源三郎と妻とのやりとりや壷を巡るどたばた劇も、文句の無い楽しさでした。
時代劇で一番好きな作品になったかもしれません…。

関連記事
第7回「丹下左膳餘話 百萬兩の壺」を観ませんか?
映画「丹下左膳餘話 百萬兩の壺」再見しました

■ Comment

こんにちは~。
これ、最高ですよねぇ!私もこの映画大好きです。あの省略のすっとぼけた間合いが、なんとも絶妙でおかしいですよね。また観たくてBS録画しようとしたんですが、しくじってしまいました...ああ、記事を読んだら無性に観たくなってきた...

同じ俳優が主役のまじめな丹下左膳モノがいくつもあって、この作品はそのパロディらしいんですが、順番に観た昔の人は、突然の軽いノリにそうとうびっくりしたでしょうね。。。
2009/11/16 18:38  mardigras

Re: タイトルなし

やったー、仲間だ!!
時代劇の記事を書いても反応うすくて、ちょっと心細くなってました(涙)
この作品、ほんっと面白いですよね!

> 同じ俳優が主役のまじめな丹下左膳モノがいくつもあって、この作品はそのパロディらしいんですが、順番に観た昔の人は、突然の軽いノリにそうとうびっくりしたでしょうね。。。

そうですね~。わたしは他の丹下左膳は知らないので、真面目な様子を観たら「ほんとは親馬鹿のくせに♪」とか思ってしまいそう(笑)
若き天才監督と名高かった山中貞雄さん・・・三作品しか残っていなのが残念です。
2009/11/16 20:59  宵乃

肩こりにも効くかもしれない(笑)

 こんばんは!

(父親の事を)やっぱり伝えられなかった>この時の、途方に暮れたような困った顔が実に可愛い。
小判でメンコして、チャリ~ンと音立てて遊んでるのもシュールだし。(笑)
道場破りシーンの殺陣も、とんでもないのに迫力が有って、「戦前に、こんな映画があるんだ」って愕然としました。
もう、出てくる人間が、本当に「愛すべき人たち」ばかりで(中間を除く)、見てるうちに、どんどん自分の目尻が下がるというか、顔がデレッと締りがなくなる、そんな幸福感に包まれた作品だと思います。

「人情紙風船」と、黒澤監督の「どん底」を見比べてみるのも面白いですよ。
黒澤さんは、監督デビューの頃、「目指せ!追い越せ!山中貞夫」だったらしいのですが、この2作品、なんか良く似てるんです。
「どん底」は、原作ゴーリキーの台詞を忠実に使ってるにもかかわらず(未読~笑)、僕の私的感想は黒澤版「人情紙風船」じゃないだろうか、なんです。
どちらも、素晴らしい出来の作品だと思っています。
う~ん、宵乃さんは、又、台詞が聞き取れなくてイライラかも、ですが。(笑)
機会が有ったら、チャレンジしてみて下さい。
2012/07/13 01:46  鉦鼓亭編集

>鉦鼓亭さん

いらっしゃいませ!
ホント可愛いですよね~、強面の剣士があんな表情を見せるなんて!

> 小判でメンコして、チャリ~ンと音立てて遊んでるのもシュールだし。(笑)
> 道場破りシーンの殺陣も、とんでもないのに迫力が有って、「戦前に、こんな映画があるんだ」って愕然としました。

面白いシーンと迫力あるシーンのギャップが素敵です。こんな面白い作品をずっと知らなかったなんて…と思ってしまいました。

> もう、出てくる人間が、本当に「愛すべき人たち」ばかりで(中間を除く)、見てるうちに、どんどん自分の目尻が下がるというか、顔がデレッと締りがなくなる、そんな幸福感に包まれた作品だと思います。

まさにそんな感じでしたよ~。顔がにやけてばかりでした。時代劇にも色んなものがあるんだと教えられた作品です。

> 「人情紙風船」と、黒澤監督の「どん底」を見比べてみるのも面白いですよ。
僕の私的感想は黒澤版「人情紙風船」じゃないだろうか、なんです。

うわぁ、かなり重い二作品ですね…。「どん底」はよく覚えてないけど、タイトルからして重そうです。元気があったら挑戦してみま~す。
2012/07/13 11:13  宵乃〔編集
名前
タイトル
URL
本文
非公開コメント

■ Trackback

山中貞夫監督のこと
○陸軍歩兵伍長としてはこれ男子の本懐、申し置く事ナシ。 ○日本映画監督協会の一員として一言。  「人情紙風船」が山中貞雄の遺作ではチトサビシイ。  負け惜しみに非ず。 ○保
セピア色の映画手帳|2012-07-13 01:47
.