忘却エンドロール

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映画「秋日和(あきびより)」観ました

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Tag:小津安二郎 日本 

秋日和
製作:日本’60
監督:小津安二郎
原作:里見とん
ジャンル:★ドラマ

【あらすじ】三輪の七回忌に集まった旧友、間宮、田口、平山。彼らは美しく成長した三輪の娘・アヤ子にお見合い話を持ってくるが、彼女は母親を思ってそれを断った。では、まず母親・秋子に再婚の話をと、独身の平山が候補に挙がるが…。

小津監督の作品は、これを含めて4作しか観ていないのだけど、その中ではこれが一番わたし好みでした。ちなみに他に観た作品は「浮草」(雨の中、愛人と睨み合うシーンが印象的)、「晩春」(途中から娘のファザコンっぷりについていけなくなりました)、「東京暮色」(暗い…)です。

この作品はかなりユーモラスな雰囲気で、いつもの独特な会話のテンポがぴったり合ってました。
まず旧友3人が、「奥さんが美人過ぎると、旦那は早死にするのかな」「じゃあ、ここの女将の旦那は長生きだね」と陰でこそこそ笑っているような性格です。ヤな感じの客…とは思ったものの、女も3人揃えば同じ様なものですからね。どこにでもいそうなおじ様というところ。
そして、こんなおじ様方が暇をもてあますと、余計なお節介を始めてしまうみたいです。アヤ子に結婚させるため、まず母親を再婚させようと独身の平山に白羽の矢が。最初は嫌がる素振りを見せていた彼ですが、いつの間にやら結婚する気満々に。でも、一方で焚きつけたふたりはすっかり忘れているという…。
秋子さんに話してきてくれと頼んでも、”え、何の話?さっぱり見えてこない。”という感じだし、彼女に再婚の意思がなくて平山の事を伝えられず、”あいつはしばらく放っておこう”と2人で示し合わせたり。報告を聞きたそうにする平山と、彼と目を合わせないようにする2人のシーンはかなり笑えます。個人的に一番好きなのは、彼らのせいで母子喧嘩に発展し、怒鳴り込んできたアヤ子の友人と平山との和解後の会話。

「ねえ、おじちゃま。本当に三輪のおば様を愛せるの?」
「ああ、本当だよ。本当に愛せるよ。」
「ずっとよ。永遠に愛すのよ。」
「ああ、ずっとだよ。永遠に愛せるよ。」

これが二度三度繰り返され、地味に笑えました。
こんな幸せそうな彼が、ラストに見せる子供っぽい態度も可笑しかったです。
気が付いたら彼の事ばかり書いてしまったけれど、母子のドラマもそこまでドロドロしていなくて良かったです。全体的にほのぼのした作品でした。

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■ Comment

小津作品について

宵乃さん、こんにちは。
コメとトラバ、ありがとうございました。

「秋日和」は初めて観た小津安二郎の映画です。
ご指摘の通り、ほのぼのとした感じがとても良くて、現代の映画を見慣れた眼にはとても新鮮に映りました。
そしてwancoとしては、原節子の奇麗さが印象に残りました。

小津作品で他に見たのは、「東京物語」と「秋刀魚の味」だけですが、機会があればもっと観てみたいと思っています。
2010/07/31 17:10  wanco&nyanco

>wanco&nyanco さん

いらっしゃいませ。
わたしも小津作品は観る機会がなかったんですが、bs2で特集されたのをきっかけにこの作品にも出会う事ができました。やはり日本人で映画好きなら観ておきたいと、なんとなく義務感に駆られてしまいます(笑)

> 小津作品で他に見たのは、「東京物語」と「秋刀魚の味」だけですが、機会があればもっと観てみたいと思っています。

あ~、それは未見ですね。まあ、50作以上あるので気長に機会が巡ってくるのを待つのがいいかもしれません。きっとBS2でもまた特集を組むと思いますよ。
2010/08/01 10:20  宵乃

こんばんは☆

本当に涼しげな原節子さんが、ありありと思い出されます。
コスチュームも勝因の1つかも?

>この作品はかなりユーモラスな雰囲気で、いつもの独特な会話のテンポがぴったり合ってました。

良い作品でしたよね~。

>個人的に一番好きなのは、彼らのせいで母子喧嘩に発展し、怒鳴り込んできたアヤ子の友人と平山との和解後の会話。
>母子のドラマもそこまでドロドロしていなくて良かったです。
>全体的にほのぼのした作品でした。

自分の感想文を読んでも、このあたり同感のようです。
あとは、今現在の「時代」は、この映画の頃と比べて変わってしまったな~と寂しく思ったりしました。

****************

「御法度」の教えて下さったページ読みました。
とても興味深く書かれていて、分かりやすかったし、
そういう答えが正しいのかもしれない・・・と納得がいきそうでした。

再見の時には必ず読みかえしたいです。
そのページの人が書いているように「自分なりの答え」を見つけられそうだからです。

しかし凄い人もいるもんですね~。
ネットは素晴らしい☆

****************

私も深津絵里は好きな女優です。
あの作品も彼女でなければ魅力半減だったように思います。
彼女はあの役柄に命を吹き込んだと思います!

>その事故前の略奪愛について、観ている間と見終わってしばらく気付かなかったんですよ(爆)

これこれ、私、宵乃さんらしくないな~?と思っていたのです。
まぁそれほど今の博士の「人となり」に感じるモノがおありだったと思うのですが、

私的には人間はそういうモノだと思えました。
普通に過ごしていたら、いくらでも独身女性がいるのに、わざわざそういう女性に惹かれる・・・そんな人だったけれども、そのこころの奥深いところには、今表面に出ているような人間が生きていたのだな~と。
裏と表があってこその人間・・・そんな気がしました。。。
2013/04/19 18:49  miri〔編集

>miriさん

> 本当に涼しげな原節子さんが、ありありと思い出されます。
> コスチュームも勝因の1つかも?

原節子さんって、どちらかというと日本人的な体型ではないのに、着物(ゆかた?)を美しく着こなしてますよね~。ただ座って微笑んでいるだけのシーンなのに、描きたい!と思わせるものがありました。

> 自分の感想文を読んでも、このあたり同感のようです。
> あとは、今現在の「時代」は、この映画の頃と比べて変わってしまったな~と寂しく思ったりしました。

同じように感じたという事で嬉しいです。この監督の嫁入りにまつわる作品のなかでも、とても見やすかったと思います。
失われていくものがあるのは寂しいですが、こうやって映画として残すことで、人々がその価値を再発見する時がくるかもしれませんね~。

> ****************

> 再見の時には必ず読みかえしたいです。
> そのページの人が書いているように「自分なりの答え」を見つけられそうだからです。

ホントわかりやすくて、作品をより楽しもうと思わせてくれる記事でした。
とくに、あの作品の疑問点をまとめていたのが素晴らしくて、再見する時は自分なりの答えを見つけよう!という気になります。
お互い、いつか再見しましょうね~♪

> ****************

> 彼女はあの役柄に命を吹き込んだと思います!

やっぱり深津絵里はいいですよね。彼女以外が演じていたら、嘘くさく感じたかもしれません。
素晴らしい女優さんだと思います。
あ、あと話がそれますが、武田真治は出演作がぱっと思い出せなかったので、私的に初めて印象に残る役を見たなぁという感じでした。「南くんの恋人」しか思い出せない…(笑)

> 私的には人間はそういうモノだと思えました~
> 裏と表があってこその人間・・・そんな気がしました。。。

そういうところも気付かせて考えさせてくれる、深い作品でした。普通に生活していたら、自分を含む人間の表の部分ばかりを見てしまいますもんね。
現在の博士と過去の博士が結びつかなかったのも、そういうことだったのかと思います。本質をみられるように心がけたいです。
2013/04/20 09:38  宵乃〔編集

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2015/12/05 20:02  
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秋日和
初めて小津安二郎に注目したのはヴィム・ベンダースの映画を見てでしたが、やっと彼の作品を見ることができました。
夫婦でシネマ|2010-07-31 17:13
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