忘却エンドロール

素敵映画に出会えた時の感動をそのまま書き綴る、映画感想ブログ.

映画「エデンの東(えでんのひがし)」観ました

 | 青春ドラマ  com(6) 
Tag:エリア・カザン 

エデンの東
製作:アメリカ’55
原題:EAST OF EDEN
監督:エリア・カザン
原作:ジョン・スタインベック
ジャンル:青春/ドラマ

【あらすじ】1917年、モントレーの町外れ。死んだと聞かされていた母親の行方を突き止めた青年キャル。兄アロンばかりが父親に可愛がられ、彼は自分が母親似のせいだと疑っていた。そんな時、父親がレタスの長距離輸送事業に失敗し…。

あやうくタイトルを「東のエデン」にするところでした。
という訳で、まずはタイトルの意味から。
この物語は、旧約聖書、創世記の”カインとアベルの確執”を題材にしており、その中でカインが弟殺しの罪でエデンの東(罪人のいる場所=現世)へ追放された、というところからきているようです。

息子と父親の確執がメインなんですが、わたし的にはヒロインのエイブラが輝いて見えました。最初は年上のぱっとしないお姉さんという印象だったのが、キャルがかつての自分と同じ悩みを抱えていると知ってからは優しく彼を導く存在になってゆくんですよね。
彼女がいなかったらラストに救いは存在しなかった!
ただ、戦争で儲けたお金をプレゼントしてもお父さんは喜ばないよと一言あれば…。父親の断り方も、見ていて「グサッ」とくるものがありましたけど。
そして、終盤まで存在感の薄い兄アロン。エイブラの気持ちの変化に気付いていながら、勝手に父親に婚約発表したところでやっと目立ってきた感じだったので、「いい子」というより「卑怯者」のイメージが強いです。キャルも母親を利用して復讐してしまうし、この親子はみんな問題ありだったみたい。でも、母親の真実を知ったアロンが気が狂ったようになってしまうのは、いくらなんでも弱すぎだと思いました。
父親とキャルには救いがあったけれど、アロンには何もないというのも哀しいです。

<2018/3/19 再見>

久しぶりに再見。初見時と同じくらい引き込まれたものの、ラストにそこまで希望は持てませんでした。
確かにキャルと父親は許し合えたけど、自暴自棄になって戦場を選んだ兄はほぼ確実に戦死しますよね?
あの父親に歪められてしまったのは何もキャルだけではなく、アロンも同じだったはずです。キャルや妻であるケートに愛を与えられなかった人間が、アロンにだけまともな愛情を注げるわけがないですから。
アロンが良い子だったのは、そうでなければ父親のお気に入りでいられなかったから。そんな条件付きの好意は愛情ではなく、アロンも内心では”親に愛されていないかもしれない”という不安を抱いていたでしょう。
せめて亡き母には愛されていたと信じたかったのに、父親とキャルによってその幻想まで打ち砕かれてしまった。本当は母親に棄てられたんだと知った彼に残されたのは、戦場での”死”という救いだけ…。
そんな状態で生き延びるなんて、それこそ映画が一本撮れるような運命的な出会いや奇跡でも起きなきゃ無理だと思ってしまいました。

そして、アロンの戦死を知ればキャルも母親も(生きてたら)父親も、そしてアブラも自分を責めることになります。とくに母親の気持ちを考えると辛くなりました。キャルと話していた彼女は思っていた以上に母親らしくて、別に子供が嫌いで棄てたわけじゃないとわかります。あの夫と一緒にいたらおかしくなってしまうと思ったから逃げたわけで、連れていけるものなら子供たちも連れて行ったでしょう。けれど、世間的には”どこから見ても清く正しい善人”である父親から子供を奪うなんてそう簡単にはいきません。無理やり連れて行こうものなら誘拐犯として捕まっていたと思います。
それが、自分に会ったせいで出兵し戦死したとなれば、母親としてどんなに苦しむか…。
彼女に会わせたキャルも、キャルを選んだアブラもそれぞれ罪悪感を抱き続けることになると想像したら、とてもじゃないけど初見時のように「救いがあった」とは思えませんでした。…むしろ”破滅への序章”って印象です。

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■ Comment

おはようございます☆

イイですね~! このジミーの「目」!

何十年ぶりかに再見しました。高3の夏休みの最後の日に(8月31日)「理由なき抵抗」と2本立て、見に行ったんですよ~!

そして感想文を書いて、昔の感想文を読んだら、もう「真逆」で、ひっくり返りそうになりました~!!!

>わたし的にはヒロインのエイブラが輝いて見えました。
>彼女がいなかったらラストに救いは存在しなかった!
>父親とキャルには救いがあったけれど、アロンには何もないというのも哀しいです

その点、宵乃さんは両方ちゃんとカバーしていて、さすがと思いました。
昔の感想は上の文章などが多く、今回の感想は下の文章などが多かったです。

では、良い日曜日を~♪
2010/02/14 09:04  miri〔編集

>miriさん

おはようございます♪

> 何十年ぶりかに再見しました。高3の夏休みの最後の日に(8月31日)「理由なき抵抗」と2本立て、見に行ったんですよ~!

おぉ、高3でその二本立てとは、主人公と近い感覚で観れたでしょうね~。わたしは20代後半だったので、「若いなぁ・・・」とちょっと気恥ずかしくなるような感じでした。

> そして感想文を書いて、昔の感想文を読んだら、もう「真逆」で、ひっくり返りそうになりました~!!!

自分の変化を実感する瞬間ですね!
共感しすぎて全体がみえなくなることって時々あるので(わたしは時々じゃないかも)、やっぱり時間を置いてから再見することは大切だなぁと最近しみじみ思います。
では、miriさんも素敵な日曜を~♪
2010/02/14 10:15  宵乃

中1の冬

「シェーン」のシングル盤レコード(今や死語?)を買いました。
B面がこの「エデンの東」です。きれいな曲だと思いました。
それから数年後、映画をテレビで見ました。日本語版です。
父親から愛されない事で悩む次男。切実でした。

>この親子はみんな問題ありだったみたい。

家庭環境が悪い子は可哀相です。

>キャルがかつての自分と同じ悩みを抱えていると知ってからは優しく彼を導く存在
>彼女がいなかったらラストに救いは存在しなかった!

その通りです。
しかし、撮影中のエピソードは色々あったようです・・・。
2015/12/05 09:38  間諜X72〔編集

>間諜X72さん

いらっしゃいませ!
「シェーン」と「エデンの東」の曲が入ったレコードですか。趣味がいいですね!
今聴きなおしてみたけど、本当に美しいメロディです。映画って、印象的なテーマ曲があるかどうかも重要ですよね。

> 家庭環境が悪い子は可哀相です。

ですね~。育った環境だけで人生が決まるわけじゃないけど、遺伝、環境、出会いの三要素はかなり影響が大きいです。その点、キャルは”出会い”に恵まれていてよかった!
お兄さんにも救いがあればなぁ。

> しかし、撮影中のエピソードは色々あったようです・・・。

まあ、個性の強い人間が集まれば色々あるでしょうね~(汗)
いつもコメントありがとうございます!
2015/12/05 13:58  宵乃〔編集

コメントを有難うございました☆

<2018/3/19 再見>

同じオンエアを同じ頃に見られて嬉しいです!

>…むしろ”破滅への序章”って印象です。

ひと言でいうと、こういう作品だったと思います☆
美しいテーマソングに騙されてはなりませぬ(笑)。

>キャルや妻であるケートに愛を与えられなかった人間が、アロンにだけまともな愛情を注げるわけがないですから。

子供二人に対してはそうなんですが、夫婦の事は、組み合わせが悪かったと思うんです(笑)。 違う相手なら、もしかしたらそれぞれに一生涯連れ添えた人たちだったようにも思います。 まぁ、それでは映画になりませんが(笑)。

>本当は母親に棄てられたんだと知った彼に残されたのは、戦場での”死”という救いだけ…。

再見時に兄の事を誰も心配していないことにビックリ仰天したんですが、彼は宵乃さんのおっしゃる事しか望んでいなかったんでしょうね・・・。

>そして、アロンの戦死を知ればキャルも母親も(生きてたら)父親も、そしてアブラも自分を責めることになります。

アブラさんはどうでしょうね~?
その頃にはキャルも捨てて別の男といたりして(笑)。

>キャルと話していた彼女は思っていた以上に母親らしくて、別に子供が嫌いで棄てたわけじゃないとわかります。

そうなんですが、キャルとは合ったけど、兄とはあんまり合わないような気もしますね~? もちろん嫌いで棄てたのではないのですが、母親とキャルとは似ているんですが・・・。

>自分に会ったせいで出兵し戦死したとなれば、母親としてどんなに苦しむか…。

戦死したら、すごい気持ちになるとは思いますが、かえってその方が兄を思いやれるような気もします。 (変な事書いてる?)

>彼女に会わせたキャルも、キャルを選んだアブラもそれぞれ罪悪感を抱き続けることになると想像したら、

最終的には、変な作品でしたね~という感じですが、公開当時とか、どうだったんでしょうね~? 私たちには理解できない何かが、当時のアメリカ人の中にあったのでしょうか???


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2018/03/27 18:38  miri〔編集

>miriさん

いらっしゃいませ、私も同じタイミングで見られてお話できて嬉しいです。
この作品って、青春ドラマとか父子の確執を乗り越える感動のドラマみたいなイメージが強いですけど、実際はなんか色々澱んだものを感じますよね。
ホント、 テーマソングに騙されてました(笑)

> 違う相手なら、もしかしたらそれぞれに一生涯連れ添えた人たちだったようにも思います。 

そうですね~、住む世界が違う二人でしたもんね…。

> 再見時に兄の事を誰も心配していないことにビックリ仰天したんですが、彼は宵乃さんのおっしゃる事しか望んでいなかったんでしょうね・・・。

私もびっくりしました。邪魔者がいなくなったとばかりに、父子の和解を手引きするアブラさんが…(汗)
しかし、あんな窓ガラスに頭を打ち付けて血まみれになってしまう精神状態の人を兵士として採用するんですかね?戦場で足を引っ張るだけだと思うんですが。

> キャルとは合ったけど、兄とはあんまり合わないような気もしますね~?
> 戦死したら、かえってその方が兄を思いやれるような気もします。

確かにアロンとはそりが合わないでしょうね。でも、さすがに自分と会ったのがきっかけで死なれると、アロンを想うよりも自己嫌悪が先に来そうな…。
ちょっと気になって今原作の母親ことを調べてみたんですが、映画とはまったく違う人物でビックリしました。というか作品自体がまるで違う。原作だとアダムと腹違いの弟の話がメインなのかな。ケイトは娼婦どころか目的のためなら殺人をいとわないひとで、最終的にはアダムの寛容さによって罪の意識が芽生え自殺したようです。家を出た理由も生まれてきた双子を嫌悪したからだとか…。
ここまで違うと、中途半端にキャラクターだけ借りて作った映画に整合性を求めても仕方ないかという気になります。

> 私たちには理解できない何かが、当時のアメリカ人の中にあったのでしょうか???

思春期の悩みとか親に愛されない寂しさに共感した人が多いんだと思います。ジェームズ・ディーンがはまり役で、別に好きではないけど彼のちょっと芝居がかった演技は印象に残りました。
2018/03/28 10:13  宵乃〔編集
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