映画「逢びき(あいびき)」観た
窓に浮かび上がるローラのニヤケ顔。
原題:BRIEF ENCOUNTER
製作:イギリス’45
監督:デヴィッド・リーン
原作:ノエル・カワード
ジャンル:ロマンス/ドラマ
【あらすじ】毎週木曜には、買い物ついでに映画を観たりして楽しむ平凡な主婦ローラ。ある日、帰りの駅で汽車のススが目に入り、それを医師アレックスが取り除いてくれる。それから何度か顔を合わすうち、ふたりは強く惹かれ合うようになるが…。
ローラと男がいるテーブルにお喋りな友人が割り込み、友人が話しているうちに男は去ってしまう。そして、悲嘆に暮れるローラが回想にふけるところから物語は始まります。
淡い恋心がいつしか深い愛情に変わり、強く惹かれながらも罪悪感にさいなまれる様子がじっくりと描かれ、不倫ものにしては入り込めたと思います。
ただ、病弱な奥さんや息子の事故(脳震盪だけ)の事を忘れてデートを楽しむ彼らの気持ちは分からないし、そうなると最初は良いと思っていた彼女のモノローグもだんだん鬱陶しいものに感じてしまいました。
この作品をいいと思うかどうかは、結局のところ彼女たちに共感できるかどうかで決まりそうです。
「君は遠いところへいっていたね。でも良く戻ってきてくれた」
ラストの旦那さんの優しさには脱帽しました。
2018/3/14:再見追記感想(ネタバレあり)
久しぶりに再見。きっと楽しめないだろうなぁと思ってたんですが、回想に入るまでの流れや、いかに彼女が彼と出会い恋に落ちていくかまでは意外と楽しめました。ただの顔見知りだった中年の医師アレックスが、自分の専門である医学について語りだしたとたんに目をキラキラさせて、そこから恋が芽生えてしまうんですよね~。
それでも最初は「また会いたい」という彼に「そんなことはいけない」と拒絶し、さっきまで映画を一緒に見たりしたことが後ろめたく感じてしまいます。それはつまり「彼と一緒にいたい」という気持ちの裏返し。
それを断ち切りたくて旦那に打ち明けるのに、肝心な時に聞き流してしまった旦那の間抜けさといったら!
故意にやっていたとしたら本当に性質が悪いです。”旦那に愛人がいる説”もあり得ないことじゃないですね。
そして、この旦那のせいもあり「アレックスはただの友達で、外で会って遊ぶくらいどうってことない」と会う口実を手に入れてしまいます。駅でお茶をしていたのが高級レストランで食事をするようになり、映画を見ていたのが公園のボートでのデートになり、瞬く間に誰が見てもデートを楽しむ男女に…。
噂好きの知人に目撃されて初めて他人の目から見た自分たちの関係に気付き、みじめな気分になったと嘆くローラ。そんなにみじめな思いをしたのに、何故また会いに行くのか私には理解できませんが、きっとアレックスという共犯者と一緒にいる方が夫の前で罪悪感に苛まれるよりマシだったからでしょう。
線路に身を投げようとした時に「ただ楽になりたい一心だった」、やめたのは「家族を思い出したからではなく怖くなったから(うろ覚え)」だと言っているように、後半の彼女の行動は恋愛感情というより苦しみから逃れるためだったと思います。
そんな不幸まっしぐらな彼女の横で、カフェの女主人と駅員のオープンで明るい恋愛模様が繰り広げられているところが、この作品の上手いところでしょう。
あと、初見時に印象に残っていた旦那のセリフについては「今更かよ」と思ってしまいました(汗)
ただ、あのセリフがないとローラの心は完全には戻ってこれなかった気がします。
決して好きな作品というわけじゃないですが、構成とか演出、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の使い方とか映画好きなら一見の価値ありだと再確認できました。