映画「バファロー大隊」観ました

読み:ばふぁろーだいたい
原題:SERGEANT RUTLEDGE
製作:アメリカ’60
監督:ジョン・フォード
ジャンル:★西部劇/ミステリー/ドラマ
【あらすじ】1881年アリゾナ。アメリカ陸軍第9連隊の砦で将校が殺害され、その娘も強姦のうえ殺される。容疑者として現場から逃走した黒人兵ラトレッジ軍曹が軍法会議にかけられるが、その弁護についたのは彼を逮捕した張本人カントレルだった。
西部劇で法廷ものという珍しい作品。
軍法会議をメインに、事件のあらましを回想シーンで追っていくというもの。殺人事件とアパッチによる襲撃、黒人兵の逃亡が絡んで、ミステリーとしてはやや弱いもののアクション・ドラマは充分に楽しめます。
とくに人種差別についての描写は興味深く、ラトレッジの逃亡も「どうせ信じてもらえない」という白人への不信感からきています。しかし、黒人差別に対する反撥は描かれていても、原住民の描き方は従来の西部劇通りなんですよね。この辺の違いが時代を感じさせます。
また、重い空気を変えるように、法廷ではユニークな人物も登場します。
野次馬根性丸出しの判事の奥方は、始まった途端に追い出されて「後でみてらっしゃい」と判事に冷や汗をかかせたり、我がもの顔で証言台に立って判事を驚かせたりします。
判事の方も、この奥方にしてこの旦那ありといった感じで、会議中も自分専用の水(おそらく酒)をがぶ飲みし、休廷中は控え室でカードを始める始末。
その割りに判断は公平で、信頼できるんですけどね。
犯人探しについては途中までは良かったんですが、検察側に追い込まれたあたりで唐突に真犯人に気付くっていうのが…。
ちょっと強引な事件解決だったのが残念です。
<2020/04/02再見>
すっかり内容を忘れてしまったので久しぶりに再見。弁護人のカントレルと容疑者ラトレッジ軍曹の友情がぐっときました。黒人部隊をまとめ上げる勇敢なるラトレッジがカッコいい。バファローの毛皮を纏って戦う姿がバファローそのもので、その名の通り力強く勇敢で優しいというようなことを主人公が言っていたけど、本当にその通りでした。
あと、印象が変わったのが判事さんです。お酒を飲んだりポーカーをしたりとやる気がないように見えますが、最初から人種差別的発言は控えろと釘を刺しているし、両者の話を真剣に聞いて中立的な立場から冷静に判断しているんですよね。そんな姿に、根が真面目だからこそ人の命がかかった裁判に重い責任を感じているのだと思えました。お酒やポーカーも、そんなプレッシャーに押しつぶされないように気を紛らわせていたのかも。
そして、やはり引っかかってしまった裁判の行方。良き仲間であるラトレッジを救うため、カントレルは最初から真犯人を挙げる気でいました。確かに、この時代で黒人の疑惑を晴らすには真犯人を見つけ出すのが一番だったかもしれません。でも、あの判事さんなら十字架を持っていたのがラトレッジじゃなかったことを重要視してくれたのでは?
それで無罪放免になっても住民のリンチに遭うのがオチということだとしても、もう少し証拠を固めてから発言してほしかったです。あの胸糞悪い変態さんが自白しなかったらどうなっていたことか…。
見応えある作品だとは思いますが、事件自体は悲しく悲惨なもので解決してスッキリとはいかず、後味はあまりよくありませんでした。

(過去イラスト)
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■ Comment
つい先ほど、録画しておいたのを観ました。イラストは、あのかしましい判事の奥方ですね(笑)。ジョン・フォードなので正統の西部劇かと思いきや、、、観終わってミステリーだったことに気がつき、そのこと自体にびっくりしました(笑)。確かに黒人差別批判をしながら、一方で先住民に対しての気遣いはゼロでしたね。今観るとやっぱりそのあたりのバランスの悪さが気になってしまいました。。。
こんにちは。
”かしましい”って言葉、あの奥方にぴったりですね。連れを入れたらちょうど三人だったような気がしますし、まさしく姦しい!こういう感覚は世界共通なんでしょうか?
>ジョン・フォードなので正統の西部劇かと思いきや、、、観終わってミステリーだったことに気がつき、そのこと自体にびっくりしました(笑)。
実は、正統派西部劇を明確にイメージできないんですが、ミステリーとの融合は珍しいですよね。
以前観た「テキサスの五人の仲間」も西部劇に分類していいのか迷ったくらいなんですが、お気に入りの作品です。
どちらかと言うとコメディ寄りの西部劇が好きみたいです。
2009/06/16 11:49 宵乃
この作品を見ました☆
ジョン・フォードなので、今回も含めて数回スルーしたけど
何となく見ようかな?と思って見始めたら早かったです(笑)。
>しかし、黒人差別に対する反撥は描かれていても、原住民の描き方は従来の西部劇通りなんですよね。この辺の違いが時代を感じさせます。
今現在のアメリカで起きている事を思うと
(原住民はもういないのでね)
何も変わっていない1860年代と同じ21世紀ですね。。。
>また、重い空気を変えるように、法廷ではユニークな人物も登場します。
これこれ、この作品はここを見なくては(笑)。
前々からこちらのイラストが気になっていたんですが
(ジョン・フォードなのに、老婦人?と)
今回はまた凛々しい彼を描かれて、本当に素敵です☆
どちらのイラストも意味深く、宵乃さんの10年を感じます!
私のお気に入りは、判事とその隣とその隣の3名です(笑)。
端っこの人はお酒ついだり軍紀を言ったり
それを真ん中の人がいちいちシラ~ッと見ている姿!
ああ、面白かった!
>弁護人のカントレルと容疑者ラトレッジ軍曹の友情がぐっときました。~本当にその通りでした。
ここはまさに真ん中のお話でその通りでした!
>両者の話を真剣に聞いて中立的な立場から冷静に判断しているんですよね。~そんなプレッシャーに押しつぶされないように気を紛らわせていたのかも。
ほほほ・・・もう一つ(一人)のプレッシャー
奥様にやられないようにもしなくてはね(笑)。
>そして、やはり引っかかってしまった裁判の行方。
>でも、あの判事さんなら十字架を持っていたのがラトレッジじゃなかったことを重要視してくれたのでは?
そうかもしれませんね・・・途中まで良かっただけに
最終盤は残念でした・・・。
>それで無罪放免になっても住民のリンチに遭うのがオチということだとしても、もう少し証拠を固めてから発言してほしかったです。
映画の時間的にさっとまとめた感じでしたが
真犯人の裁判時に否定したらどうするのか?
・・・実は最近「アラバマ物語」を見ようかな見たいなと思いつつ
怖くてなかなかできない感じにもなって
この映画は何となく似ている部分もあって・・・
最近でも(黒人を絡めた裁判の映画)ありますしね・・・
>あの胸糞悪い変態さんが自白しなかったらどうなっていたことか…。
>見応えある作品だとは思いますが、事件自体は悲しく悲惨なもので解決してスッキリとはいかず、後味はあまりよくありませんでした。
仰る通りでした・・・。
でもまあ、多分、公開直後の感触としては
正義は貫かれて、主人公とヒロインが良い感じになって
凛とした彼が指揮に戻って「ああ良かった良かった」で
終わったような気がします。
21世紀向きではありませんが
「太陽は光り輝く」ほどではないけど
ジョン・フォードにしては、まあマシな作品だったと思います☆
.
2020/06/05 17:49 miri〔
編集〕
お、こちらを再見されましたか。重い腰を上げて見始めてみたらあっという間に引き込まれ…というパターン、よくありますよね~。
> 今現在のアメリカで起きている事を思うと~何も変わっていない
ですね…。やはりこういうものは土台で決まってしまう部分もあるから、途中から変えるのは難しいのかも。差別を続ければ、いずれパワーバランスが変わった時に自分たちが差別される側になってしまうのに。
> 前々からこちらのイラストが気になっていたんですが~今回はまた凛々しい彼を描かれて、本当に素敵です☆
ありがとうございます!
判事と悩んだんですが、わかりやすい良いシーンが軍曹のシーンだったので。判事にしていたら夫婦で記事に載せられたんですけど(笑)
> 私のお気に入りは、判事とその隣とその隣の3名です(笑)。
> 端っこの人はお酒ついだり軍紀を言ったりそれを真ん中の人がいちいちシラ~ッと見ている姿!
彼らがいてこその作品でしたよね。こんな楽しいのに判決は信頼できるんだからすごいです。
> 奥様にやられないようにもしなくてはね(笑)
一番の強敵です(笑)ブローチか何かを買って帰らないと…。
> 最終盤は残念でした・・・。
> 映画の時間的にさっとまとめた感じでしたが真犯人の裁判時に否定したらどうするのか?
せっかく積み重ねてきたものが最後で崩壊してしまうようでした。せめてソフト化の時に再編集とかできればよかったんですけど、余計なシーンは一切撮れなかったんですかね~。
> ・・・実は最近「アラバマ物語」を見ようかな見たいなと思いつつ怖くてなかなかできない
きっと見れるタイミングが来たらスルーっと見られると思います。その時にまたお話ししましょう♪
> 正義は貫かれて、主人公とヒロインが良い感じになって凛とした彼が指揮に戻って「ああ良かった良かった」で終わったような気がします。
映画との付き合い方が変わったんだなと実感できます。細かいところを気にせず楽しめる作品が多くなるのは羨ましいかも(笑)