映画「ゴールデンボーイ(ごーるでんぼーい)」観た
原題:APT PUPIL
製作:アメリカ’98 112分
監督:ブライアン・シンガー
原作:スティーヴン・キング
ジャンル:★サスペンス
【あらすじ】ロサンゼルス郊外。スポーツ万能で成績優秀な高校生トッドは、授業でホロコーストに興味を抱き自主的に関連書物を読んでいた。そんなある日、たまたまバスで乗り合わせた老人の顔に見覚えがあり…。
おぉ、これは怖い…。序盤から不穏な空気が流れてたので青春ものとは違うだろうなとは思っていたけど、まさかこんな怖い作品だったとは。後でスティーヴン・キング原作と知って納得です。
以下、ネタバレありの感想になるので未見の方はご注意ください。
暗い好奇心から始まった、16歳の少年トッドと元ナチス将校ドゥサンダーの関係。ファーストコンタクトのシーンはまだ楽しかったんですよ。不穏な雰囲気はブラフだったのかな?と思ってしまいそうなやり取りで。ただ話が聞きたいがために、郵便受けに何度も指紋採取の粉を振ったんだと話す様子は、さすが成績優秀な生徒という感じはあってもまだ子供だなと思えました。
でも、証明するには8つも指紋が必要なんだ~と話していた彼が、実はすでに10以上の指紋を採取していて、自分に何かあればあんたの秘密は公になるんだと不敵に笑うあたりからもう…。この子、すでに素質があるよ…!と怖くなりました。
その後も彼の行動はエスカレートしていって、ホロコーストの悪夢に取り憑かれながらも、他人を支配する喜びを知っていきます。ドゥサンダーにナチス将校のコスプレをさせて、行進の訓練のように命令する様子は完全に陶酔してました。当時、ドイツ人としてあの時代、あの国にいたら、嬉々として親衛隊に入ってたと思う…。
ドゥサンダー自身も彼と時間を過ごすことで過去が蘇ってきて、目つきが変わってくるんですよね。トッドの目つきも怖かったけど、さすが熟練の俳優さん(マグニートーやガンダルフの人)だけあって凄みが違いました。
おそらくこの二人は根底から似ていて、同族嫌悪しつつもどこか共鳴していたんだと思います。ドゥサンダーは過去を忘れたがっていたし「どうしようもなかった」と従うしかなかったことを強調していたし、トッドは悪夢に苦しんでいました。でも、苦しむと同時に陶酔や高揚感は間違いなくあって、それが麻薬のように彼らの心を捉えて離さないように見えるんですよね。
それがあの殺人によって一気に侵食してしまった…。ドゥサンダーは運命によって助かった命を捨てることになったけど、それができたのはトッドがいたからじゃないかと思ってしまいました。自分の分身となったトッドがいたから、秘密を抱えたまま死んだのだと。
ラスト、自分の秘密を暴きそうな人間をいともたやすく支配し、なんでもできると断言するトッドは、恐怖の存在であるとともに破滅の予感をはらんでいました。きっとたくさんの人を不幸にして、自分自身もどうにもならない状況に陥って絶望しながら死ぬんだろうな…。せめて第二のトッドが現れないように、と願わずにはいられませんでした。