原題:HACKSAW RIDGE
製作:オーストラリア・アメリカ’2016 139分
監督:メル・ギブソン
ジャンル:★戦争/アクション/ドラマ
【あらすじ】アメリカの田舎町で育ったデズモンド・ドスはある日、事故に遭った人を助け、看護師のドロシーと出会う。第二次世界大戦が激化する中、彼は衛生兵として国のために戦いたいと思い立つ。だが「汝殺すなかれ」を信条とする彼は銃の訓練を拒絶し、上官や他の兵士たちはそんな彼を追い出そうとし…。
この作品のことは公開当時に何となく聞いていて「自分の手で殺さなくても、彼が助けた人たちが人を殺す」という矛盾を私がどう受け止めるのかなぁと思いながら鑑賞。うん、そもそも戦争で戦う人はほとんどが矛盾を抱えてるんだから、彼と変わらないよね。ほとんどの人は「殺したくないけど、生きるため、大切な人を守るために敵を殺す」という矛盾を抱えているはず。
彼は「戦争が人を殺すものだ」という事実を受け止めた上で、自分ができることをするため自ら戦場に向かいました。信念を曲げて他の人たちと同じように戦ったとしても、きっとすぐに死んでいたと思います。
生き残っても魂が病んでしまったら意味がない(守りたかった家族を傷つけてしまうから)と父親を見て痛感していたからこそ、周りの顰蹙を買っても信念を貫いたし、結果、それが隊の結束を強めた……。
何だかんだで理にかなった判断だったと思います。
勉強でも仕事でも、納得できない方法を押し付けられてやっても効率悪いですよね。衛生兵は必要な存在だし、銃を持たないからって信頼できないとは限らない。むしろできることは徹底的にやった彼は、強靭な精神力と体力でもって仲間を支えていました。
ここまでくると狂気と紙一重なのかもしれませんが、子どもの頃からずっと自分の中にある怒りや憎しみと向き合ってきたことを思えば納得できます。
自分の心と向き合えず、酒に溺れて家族に暴力をふるっていた父親。それを簡単に許すことはできないでしょう。でも、父親が上手く伝えられなかったことを、彼は全部ちゃんと受け止めてるんですよね。
軍法会議に押しかけて息子の権利を訴えた時、父親も同時に(少し)救われたんだと思えました。あの後、多少は他の家族とも向き合えたかなぁ?
しかし、彼の信念を受け入れた「良心的兵役拒否」というものに驚きました。こういうのって日本にもあるんでしょうか?
適材適所より精神論ふりかざしてそうだから無い気がする…。あったからと言ってちゃんと機能してるかどうかは国によって違いそう。でも、なければドスはどうしようもなかったわけだから、あるのとないのでは大違いですよね。
いつか良心的兵役拒否者しかいなくなったら、戦争の形も変わるんだろうか…と考えさせられました。