忘却エンドロール

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映画「竜とそばかすの姫」感想

 | 映画  com(5) 
Tag:日本 

製作:日本’2021 121分
監督:細田守
ジャンル:アニメ/アドベンチャー/ファンタジー/SF

【あらすじ】田舎で父親と暮らす女子高生のすずは、幼い頃に事故で母親を亡くして以来、人前で歌えなくなっていた。だが、仮想世界Uに分身となるキャラクター”ベル”を登録したことをきっかけに、Uの世界でなら思う存分歌えることに気付く。瞬く間に歌姫として注目されるようになった彼女は、ある日Uで“竜”と呼ばれるユーザーと出会い…。

この監督の作品どちらかというと苦手なんですが、今回はまあ結構好きだしウルっとくるところもあっておおむね楽しめました。良かったところと悪かったところを箇条書きにしてみたところ、悪かった方が数が多いのに鑑賞後の印象は良かったというのが逆にすごい。

<良かったところ>
・歌が好き。CMでもやってた鯨に乗って歌うシーンなども美しくて良かったと思う。クライマックスも歌の効果でウルっときた。
・すずの声優がミュージシャンだということだけど声優としてもキャラに合ってたと思う(母親に否定された【と思っている】自分を表に出せない感じとか)
・竜とベルの関係を「美女と野獣」に当てはめたのはアニメ的でまあまあよかった。弟くんのAsが野獣の”魔法のバラ”ポジションなところとか。
・兄弟のその後を描いてないけど、ベルのフォロワーは数億人(おそらくアンチ含む)で”美談”はすぐ世界に広まったと思う。あのジャスティンにスポンサーが付いてたくらいだし、しばらくはUのユーザーたちの注目の的で酷いことにはならないだろうと思えました。あと女子高生に怪我させてるし、虐待の動画は演出上手な友人が確保してたし、ケイ君は外に助けを求めて立ち向かう決意をしていたし。

<悪かったところ>
・50億人のユーザーがいるUの世界の実態があまり伝わってこない。ベルみたいに大規模ライブを行えるのはフォロワー数で決まるのか、課金すればいいのか(竜を守る城やAIも金かかってそう)。そして他の人たちがこの世界で何をして楽しんでいるのかもほとんど描かれていない。youtuberみたいな目立つ人たちの周りでキャッキャしてるだけ?
・ベルが人気の的になるまでの経過を省略したせいで、すずの感情の機微がほとんど描かれてない。あの事故で自分は母に愛されてなかったと疑心暗鬼になり、母親との絆の象徴だった歌が歌えなくなってしまった彼女にとって、歌うことの楽しさ、解放感は彼女に様々な心境の変化を与えてもよかったのに。
・竜が狙われた原因が割と擁護できない。対戦相手の分身のデータが壊れるまでボコボコにするとか、人によってはトラウマレベルなので(現実のオンラインゲームでもトラウマになる人がいる)。すずにとってベルはかけがえのないもう一人の自分であるはずなのに、彼が嫌われる理由を知ってなお竜への警戒心より興味の方が強く出ていて違和感。
・とはいえ、竜を追う正義の味方ごっこ連中のやり方も当然擁護できない。運営ちゃんと仕事してる?スポンサーがついてるのも理解不能。
・子供たちが竜をヒーロー扱いしている理由が不明。対戦相手がろくでもないやつばかりだったとか、裏でいじめられる子供たちを助けてたとか何かないのか。
・「美女と野獣」をモチーフにしてるのはいいけど、原点の小説でも今や古典となった童話版「美女と野獣」でもなく、ディズニーアニメの方を意識してるのは二次創作の二次創作みたいで冷める人がいるのも仕方ないと思う。監督が好きなのはディズニー映画の方だから仕方ないけど、キャラデザをディズニーのアニメーターにしたり印象的なシーンを寄せすぎたり匙加減を間違えたのでは。
・子供の命を救うため我が子の制止を振り切って命がけで子供を救った母親と、子供を虐待から救うため日常の平穏を手放して仮面を脱いだすずの対比が、何も賭けずにすずの背中を押した謎の上から目線男のせいでしっくりこない。この監督の描くイケメンはいつも同じタイプ(無表情クールか影のあるひねくれ男)なんだよな。
・そもそもあの母子の共通点は母性とか博愛というより猪突猛進という感じがする。監督の手によってお膳立てされた道を脇目もふらずに突っ走ってたので。
・ネット上の悪意や虐待など嫌な気分になる描写が多いので、そういうのが苦手だと2度は見られない。歌が好みじゃなかった人はとくに。歌が好きなら歌だけ聴くという手もあるし。
・すずが父親を避け続けてきた理由をわかりやすく提示していないので、すずという人間が伝わりづらい。母親を引き留められなかったことで父親に憎まれているんじゃないかとか、母親に愛されていない【と思っている】自分が父親にも嫌われていたらどうしようと臆病になっているとか、もう少し内面を出して欲しい。父親も娘には時間が必要だと思ってるのか、距離を置き過ぎてる気がする。小さい頃に毎日抱きしめて「愛してる」って言ってれば違っただろうに。
・社会問題を扱うならテーマを絞って、しっかり取材してから取捨選択して描いた方がいいと思う。

■ Comment

おはようございます☆

地デジのオンエア、2ヶ月以上遅くなったけど楽しみにして待っていました。
宵乃さんも同じオンエアを鑑賞されたんですね!

>今回はまあ結構好きだしウルっとくるところもあっておおむね楽しめました。良かったところと悪かったところを箇条書きにしてみたところ、悪かった方が数が多いのに鑑賞後の印象は良かったというのが逆にすごい。

この後の箇条書きがすごく詳しくて混乱していた自分の感想が整理されたようです、有難う!

宵乃さんは最終的に良い印象だったようですが、私は、この箇条書きの中の良い点がおおむね一つもリンクしないなあって感じで(笑)

でも、悪い点が全部というわけではなく、親友の子なんか最高だと思っています♪

なんだかこの人の作品は、いびつな印象が残ります。。。

中村佳穂さんの歌を、ものすごくほめる人が身近にいたので紅白も楽しみに見て迫力は凄かったけど、あんまり胸を打たなかったんですよね。。。

結局、この映画はあの歌の受け止め方次第って感じがしました。
分かりやすいわ、まじ、サンクス。


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2022/10/04 08:31  miri〔編集

こちらにもコメントありがとうございます

私も丁度miriさんのブログにコメントしてきたところです。入れ違いになってしまいましたね。
一緒のオンエアを見られて嬉しいです。

> この後の箇条書きがすごく詳しくて混乱していた自分の感想が整理されたようです、有難う!

私も情報が混乱して上手く感想が書けなかったので、半日唸りながら整理してみました。お役に立てたようで良かった。どこが自分に響いたのか分析すると、なんだかスッキリして今後の映画鑑賞にも役立ちそうです。

> でも、悪い点が全部というわけではなく、親友の子なんか最高だと思っています♪

かなり毒舌でしたよね~(笑)
引っ込み思案なすずを引っ張り出して、みんなに彼女を自慢したかったのかな。すずと姉妹みたいな関係でした。

> なんだかこの人の作品は、いびつな印象が残ります。。。

それはすごくわかります。彼の監督デビュー作は少年向け玩具販促アニメの劇場版(完成度の高い世界観がすでにできている)だったし、「時をかける少女」や「サマーウォーズ」は脚本家がついてたのに、その後は脚本も自分でやるようになってしまったんですよね…。元々演出家志望だったみたいだし、演出面は文句ないんだから脚本まで自分でやる必要はないのにと思います。自分が指図する側じゃないと嫌なのかなぁ…。

> 中村佳穂さんの歌を、ものすごくほめる人が身近にいたので紅白も楽しみに見て迫力は凄かったけど、あんまり胸を打たなかったんですよね。。。

独特な雰囲気の歌だから好みは分かれるのは仕方ないと思います。
映画の動員数は相当なものだったから、歌や映像に惹かれて観た人たちの高評価が多めで、それを聞いて見に行った人の評価は歌の好みも分かれて作品の評価が二分していったのかも…。
2022/10/04 09:54  宵乃

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2022/10/09 17:13  

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2022/10/17 19:45  

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2022/10/19 18:08  
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