忘却エンドロール

素敵映画に出会えた時の感動をそのまま書き綴る、映画感想ブログ.

映画「みかんの丘(みかんのおか)」

原題:MANDARIINID、TANGERINES
製作:エストニア/ジョージア’2013 87分
監督:ザザ・ウルシャゼ
ジャンル:★戦争ドラマ

【あらすじ】旧ソ連のジョージア・アブハジア自治共和国。ジョージアとアブハジアの紛争で多くのエストニア人が帰国する中、残ったイヴォとマルゴスはみかんの収穫を急いでいた。だが、家の前で負傷した両軍の兵士2人を見つけ、彼らを自宅で看護することに。やがて2人は意識を取り戻し敵の存在にも気付くが、イヴォが「私の家で殺し合いは認めない」と宣言し…。

オススメされたこの作品がちょうどGYAOで無料配信してたので見てみました。静かに染み入る作品でしたね…。
さっきまで殺し合っていた敵同士の二人、そして彼らを助け同じ家で介抱するエストニア人の老人イヴォ。イヴォにとって目の前にいるのは怪我人で、国や宗教なんてものは関係ありません。二人を家に置くことで自分の身が危険にさらされるかもしれなくても、近々ここも戦場になると分かっていても、怪我人を見なかったことにはしないんですよね。

そんなイヴォという人間に触れ、敵同士でギスギスしていた二人も次第に相手を敵ではなく人間として見るようになっていきます。この描写が丁寧でとても良かったです。よく知らない国のことで分かりにくい部分もあったけど(たぶん完全には理解できないだろうし)、最終的には”同じ人間なんだ”と素直に納得できました。

タイトルにもなってる”みかんの丘”の所有者である友人マルゴスも、何気ない一言がじんわり響きました。こんな状況になってもみかんを収穫しようとしているのは、お金のためじゃなくて大事に育てたみかんを腐らせたくないという想いからなんですよね。エストニア人の彼がどういう理由でアブハジア自治共和国に来たのかは分かりませんでしたが、その土地を愛し、みかんを育てた日々を愛していたんだなぁというのが伝わってきました。

ラストではイヴォがここに残り続けていた理由もわかり、この作品が一番伝えたかっただろうことをアハメドと鑑賞者に問いかけます。アハメドの質問にイヴォが茶目っ気ある答えを返し、笑い合う二人の姿が印象に残りました。

■ Comment

感想、ありがとうございました

 宵乃さん、こんばんは

制服を脱いで一人の人間として向き合えば、お互い変わる所もないのが判るのに、それが集団となり集団が個性と欲望を共有すると妥協出来なくなる、何とも哀しい話ですが、人間の善性を少しでも信じようという前向きな所があり、そこが良かったです。

プーチンに見せてやりたいですが、見ても何も感じないでしょうね「この弱虫め!」がせいぜい、◯チガイの◯ソ野郎です。
2022/04/05 22:14  寂庭〔編集

>寂庭さん

> 制服を脱いで一人の人間として向き合えば、お互い変わる所もないのが判るのに、それが集団となり集団が個性と欲望を共有すると妥協出来なくなる

ホント、これなんですよね~。人類の歴史で何度繰り返されてきたのか…。
この作品のように前向きな気持ちを忘れず信じていきたいです。

> プーチンに見せてやりたいですが、見ても何も感じないでしょうね

頭が固くなってそうですし、自分の世界に篭ってますもんね…。自分の望み以外はすべて拒絶、が行き過ぎて核攻撃なんてことにならないよう毎日祈ってます。
2022/04/06 07:36  宵乃〔編集

こんにちは☆

私も見せていただきました。

>オススメされたこの作品がちょうどGYAOで無料配信してたので見てみました。静かに染み入る作品でしたね…。

素晴らしい作品で感謝ですが、GYAOが数年ぶりで、あのCMには仰天しました!

>怪我人を見なかったことにはしないんですよね。

ここが一番凄いんですよね、見て見ぬ振りしようと思えばできたし、そのままにしておけば二人とも死んだだろうし、助ける以上、世話も必要だと分かっての事ですからね・・・。

>相手を敵ではなく人間として見るようになっていきます。この描写が丁寧でとても良かったです。

同感です、良い監督さんだと思います☆

>お金のためじゃなくて大事に育てたみかんを腐らせたくないという想いからなんですよね。

私もここにひかれました。ただ買ってきて食べるだけでも腐らせるとものすごく落ち込みますものね・・・。

>この作品が一番伝えたかっただろうことをアハメドと鑑賞者に問いかけます。アハメドの質問にイヴォが茶目っ気ある答えを返し、笑い合う二人の姿が印象に残りました。

はい、最高でした!
私はあの答えはアハメドの体型問題かと思いました(笑)。

明日の朝に記事をアップしますので、お時間頂けたらお願いします。


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2022/04/15 17:07  miri〔編集

>miriさん

いらっしゃいませ、miriさんもご覧になったんですね♪
GYAOのCM…そういえばありましたね。私はブラウザに広告ブロックの拡張機能を入れてるので、CMも勝手に弾いてくれてたみたいです。動画にcmなんて悪印象しか与えないのに意味あるのかなぁ…?

> ここが一番凄いんですよね~助ける以上、世話も必要だと分かっての事ですからね・・・。

そうなんですよ、覚悟がないとできないことを自然にやってのけてしまう彼に痺れました。その後の描写も丁寧だし、この監督さんの他の作品も見てみたかったけど、2019年に亡くなっていて今日本で見られるのは本作のみなのが残念です…。

> 私もここにひかれました。ただ買ってきて食べるだけでも腐らせるとものすごく落ち込みますものね・・・。

そうそう、自分で作ってなくても農家さんに申し訳なくて落ち込むのに、自分が丹精込めて育てたならなおさらです。こういう機微が伝わるところも”同じ人間”ということですよね。

> 私はあの答えはアハメドの体型問題かと思いました(笑)

あ~、そういうことか!(笑)
確かに太めでしたもんね。胸にストンと落ちて、あのラストがより一層好きになりました。ありがとうございます!!
2022/04/16 09:15  宵乃〔編集

こんにちは

実は本作はDVDじゃなくGYA0から直接レンタルした記念すべき作品となりました。すでに無料配信期間が終わっていて、レンタルだったら観れるとあったのですが、支払方法が分からずに迷いました。でも観たい一心で何とかできました。最近最寄りのレンタルショップが立て続けに閉まり残り1件のみになっていたから良かったです。(サブスクは嫌いなの)

「死に乾杯!」のセリフは、それまでのイヴォの抑えた雰囲気や演技とちょっと異なる感じで、あれ?と感じたのでした。まさに、そんなに殺し合いたいなら好きにしろ!という怒りからの言動でした。お酒も入っていてやりきれなくなり、本音が思わず出てしまった。彼が感情を露わにしたのは、アハメドが食料をせがんで家に入った時、孫娘のことを訊ねた時の2回だけでしたもの。

敵味方を区別せず感情抑制のあるイヴォは偉大で寛容な男でした!


>アハメドの質問にイヴォが茶目っ気ある答えを返し、笑い合う二人の姿が印象に残りました。


miriさんがおっしゃるような体系もあるけれど、粗野な物言いの彼には距離を保っておきたい心情が少し働いたのかなとも。勿論、アハメド自身も「わかっているんだけど、なおせないんだよ。性分なんだ」と、表情で返していたみたいな。
ニカの好きだった曲を聴きながら帰っていくシーンも良かったですね。
でも、彼にはチェチェン紛争が待っていると思うとやるせない。

今回のような形で「ブログdeロードショー」をやるのも”手”ですよね!
2022/04/26 11:46  しずく

>しずくさん

> 最近最寄りのレンタルショップが立て続けに閉まり残り1件のみになっていたから良かったです。(サブスクは嫌いなの)

最近はネットの便利サービスに押されて色々閉店していってますよね。寂しいけど実際のところネットの方が便利なのでありがたいです。サブスクは私も苦手で、たぶん契約したら元を取ろうと頑張って見てしまいそう(貧乏性)

> 彼が感情を露わにしたのは、アハメドが食料をせがんで家に入った時、孫娘のことを訊ねた時の2回だけでしたもの。

そうそう。普段抑えている彼だからこそ、思わず露わになった感情が印象に残ります。俳優さんと監督さんの手腕が光ってました。

> 敵味方を区別せず感情抑制のあるイヴォは偉大で寛容な男でした!

戦争に限らず、一時の感情に流されず本質を忘れない彼のようにありたいものですね~。

> アハメド自身も「わかっているんだけど、なおせないんだよ。性分なんだ」と、表情で返していたみたいな。

あ~、確かに彼の表情を思い返すとそういう部分もあった気がします。ホント、見る人によってさまざまな機微が感じられる深いシーンでした。

> ニカの好きだった曲を聴きながら帰っていくシーンも良かったですね。
> でも、彼にはチェチェン紛争が待っていると思うとやるせない。

音楽の好みでも揉めてたのにラストでは…(涙)
チェチェン紛争のことも詳しくないんですが、きっと今度は憎しみに囚われずにいられたんじゃないかなと思います。家族と生き延びていてほしいですね。
2022/04/27 09:19  宵乃〔編集
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