映画「パラサイト 半地下の家族(ぱらさいとはんちかのかぞく)」
原題:기생충
製作:2019’韓国 132分
監督:ポン・ジュノ
★ドラマ/コメディ
【あらすじ】半地下住宅で暮らす貧しい四人一家。大学受験に落ち続けていた長男ギウは、大学生の友人から家庭教師のバイトを紹介される。パク氏の豪邸で娘に英語を教えることになった彼は、なんとか失業中の家族をこの家で働けるように計画を立て…。
久しぶりに映画を見ようと思って、録画してあったこの作品を見てみました。
かなり面白かったですね。「この家族、どこのプロですか?」という感じで、見る間に裕福なパク家に寄生していきます。ギウなんて冴えない雰囲気だったのに、母親が見る前で家庭教師の授業をやって見せた時の大胆さ…全部狙ってやってるところがすごいです。
そんな感じでビンボー一家が大変身してエリート家庭教師&運転手&家政婦みたいになるところは面白いし、後半打って変わってスリリングな展開になってからも目が離せないものがありました。
ただ、パク家の子供があまりにも可哀そうなんですよね…。
この作品のテーマが格差なので、最後の事件が必要なのはわかるんですよ。好きで半地下なんかに暮らしてるわけじゃないのに、自分では気付かなかった”臭い”が決定的に住む世界の違いを見せつけてしまう。たとえ顔をしかめられたのが娘の仇である男でも、地下と半地下の共通点から自分を重ねて、わだかまりが一瞬で憎悪まで膨らんでしまったんでしょうね。殴るくらいでもよかった気はするけど、あの狂気に当てられた状況では仕方ないと思えました。
でも、それならあんな小さい子供のいる家庭にしなくてもよかったと思うんですよ。そもそも、ダソン周りの描写が中途半端で作品にとって都合よく使われてるんですよね。家庭教師に懐柔される肝心の描写はないし、奥様の信頼をガッツリ得たのはダソンのトラウマに起因してます。でも、臭いという共通点に気付いて親に取り合ってもらえなかった時や、モールス信号に気付いた時のダソンの心情は描かれないし何も行動しないという…。
トラウマを伏線にして後半のサスペンスに繋げるため、幼い子供でなければいけなかったというだけなんじゃないかと疑ってしまいます。
事件後、おそらく精神が不安定になるであろう母親(一家を引き入れた張本人)と、男性不信に陥りそうな姉(あの身長差を背負って助けようとしたのにね…)、さらにトラウマを深めた幼い子供が、あの後どうやって生きていくのか…(たぶん母の実家は裕福だろうからおじいちゃんおばあちゃんが見てくれるとは思うけど)。
前半はコメディだったから荒唐無稽な部分も許せたけど、こういう結末になるなら「せめて家族はパク家とは別の家にもぐりこませればよかったのに」と思ったし、「パク家が一家で出かけてるからって宴会するような詰めの甘い奴らだから貧乏から抜け出せなかったのでは…」という疑問も浮かんでしまいました。
面白かったし観られたのはよかったけど、再見はないかもなぁという感じです。
<おまけ>
・ミニョクが言ってた「奥様はシンプルで好き」って、単純で扱いやすいから好きってこと?
・臭いを指摘されてからクリーニングとか引っ越すとかできなかったのだろうか。収入がどれくらいで、這い上がるにはどれくらい必要なのかわからなかった。
・トラウマシーンの階段を上がってきた男の目が怖すぎてホラー(好き)。
・地下シェルターから階段の電気を操作できるのは、男が勝手に改造したの?修理業者を呼んでたらこんなことには…。
・貧民街?と高級住宅の対比が素晴らしい。洪水シーンもすごい。
・インディアンごっこをするくだりで「一線を越えるな、仕事の延長と思え」と上から目線のパク氏。そもそも断らない前提で話を進めたことに気付いてない=使用人に都合があるなんて考えも及ばない(ついでに貧民街の洪水なんて知らんor興味ない)。これがなければ憎悪爆発はなかったかも。
・(2021/10/01:追記)奥様が言ってた「子供が引き付け(痙攣)を起こしたら15分以内に処置しないとだめなのよ」は現実でも”15分以上続くようなら速やかな対処が必要”なので大袈裟ではなくて(長引くと発熱によって脳に影響が出る可能性がある)、事件時「キーを渡せ」と言われて娘の一大事であっても渡した(自分の車じゃないし)のは親として子供のことで必死になる姿に共感したからだと思う。その直後に”臭い”の件で憎悪爆発するから余計にインパクトがあったんだなぁと後から気付きました。
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