映画「家へ帰ろう(2017)」
原題:EL ULTIMO TRAJE(THE LAST SUIT)
製作:スペイン/アルゼンチン’2017 93分
監督:パブロ・ソラルス
ジャンル:★ドラマ/ロードムービー
【あらすじ】ホロコーストを生き延び、アルゼンチンで生きてきたユダヤ人の仕立屋アブラハム。娘たちと上手くいかず高齢者施設に入ることになった彼は、ふと母国ポーランドで別れた親友との約束を思い出す。その名を口にすることも憚っていた国へ帰ることを決意した彼だったが、そのためにはドイツを通らなければならず…。
洗濯ものをたたみながら見てたら朝から涙ボロボロ出てしまった。ホロコーストを生き延びた主人公が、約70年ぶりに親友に会うため故郷へ向かうロードムービーです。
この主人公の爺ちゃんがいい性格してるんですよね。孫に商売相手との駆け引きみたいのを伝授してたらしくて”家族写真を撮りたい爺 vs 新しいスマホを買いたい孫”の対決が面白かったです。自分より一枚上手な孫に「だからお前は好きなんだ」と喜んでるし(笑)
そんながめついユダヤ人の彼ですが、ホロコーストでの傷で切断の危機にある右脚を抱え、娘たちには高齢者施設に入れられそうになり人生の危機に。そこで思い出したかつての約束、そして懐かしの我が家…。家族に何も告げず母国ポーランドへ向かいます。
途中で出会う人々とのエピソードが劇的じゃないところが良かったです。
ただの優しい人達ではなくて、助けてもらった恩だったり、楽しい時間を過ごせたから友人としてだったり、ドイツ人も変わってきていることを知ってほしいからだったりと理由があります。看護婦さんは老い先短い老人への優しさと同情かな?(思ってたより面倒なことになりそうだと表情からうかがえました 笑)
それに手助けするのも自分が無理なくできる範囲で、爺ちゃん自身にできることがあるならまずそれをやるのを待って(娘と和解できなかったのも彼らしい。お金はたぶん貰えたんだろうけど)、それでもダメなら手助けするという感じ。
そんな一期一会の出会いを通し、主人公の中で止まっていた時間が動き出します。
夢で彼の過去が判明していき、初めて彼の口からホロコーストでの”直接その目で見た出来事”を赤の他人であるドイツ人女性に語られるくだりの重みが半端なかったです。
でもそれを話せた彼の表情は少し柔らかい印象で、この旅は彼にとって必要なステップだったのだとわかります。このエピソードとラストで泣いてしまったんだけど、伴う感情はまるで違って鑑賞後は温かく優しい余韻が残りました。