映画「殺人の追憶(さつじんのついおく)」
原題:MEMORIES OF MURDER
製作:韓国’03 130分
監督:ポン・ジュノ
ジャンル:★サスペンス/ドラマ
【あらすじ】1986年10月23日、ソウル南部の農村で手足を縛られた若い女性の無惨な変死体が発見される。同様の手口で次々と犠牲者が増えていき、地元刑事パクらは苛立ちを募らせていた。ソウル市警から派遣されたソ・テユン刑事に自分たちのやり方を否定され衝突する中、ついに一人の有力な容疑者が浮上し…。
ぐいぐい引き込まれたんだけど、この見終わった後のモヤモヤ感をどうすればいいの…!と思っていたら実際の事件をもとにした作品だったんですね。そりゃあ未解決事件を無理やり解決することはできないわ。
80年代の韓国の農村地帯を舞台にした作品で、警察の不正捜査が横行してるから結構腹の立つシーンも多かったです。でも、どこの国でも一昔前は(場所によっては今でも)こんなもんだっただろう。殴って何日も眠らせないで、追い込んで追い込んで自白させる…。
犯人を捕まえられないことでマスコミに叩かれるし、新たな犠牲者が出るのを止められず自責の念も沸いてくる。おそらくまともに眠れない日々が続いていて、刑事だって人間なんだから壊れていくのは仕方がないのかもしれません。
まあ”犯人をでっちあげても連続殺人事件は止まらない”というのがわからなくなってしまった刑事を、いつまでも現場の捜査に関わらせておくのもどうなんだという感じですが、警察も人手不足なんだろうねぇ…。
片田舎の刑事に対し、証拠がすべてだと自白強要を白い目で見ていたソウルの刑事が、やがて同じように犯人を挙げられない焦燥感から壊れていくのが哀しい。
いちおう犯人は誰か考えながら見ていたんですが、頭のいい犯人なら現場に残っていた精子が本人のものとは限らないよなぁと思ったり。ほら、近所に変態っぽい人がいたし採取しようと思えばできるのでは?
最近はマスコミも騒がしくなってきたし、ソウルから派遣された刑事はなかなかやり手みたいだから、そろそろ危ない橋を渡るのはやめようかと別人の精子を用意。捕まってもDNAは一致しないから潔白を証明できる、ということかも。
また、唯一の目撃者クァンホが容疑者ヒョンギュの写真を見たとたん、虐待されていた頃の恐怖の記憶がよみがえったのも、事件目撃の恐怖が引き金になったからかなぁと思いました。
…すっかり事件が風化した頃、たまたま現場の近くを通りかかって遺体のあった用水路を覗き込むパク。近所の子供がやってきて思いがけない言葉を聞き、今もどこかでのうのうと生きている犯人を見定めようとするかのように画面の方を見つめるラストが印象的です。未解決事件の恐怖を感じました(去年、真犯人が判明したらしいけど、ずいぶん前に別件で無期懲役になってた上に本件については時効だった模様)。