忘却エンドロール

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映画「モリーズ・ゲーム」観た

 | 伝記/自伝/実話  com(5) 

原題:MOLLY’S GAME
製作:アメリカ’2017 140分
監督:アーロン・ソーキン
原作:モリー・ブルーム
ジャンル:★実話/犯罪ドラマ

【あらすじ】女子モーグルのトップ選手として活躍していたモリー・ブルームは、五輪目前に試合中の事故により選手生命を絶たれた。その後、バーでバイトをしていた彼女は、ひょんなことから高額の掛け金が飛び交う非合法のポーカー・ゲームでアシスタントをするようになる。やがて、自らカジノの運営に乗り出し…。

物語は彼女が逮捕されるところから始まり、弁護士とのやり取りの中で彼女がどうやって闇ポーカーの経営者として成り上がったのかが描かれます。客の集め方やポーカーのルール、違法と合法の境目など情報量がかなり多かった割に混乱しませんでした。初監督作品とは思えないくらい見やすかったです。
原作が自伝なので美化されてる点もあるかもしれないけど、波乱万丈で危うい彼女の人生に引き込まれました。

最も惹きつけられたのが、モリーの子供時代を演じた少女の目ですね。父親を心底軽蔑しているという冷めきった目が素晴らしい。演技だとわかっていても、この子は本気で誰かを軽蔑したことがあるのかも…と思ってしまいました。
目が印象的なシーンは二つあり、どちらも重要なシーンなので、目だけで彼女の孤独と心の闇を伝えきったこの子の演技は素晴らしかったと思います。

目が印象的なシーンの一つは、背中が痛いと父親に訴えたのに無視され、結局何時間にも及ぶ背骨の手術に至ったというエピソード。手術後、ベッドの上から無言無表情で父親を見つめるモリーの目にゾクりとさせられます。
もう一つは父親が撮ったホームビデオ。娘に将来の夢や尊敬する人なんかを質問するんだけど、彼女は冷めた答えばかり繰り返します。他人を信用せず、自分で成し遂げる事にしか価値を見出せないという彼女の性質が、こんな幼い頃にはもう決まっていたんですよね…。

情報量が多くてもわかりやすかったのは、物語のメインが”彼女がどうして闇ポーカー経営を続けようとし、逮捕後は保身のため顧客の情報を売らなかったのか”にあるからだと思います。私的にはファザコン女性の心理を探るのは楽しかったし見ごたえあったけど、アングラな世界の仕組みや裁判での痛快な展開を望んでた人には若干物足りないかも?
それがなくても、一介のウェイトレスから闇ポーカーのオーナーにのし上がっていく様子は面白いんですけどね。勉強熱心で、知らない単語は何でも検索して調べ、理解してものにしていく現代の才女。やってることはともかく素直にすごいと思えました。

そこで気になってくるのが、それだけ才能があるのに何故リスクの高い闇ポーカーを続けようとするかです。ある程度まとまったお金ができたら、さっさと畳んで別のビジネスでも何でも生きがいを探せばいいのに…。
ギャンブルでやめ時を見失って破滅する男なんかも描かれていて、彼女自身できればそれを止めたかった様子なのに、自分自身も同じ轍を踏むのかと。お金や情報など管理を怠ればたちまち破滅しかねない立場なので、睡眠時間を削ってでも自分で仕切るために麻薬にも手を出すという本末転倒さ。
でも、それも終盤の父親との再会で謎が解けます。

このままでは何もかも失うことになる彼女の前に、ふらりと現れた父親。初めてまっすぐに娘と向き合い、普段なら3年かけるセラピーを3分でやってやると心理学者らしいやり方で父娘のわだかまりをほぐしていきます。…プライドの高い彼にはこれが精いっぱいの償いなんでしょうね(遅すぎるけどな!)。
モリーさえ気付いていなかった過去のトラウマに終止符を打ち、父親が不器用なりに自分を愛していたんだとわかったことで迷いを捨てたモリーの眼差しがいい。子供時代の子の眼差しとの対比によって彼女の意思の強さが際立ちます。

以下、ネタバレ注意!

刑務所に入れば有名人だったこともありレイプされる可能性は高いと弁護士に言われ、取引に応じれば没収された全財産が戻ってきて新しい人生をやり直せるが、断ればさらに没収された財産に対する多額の税金を納めなければならない。
そんな状況でも、取引に応じず自分の罪を認めたモリー。
理由は、FBIが欲しがっているHDDには多くの顧客情報が入っており、もしそれが漏洩すれば顧客だけでなくその家族も破滅するかもしれないから…。

正直に言えば、マフィアの報復が怖いからという理由の方が説得力はあるのだけど、少なくともここで描かれるモリーは家庭の崩壊の悲しさを知っているし、愛する家族に顔向けできないようなことはしないと思えました(ポーカー経営で違法行為を行ったのは10年間のうち最後の半年だけ。身を滅ぼすほど入れ込まないないよう客を説得したりもしてた)。
「私はこれからもモリー・ブルームだ」というようなことを言っていたから、取引に応じたら証人保護プログラムで別人として生きていかなければならなかったということでしょうね。つまり家族とももう会えなくなってしまう。

裁判の顛末はあっけないほどさらっと描かれますが、割と弁護士さん寄りの視点で見ていたので納得できました。個人的には、裁判での痛快な展開より、バイトの雇い主やプレイヤーXの悔しがる顔の方が見てみたかったかな。
ラスト、彼女のその後を見せるのではなく、引退に繋がった事故の後に自分で立ち上がる力強い姿を見せるのが良かったです。

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■ Comment

こんばんは☆

昨日はコメントを有難うございました☆

>原作が自伝なので美化されてる点もあるかもしれないけど、波乱万丈で危うい彼女の人生に引き込まれました。

そうですね~自伝はなかなか「どこまで事実を書いているのだろうか?」と思うところがあって・・・。 ただ、まぁ、アスリートからのこういう転身はなかなかないでしょうね~?

>最も惹きつけられたのが、モリーの子供時代を演じた少女の目ですね。

書かれている2ヶ所共にはっきりと思い出せます。
お上手でした。 ・・・私は完全に演技だと思います(笑)。

>物語のメインが”彼女がどうして闇ポーカー経営を続けようとし、逮捕後は保身のため顧客の情報を売らなかったのか”にあるからだと思います。

こう、書いていただいて、ハッキリと分ってきました(笑)。
分かっていなかったわけではないけど、ちょっと偏見を持っ見ていたように反省します。

>ある程度まとまったお金ができたら、さっさと畳んで別のビジネスでも何でも生きがいを探せばいいのに…。
>でも、それも終盤の父親との再会で謎が解けます。
>このままでは何もかも失うことになる彼女の前に、ふらりと現れた父親。

このあたりは自伝ならではでしょうね、フィクションだと嘘くさくなりそうです。
ケヴィン・コスナーって上手だと思ったことがほぼなかったんですが、この映画はまあまあでしたね!

>子供時代の子の眼差しとの対比によって彼女の意思の強さが際立ちます。
>モリーは家庭の崩壊の悲しさを知っているし、愛する家族に顔向けできないようなことはしないと思えました
>取引に応じたら証人保護プログラムで別人として生きていかなければならなかったということでしょうね。つまり家族とももう会えなくなってしまう。

筋道立てて書いていただいて、わかりやすいです。
女優さん、お上手ですものね。
きっと事実の人も、そうだったんだろうと信じられます☆

>ラスト、彼女のその後を見せるのではなく、引退に繋がった事故の後に自分で立ち上がる力強い姿を見せるのが良かったです。

そういえばそうでしたね、私はあの夕食会の印象が強くて・・・

正確に書かれているので、製作者側の意図がはっきりとしますね、さっすが☆
この方の原作があの映画とは驚きます、今後は監督業を主にしてゆくのかなあ?


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2019/12/29 17:16  miri〔編集

>miriさん

いらっしゃいませ!
原作が自伝の場合は”大筋以外はフィクション”くらいの捉え方がいいでしょうね。もともと、自分のことを客観的に書こうとしてもできないものですし。

> 書かれている2ヶ所共にはっきりと思い出せます。
> お上手でした。 ・・・私は完全に演技だと思います(笑)。

印象に残るシーンですよね。あの年齢であそこまでの演技ができるのかとびっくりしてしまいました。

> このあたりは自伝ならではでしょうね、フィクションだと嘘くさくなりそうです。

そうそう。でも映画化にあたり原作とは大分変えてあると後から知って「あれ?」と思いました(笑)

> 女優さん、お上手ですものね。
> きっと事実の人も、そうだったんだろうと信じられます☆

演じた方が別の人だったら印象も変わっていたかも。知的で他人に頼るのが苦手でまっすぐな彼女にぴったりでした。

> 正確に書かれているので、製作者側の意図がはっきりとしますね、さっすが☆
> この方の原作があの映画とは驚きます、今後は監督業を主にしてゆくのかなあ?

ありがとうございます。
監督はモリーさん本人による指名だったみたいです。最初は乗り気じゃなかったけど脚色賞をもらうほどの作品に仕上げてしまったようで。自分の中に新たな可能性を発見したかもしれませんね~。
2019/12/30 09:01  宵乃〔編集

あけましておめでとうございます

今年もよろしくお願いいたします。
最近はアニメにまでハマっていますからねー。
そういえば「モリーズ・ゲーム」も見ましたね。実録風でもあり見ごたえはありました。我が家では、おふざけ半分な記事になってますけど(だんだん簡単に済ませることが多くなってきている…)。
2020/01/01 14:58  ボー編集

>ボーさん

あけましておめでとうございます!
こちらこそよろしくお願いします。今年も映画やアニメなど好きなものを語りましょうね~。

> 我が家では、おふざけ半分な記事になってますけど(だんだん簡単に済ませることが多くなってきている…)。

簡単でもその時の気持ちを素直に書けてるならいいと思いますよ。私も毎回この調子で書いてると記録に残すこと自体が嫌になりそうなので、一言感想で済ますことが増えてきました。
2020/01/02 07:51  宵乃〔編集

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2020/01/19 12:55  
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