忘却エンドロール

素敵映画に出会えた時の感動をそのまま書き綴る、映画感想ブログ.

映画「トゥルーマン・ショー」観た

トゥルーマン・ショー
読み:とぅるーまんしょー
原題:THE TRUMAN SHOW
製作:アメリカ’98 103分
監督:ピーター・ウィアー
ジャンル:★SF/ドラマ

【あらすじ】美しい妻や長年の親友に囲まれ幸せな毎日を送るトゥルーマン。だがそれは、ある者の手によって作られた偽りの世界だった。ある日、溺死したと思われていた父親と再会した彼は、かつて無理やり引き離された女性の言葉を思い出す。真実を確かめるため街を出ようとする彼だったが…。

久しぶりに再見。これはコメディというよりSFドラマなのでは。しかもホラー寄りの。
ジム・キャリーには苦手意識があったんですが、このトゥルーマンは彼以外には考えられないと思うし、いつものようなくどさは感じませんでした。
ストーリーはほぼ覚えていて、虚構に包まれた彼の姿に笑えるわけもなく、もし自分の人生も誰か(宇宙人とか次元の違う存在など)に管理されていたら…という恐怖感の方が強かったです。あとは悲しみですね…。誰もかれもが彼を騙しているし、親や妻、親友だと思っている相手から与えられる愛情は嘘っぱち。そんなの悲しすぎます。

そんな彼の唯一の味方とも言えるヒロインは美しく、彼女の言葉が彼を導く展開は切ない愛の物語のようでした。役者として接するのをやめた唯一の人であり、彼女だけがトゥルーマンに真実を伝えようとし、番組制作者に対して本気で怒って抗議しています。…ただ、引き離されてからトゥルーマンが”現実”に疑いを持つようになるまでの数年間、彼女が何かしたという描写はないのが若干不安なんですよね。それほどTV局が力を持っていたということなんでしょうけど、トゥルーマンと恋人同士になれば世間に注目されそうですし…(騙してるというわけではなく、無意識下で別世界の人への憧れとか色々含まれてそうな)。うがちすぎでしょうか?

そして、今回注目したのが番組ディレクターのクリストフ。神になろうとした男の傲慢さと滑稽さでした。
平凡な普通の人生を送ってほしい。それだけ聞けば父親のようですし、眠るトゥルーマンの映像をいとおしそうに撫でる様子には、エド・ハリスの演技も相まって愛情があるかのようにも見えます。
ですが、トゥルーマンが外の世界に飛び立とうとするのを徹底的に邪魔するのは、彼にとってトゥルーマンが”自分の最高の作品”でしかないということ。次の金の卵を生み出すために必要な駒といったところでしょう。
親に子供の人生を支配する権利はないし、もちろん番組ディレクターにもない。彼を見ていて、そんなことを思いました。

さらに、この作品で最も恐ろしいのがトゥルーマン・ショーに夢中になる視聴者でした。こんな番組がまかり通るのは、他人の人生をフィクションとして楽しむ視聴者の存在があるから。彼らにとって”トゥルーマンという真実”は感動を盛り上げるための魔法の言葉であって、本当に彼が一人の人間として生きているということはどうでもいいことです。
見ている間は感動して涙もするし、熱い気持ちで応援したりもするけれど、番組が終われば一瞬で興味が失せて自分の生活に戻っていく…。そんな他人の人生をコンテンツとして消費していくのは、何もこの映画の中だけでなく現実でもあることなんだと気付かされます。感動ポルノなんてその代表みたいなものですよね。
思わず自分はどうだったかと省みてしまいました。考えさせられる作品です。

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■ Comment

こんばんは☆

今日見ました、初見です。

いつもながら、一番良いシーンのイラストですね!
素敵です!

記事も深くて、
覚えている再見ならではって感じです。

私は全然コメディとは思えなかったです。
途中で、月と太陽があり得ない関係で、本当に怖かったです!

またパソコン戻ったら、
たくさんお話しいたしましょう~(^^)/


.
2019/06/26 22:06  miri〔編集

>miriさん

いらっしゃいませ、miriさんは初見でしたか~。
イラストのシーンは見た瞬間に決まりましたね。勇気がもらえる良いシーンでした。

> 私は全然コメディとは思えなかったです。
> 途中で、月と太陽があり得ない関係で、本当に怖かったです!

ジム・キャリー主演だからコメディと紹介している映画サイトが(日本では)多いみたいです。
プラネタリウムみたいなものであの空を見られたら楽しいけど、本物だと思っていたものがあんな風になったらこの世の終わりかと思うかも…。

> またパソコン戻ったら、
> たくさんお話しいたしましょう~(^^)/

はい。早く復活して戻ってくるといいですね~。
2019/06/27 08:45  宵乃〔編集

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2019/07/01 16:50  

こんにちは☆

>思わず自分はどうだったかと省みてしまいました。考えさせられる作品です。

このひと言が全てを現わしていますね☆

>誰もかれもが彼を騙しているし、親や妻、親友だと思っている相手から与えられる愛情は嘘っぱち。そんなの悲しすぎます。

私的には、彼と同性である親友が一番ショックでした。

>…ただ、引き離されてからトゥルーマンが”現実”に疑いを持つようになるまでの数年間、彼女が何かしたという描写はないのが若干不安なんですよね。

これは物理的に自分にできることは無いから彼女としては見守るしかなく
彼本人としては(一番好きだったのではないけど)結婚したりして
いろいろと忙しかったから、どちらも仕方なかったと思います。

描かれてはいないけど、彼女自身もお年頃だから、自分の人生を考えた時に
物理的に手の届かない彼の事ばかりで毎日を送ることは出来なかったと思いました。

>そして、今回注目したのが番組ディレクターのクリストフ。神になろうとした男の傲慢さと滑稽さでした。

これはエドさんでなければ真実味が出なかったかもしれませんね?

>彼にとってトゥルーマンが”自分の最高の作品”でしかないということ。次の金の卵を生み出すために必要な駒といったところでしょう。

怖かったです、本当に。

>親に子供の人生を支配する権利はないし、もちろん番組ディレクターにもない。彼を見ていて、そんなことを思いました。

仰る通りです!

>さらに、この作品で最も恐ろしいのがトゥルーマン・ショーに夢中になる視聴者でした。

・・・もし自分がそういう番組をオンエアしている国に生まれ育てば
見るのが当たり前になるかもしれませんね?
怖い事ですが、愚かな大衆こそがこの映画のキモでした!

>見ている間は感動して涙もするし、熱い気持ちで応援したりもするけれど、番組が終われば一瞬で興味が失せて自分の生活に戻っていく…。

「マネーモンスター」は、このあたりをうまく描いていたと思います。
製作年代が20年ほど違うけど、事実として人類が成長したのなら
それはそれで良いのかもしれないけど・・・?

>そんな他人の人生をコンテンツとして消費していくのは、何もこの映画の中だけでなく現実でもあることなんだと気付かされます。感動ポルノなんてその代表みたいなものですよね。

感動ポルノって何なのか分からなくて調べました。
そうですね、嫌な事です、そういう感じがするとテレビを消してしまいます。
特に病気とか、嫌です、ムカつきます。

誰もが普通に必死に生きているんだと、私は思います。

自由に番組は作ってほしいけど、何らかの意図は必要なんだろうけど、
自分として見抜ければ。。。と思いました。


.
2019/07/14 16:47  miri〔編集

>miriさん

いらっしゃいませ、今日もコメントありがとうございます!

> 私的には、彼と同性である親友が一番ショックでした。

すべてがウソだったと気付いた時のトゥルーマンはどんな気持ちだったのか…。ずっと隣で見てきてた彼はこんな日が来ることを想像しなかったのかな。みんな感覚が麻痺してたんでしょうね。

> これは物理的に自分にできることは無いから彼女としては見守るしかなく

SFとは言え今この世界の延長にある世界として描いていると思うので、トゥルーマンの人権についてテレビ局と戦ってる団体は絶対に存在すると思います。アメリカで許されていても世界的には許されない(嫉妬も含む)可能性もありますし。
彼女も本気で助けたかったなら、海外で活動して世界にトゥルーマンが人権侵害されていることをアピールすることはできたんじゃないでしょうか。国内でたぶんモデルか女優として働いていたということは、番組出演時の契約か何かに屈して(人権問題よりそれが優先されると思って)諦めたということでしょう。

> これはエドさんでなければ真実味が出なかったかもしれませんね?
> 怖かったです、本当に。

そこらのホラー映画より怖かったです。他の方の感想をざっと読んでいたら、彼が本当に”父親のような気持ちでトゥルーマンを見ていた”と同情している人がいてびっくりしました。

> 怖い事ですが、愚かな大衆こそがこの映画のキモでした!
> 「マネーモンスター」は、このあたりをうまく描いていたと思います。

この二作品を近い時期に見られてよかったです。もしかしたら製作陣も「トゥルーマン・ショー」とのテーマの共通点を意識してたのかもしれませんね。

> 特に病気とか、嫌です、ムカつきます。
> 誰もが普通に必死に生きているんだと、私は思います。

本当に嫌な気分になります。私にとってテレビはもはや映画とアニメを見るだけのものになってますね…。

> 自由に番組は作ってほしいけど、何らかの意図は必要なんだろうけど、
> 自分として見抜ければ。。。と思いました。

少なくとも取材している相手に敬意を払ってくれれば自由でも構わないんですが、感動ポルノ系(に限らず)は取材相手の意向を完全に無視しているという話もよく聞くので…。とりあえず公序良俗に反するような取材ができないように徹底してほしいです。
2019/07/15 08:23  宵乃〔編集

大好きな作品です

今晩はお久しぶりです

この作品は劇場で初めて号泣した映画ですね、プレイベートライアンを見に行って
立ち見だと言われて代わりに見たら大当たりだった想い出があります
ジム・キャリーさんは以後コメディだけではなくドラマ系の作品にも出演するよう
になりましたね
2019/08/04 18:22  ねむりねこ

>ねむりねこさん

お久しぶりです!コメントありがとうございます。
ねむりねこさんの劇場初泣き映画でしたか。狙って観たわけではないのに大好きな作品と出会えるなんて、運命的ですね。

> ジム・キャリーさんは以後コメディだけではなくドラマ系の作品にも出演するようになりましたね

そうだったんですか。この他で印象に残っているドラマ系作品というと「マジェスティック」があります。彼もこの作品に出演していなかったら、マジェスティックなどもなかったかもしれませんね~。
2019/08/05 08:26  宵乃〔編集

こんばんは!

久々に自宅でゆっくり過ごせているので、また宵乃さんのブログに遊びに来られて嬉しい、ワーイ♪ ・・・・と思っていたら、私もコメントを残しておきたーい!と思う作品ばかりが揃っているので、これはゆっくりできそうもないかもです(笑)。少しずつ、コメント残していきたいと思います^^

「トゥルーマン・ショー」って、あの「キラーカーズ/パリを食べた車」とか「刑事ジョン・ブック/目撃者」のピーター・ウィーアー監督なんですよね!作風の幅が広すぎですけど(笑)、20年も前の作品であるにもかかわらず、メディア批判の確固たる視点がもう既にあったのか!と今見ても古臭さを感じさせないそのパワーが凄いなと思います。

当時は、ブラウン管(?)の向こう側にいる人間への人権なんてほとんど考えられていなかったかもしれませんね。私の当時の感覚も思い出せないくらいですが、多分、時代的にもどんどんメディアは過剰・過激になって、作る側・見る側もその感覚が麻痺していたかもしれません。その行き着いた先に生まれた究極のコンテンツが「トゥルーマン」という、すべて演出、みんなで覗き見してみんなでその悲喜こもごもを共有して楽しもう!という(悪趣味の)リアリティショーだったんでしょうね。

私もジム・キャリーは苦手なんですけれど、この映画だけは別で、彼の過剰な演技を見ていると、いかにも自分がそれを覗き見しているような気分になって、何だか居心地の悪ささえも感じさせられました。だから、宵乃さんの
>番組が終われば一瞬で興味が失せて自分の生活に戻っていく…。そんな他人の人生をコンテンツとして消費していく
という表現が、グサリ!ときました。「自分はどうなのか?」と考えさせられるところもありますね・・・。

この映画のように、まったくの一般人の全人生が全て演出で本人には知らされていない、という悲劇は流石にないと思いますが、例えば酷いドッキリの演出だとか、私生活切り売りで有名になるタレントだとか、あとは幼い頃からメディアに出ている人の成長を勝手に「劣化した」と言ってみたりだとか。そうやってイジられることを「おいしい」と言うことや「感動ポルノ」なんかも。みんなで寄って集って炎上させたりだとか。もともとテレビとかメディアってそういう共有の仕方だったのかなぁ、と。

この映画からもう20年も経って、IT技術の目覚ましい進歩で情報量は格段に増え、世界中のどこにでもどこからも簡単に繋がるようになったというのに、その世界観や人間としての感覚は広がるどころかますます狭くなって、なんだか当時よりも窮屈になったような気がします。「トゥルーマンショー」から何も変わっていないことに、改めて驚いてしまいました。

あー、私のコメントの長くなってしまってゴメンナサイ!
毎日暑いですが、なんとか乗り切りましょう!!
2019/08/16 22:33  はなまるこ〔編集

>はなまるこさん

いらしゃいませ、お元気そうで何よりです。私もはなまるこさんのコメントがあると嬉しくなりますよ。ゆっくりできる時間をコメントに割いてくださってありがとうございます!
ご無理はなさらないでくださいね~。

> あの「キラーカーズ/パリを食べた車」とか「刑事ジョン・ブック/目撃者」のピーター・ウィーアー監督なんですよね!作風の幅が広すぎですけど(笑)

そうでしたか!ホント作風の幅が広すぎて気付きようがないです(汗)
日本でコメディ作品と紹介されているのが信じられないくらい、現在にも通じるテーマのしっかりした作品ですよね~。

> 作る側・見る側もその感覚が麻痺していたかもしれません。
> みんなで覗き見してみんなでその悲喜こもごもを共有して楽しもう!という(悪趣味の)リアリティショーだったんでしょうね。

2000年初めくらいには「あいのり」をやっていたし、今も「モニタリング」とかやってますね(家族が見てて辛い…)。この作品が公開されてからあまり変わってないんだなぁと哀しくなります。

> 彼の過剰な演技を見ていると、いかにも自分がそれを覗き見しているような気分になって、何だか居心地の悪ささえも感じさせられました。

たしかに!鏡に話しているところとか覗き見感ありました。彼じゃなきゃできない役だったと思います。

> 例えば酷いドッキリの演出だとか、私生活切り売りで有名になるタレントだとか、あとは幼い頃からメディアに出ている人の成長を勝手に「劣化した」と言ってみたりだとか。~もともとテレビとかメディアってそういう共有の仕方だったのかなぁ、と。

そういうのに嫌気がさしているひとも多いのに、一向になくなる気配がないですよね。それがなければ成り立たない業界なのだとしたら、それが成り立つのはやはり人間の業が深いということなのか…。

> その世界観や人間としての感覚は広がるどころかますます狭くなって、なんだか当時よりも窮屈になったような気がします。

ですね。あふれる情報の中から自分に都合のいいものや好きなものばかり見られるようになって、よほど気を付けていないと偏った視野の狭い人間になってしまいそうです。目立つ人の言葉があたかも全体の意見のようになって、多様な意見なんて見えなくなってしまいますし…。

> あー、私のコメントの長くなってしまってゴメンナサイ!
> 毎日暑いですが、なんとか乗り切りましょう!!

いえいえ、いつも新たな視点に気付かせてくださってありがとうございます。
はなまるこさんも熱中症や夏バテ夏風邪にお気を付けください。秋雨前線とともに涼しい風も来てくれればいいんですが…。
2019/08/17 09:50  宵乃〔編集

No title

『このシーンを切り取っちゃう、ってこと自体が、この「トゥルーマン・ショー」という映画を作った監督とプロデューサーの手の中で感動してしまった、ってこと』で、それは『この映画内のテレビ番組「トゥルーマン・ショー」でプロデューサーのエド・ハリスに乗せられて感動している「愚かな大衆」』とレベル的にどこが違うんや、というウィアー監督のひねくれて醒めきった視線を感じずにはいられません。

問題は、1998年の時点でこれだけの「警告」があったにもかかわらず、2020年の現在は、この映画が「牧歌的」で「生ぬるい」のではないかというような、五十億総「トゥルーマンの自己売り込み」みたいな世界になっちゃった、ということですな。視聴者までもが参加俳優でありながらひとりのトゥルーマンなんだから始末に悪い。

世をはかなんで出家したくなってきました……。
2020/02/25 02:25  ポール・ブリッツ〔編集

>ポールさん

> 『このシーンを切り取っちゃう、ってこと自体が~

まあ、わかってても描きたくなるシーンでしたからね~。

> 五十億総「トゥルーマンの自己売り込み」みたいな世界になっちゃった、ということですな。

動画やSNSなどでの個人情報あけっぴろげが怖いですよね。なんであんなに生活や家族のことを赤の他人にさらけ出せるのか、見てて怖いです。いまだに匿名なら何を言っても大丈夫と思って誹謗中傷を書き込んで、訴えられて前科がついちゃう人もいるし…。さすがに全員が全員そうではないと思いたいです。
2020/02/25 07:32  宵乃〔編集
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