映画「クロノス(1992)」観た
読み:くろのす
原題:CRONOS
製作:メキシコ’92 92分
監督:ギレルモ・デル・トロ
ジャンル:★ホラー
【あらすじ】16世紀、陶器のような肌をした錬金術師の奇妙な遺体が発見された。そして現代、骨董屋を営む老人ヘススは売り物の天使像の中から金色のスカラベ「クロノス」を発見する。中から飛び出した鋭い鉤爪のようなもので手を怪我してから、彼の身体に異変が起こり…。
ギレルモ・デルトロ監督かぁ!
なんかこう冒頭からただものじゃない雰囲気を醸し出してました。錬金術に機械仕掛けのスカラベ、そして永遠の命とその代償…。言葉にして並べればありがちなものに感じるかもしれないけど、見ている間は次に何が起こるかわからなくてグイグイ引き込まれました。
なんといってもずるいのは、主人公が優しい古物商のおじいちゃんヘススと、口をきかない(自閉症?)幼い少女アウロラの組み合わせです。この組み合わせでホラーに転ぶとは思わないじゃない!
序盤は仲の良いじいじと孫というほのぼの展開だったのに、それが商品の天使像からゾロゾロとGが出てきてから抜け出せない地獄のような展開に。あの時、馬鹿なアンヘルがその場で像を買って持ち帰っていれば、こんなことにはならなかったのに…!
そしてスカラベの造形がまたいいんですよね。ぱっと見は綺麗な金細工、けれど手のひらに乗せていたら突然昆虫の脚のような鉤爪が飛び出して、手の肉に食い込みます。その時に中の歯車が動く様子が映されるんだけど、そこにちらりと映る不気味な塊がもうね。理屈ではなく「これはヤバいやつだ」とわかるし、生理的な恐怖を感じました。
それからのおじいちゃんの変化も不気味で、まさか鼻血を出した男性を追ってトイレであんなことをするとは…。演技でも嫌ですよね…。それくらい理性を失ってしまうというのがまた怖い。
あの憎たらしいアンヘルのせいで、何も知らないヘススは自分が人間ではなくなってしまったことに気付かされます。
それでも唯一の味方として側にいる少女アウロラの存在が、この物語の良い意味での歪さを際立たせていました。
本来ならこの二人は、こんな物語の主役になんてなるはずがなかった、と思い出させてくれるんですよね。
光が苦手になった祖父のために、大きなおもちゃ箱の中に寝床を作ってあげる孫に涙が…。
一歩間違えば足を踏み外してしまいそうなヘススを踏み止まらせ、神々しささえ感じさせるラストに繋がったのも彼女のおかげだったと思います。一度だけ発した「おじいちゃん…」と呼ぶ彼女の声が印象的でした。
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