原題:INTO THE NIGHT
製作:アメリカ’84 115分
監督:ジョン・ランディス
ジャンル:★サスペンス/ミステリー
【あらすじ】不眠症に悩んでいる工学技師エドは、妻の浮気現場を目撃してショックを受ける。気晴らしにラスベガスに行けと同僚に勧められていた彼は、深夜に思い立って一人ロサンゼルス国際空港へ。すると、黒づくめの男たちに追われる美女ダイアナと遭遇し、彼女を車に乗せて逃走することになり…。
これは嵌りました。なんだろう、言葉で表し難い面白さというか…。感想書きにくい(汗)
言うなれば不眠症のおじさん版不思議の国のアリス…?
メルヘンなイメージは一切ないんですが、夜のベガスの街で出会う人々がどことなくシュールなんですよ。ヒロインのお兄さんはエルビス・プレスリーの大ファンで、エルビスの写真やポスターが飾ってある部屋は異空間のよう。めちゃくちゃ愛のこもった彼の愛車、白いキャデラック・エルドラド・ビアリッツも、なんだか現実味のなさを増してます。
それを勝手に借りて運転するのが、冴えないけど変に肝が据わってる主人公エド。肝が据わってるのか、あまりに自分の世界とかけ離れていて感情がついていかないのか、それとも眠いだけなのか…。人生初だろう出来事の連続なのに、ふらりふらりと上手く渡っていく主人公は、なんとなくアリスっぽく感じられました。
他にも船にいるマッチョ男とか、”女王様”みたいな黒幕、その手足となって動き回る手下たち(ボスが取引してる時にそばでポリポリお菓子食べ続けてるのが可愛い)、ベガスの街に立つ娼婦たちなど、大人のワンダーランドが描かれています。殺伐としているのにどこか夢の中のようで、どこか心地よさも感じられました。ところどころに散りばめられたユーモアも私好み!
派手な展開はほぼなくて、平坦とも言えるのでかなり人を選ぶ作品だと思います。
あと印象に残ってるのが映画だかドラマの撮影現場に行くシーン。電話を掛けようとしたらセットの電話でスタッフに「ふざけてるの?」と言われるし、壁にもたれかかろうとして壊わしたり、石に腰かけれて壊わしたり…。しまいには開き直って壊れた石に座り続けるところがやっぱり肝が据わってるというか、細かいところはどうでもよくなってるみたいな。
そんな気だるい雰囲気の満ちた作品の中で、ジェフ・ゴールドブラム演じる主人公と、ミシェル・ファイファー演じるヒロインが走り回るのがいいんですよね。エドは本当に通りすがりの一般人で、特殊な能力なんて一つもないのに、どうにも彼女を放っておけなくて助けてしまう。そこがカッコいい!
劇的な展開がなくてもささやかに確実に二人の心が近付いていっているのが伝わってきて、そういうところが大人な雰囲気でよかったです。