映画「震える舌(ふるえるした)」観ました

製作:日本’80 114分
監督:野村芳太郎
原作:三木卓
ジャンル:★ドラマ
【あらすじ】5歳の娘・昌子が風邪のような症状が出るとともに、奇妙な行動をとるようになった。歩く様子もおかしくなり、心配になった昭と邦江は病院へ連れて行く。最初は大したことはないと言われるが、娘が破傷風に感染していると発覚。やがて二人は破傷風がどういうものか目の当たりにし…。
ついに見てしまいました。これは最後まで目が離せませんね…。
子供が発作を起こして叫ぶ声が辛くて、それを間近で見守り続けた両親の辛さも想像せずにはいられませんでした。
もちろん一番つらいのは幼い娘さんで、最初の「できるけどやりたくない」と辛さを堪えて両親を心配させまいとする姿を思い出して涙が…。
母親が「こんなことなら…!」と錯乱する姿もショッキングで、でもそれほどまでに精神的にギリギリだというのも伝わってきます。比較的耐えていた父親もやがては自分も感染したのではと怯えたり、苦しむ娘を助けられない悪夢にうなされたり…。
常に冷静に、周りを心配させないように医師としての役割を果たしていた女医さんも印象的で、医者というものの責任の重さについて考えさせられました。彼女とは正反対な医師も描かれていて「ご両親がちゃんと見てあげてくれなきゃ」と崖っぷちにいる父親に冷淡な言葉を掛けるのが酷い。昔はこんな医者がいっぱいいたんでしょうか…。光や音などの刺激が良くないとわかっているのに、小児病棟の大部屋の隣に入れるのも配慮が足りないし。
原作者さんの体験した実話をモチーフにした作品らしく、どこまで真実なのかはわかりませんが見ている間は映画だと忘れるくらいリアルに感じました。父親が破傷風菌に心の中で語り掛けるくだりも、細菌性の病気にかかったことがあれば誰でも考えることなので実際にあんな感じだったんだろうなぁ。あと昌子に「もしこのまま死んでしまったら…。他に子供は作らず一生お前だけを愛してあげる。俺がしてやれるのはそれぐらいだから」と語りかけるところは涙が止まりませんでした。
ただ、母親のことはどうなんでしょう…。映画的には許容できる範囲でしたが、実際にああだったとは思いたくありません。誰も彼女に本当のことを伝えなかったのもなぁ…。
また、当時5歳の子役・若命真裕子さんの演技や、両親を演じた渡瀬恒彦さんと十朱幸代さんの演技が真に迫っていて、闘病の緊張感や出口の見えない閉塞感が伝わってきました。
その分「チョコパン食べたいよぉ」の緊張が解けていく感じがたまらないです。ジュースを買いに走って、転んだ拍子に涙があふれる父親の姿に、私ももらい泣きしてしまいました。
ホラー的演出ばかりが有名になっているけれど、誰にでも襲い掛かる可能性のある病魔というもの、それによって追い詰められる人間の無力さについても考えさせられる作品だったと思います。
■ Comment
内容はシリアスな闘病ものだけど、演出が下手なホラーよりホラーしているので、小学生の時に見て心底怯えました(^^;)
商業的には演出方針は間違っていないけど、よく夏休み土曜夜9時にかけたなあ、と思います当時のテレビ局(^^;)
2018/08/07 20:38 ポール・ブリッツ〔
編集〕
宵乃さん、こんばんは
昨日は古い記事にコメント頂きありがとうございました
この作品観ると、ホント、ウチら夫婦の会話を聞いてるようで、怖い。(笑)
実際にああだったとは思いたくありません
>病室の前で「入りたいけど、入れない・・」って辺りでしょうか。
付きっきりだった分、僕は彼女の方がダメージが大きかったと思うし、何時、自分の目の前で死んでしまうか解らない絶望、自分の身体から生まれたからこそ感じる辛さ、あらゆる恐怖が彼女を極限の果てに追い込み「壊れた」と、僕は同情してました。
男と女の違いでしょうか。
誰も彼女に本当のことを伝えなかったのもなぁ…。
>ここは当時から、ずっと疑問で酷いと、何度、見ても同じ感想になります。
真裕子ちゃんの演技が凄いのは勿論ですが、ぼくは両親の演技に感嘆してました。
裏話として真裕子ちゃん、結構、子供らしく面白がってやってたそうですよ。監督に褒められて余計、楽しくなっちゃったらしいです。(この映画の唯一の和みエピソード)
もう一つ、サイトを覗いてて笑った話。
親子で観ていて渡瀬さんのジュース、スライディングシーン。
子供が一言、「お父さん、伝染っちゃったんだ」
しかし、これ、何の目的で作ったんでしょうね。
トラウマ大量産という事は、ショック療法?
いらっしゃいませ!
小学生の頃に見てしまいましたか、それはトラウマものでしたね(汗)
しかも、家族で見られる土曜の夜にオンエアするとは…。トラウマ映画として知られているのも納得です。
ホラー的だけどホラーじゃない、ちょっと分類に悩む作品ですよね~。
> この作品観ると、ホント、ウチら夫婦の会話を聞いてるようで、怖い。(笑)
ああいうところもリアルだから、余計にこの作品の怖さが増してますよね。子供の頃に見てトラウマになった人が、大人になって再見して別のトラウマを抱えそうです…。
> >病室の前で「入りたいけど、入れない・・」って辺りでしょうか。
いえ、そこは共感できました。「生まなきゃよかった」の方です。言ってしまった方もショックだと思うんですが、ラストは普通にしてるのも違和感ありましたし。記憶を封じてしまったんでしょうか。あと、病気で苦しんでいる娘に聞こえてないとも限らないなぁと。
> >ここは当時から、ずっと疑問で酷いと、何度、見ても同じ感想になります。
ですよね…。覚悟する機会を奪って、いきなりあんなものを見せられたら誰でも取り乱しますよ。夫婦間の信頼関係も崩れそうですし…。医者も両親それぞれにちゃんと説明するべきだったと思います。
> 裏話として真裕子ちゃん、結構、子供らしく面白がってやってたそうですよ。監督に褒められて余計、楽しくなっちゃったらしいです。(この映画の唯一の和みエピソード)
みんな迫真の演技でしたよね。真裕子ちゃんが楽しんで演じていたとわかって安心しました。変なトラウマになってないか気になっていたので。
撮影現場も彼女の笑顔に救われたところがあったかもしれませんね。
> 親子で観ていて渡瀬さんのジュース、スライディングシーン。
> 子供が一言、「お父さん、伝染っちゃったんだ」
あはは、親子で見た猛者がいるんですね。子供ですら医者の「感染しない」という言葉を信じられないところが…(汗)
> トラウマ大量産という事は、ショック療法?
ワクチンの大切さを伝えてるんでしょうか。たまにワクチンの副作用を恐れて打ちたがらない親とかいますからね。破傷風に限らず、病気は身近で怖いものだと教えてくれるとは思います。
お疲れ様です。
ご無沙汰しております。
すみません。闘病ものとして、観ていなかったなぁ・・・と宵乃さんの記事を読み返して改めて思いました。
(ただ、流石に観返す気力がないのでご容赦を)
奥さんの極限状態とはいえ、あの台詞には
いまだに許容したくないし、その後、何かの拍子で思い出しそうですし・・・
夫婦生活継続できるのかなって思いました。
ただ、愛する存在であるからこそ、喪われそうな時に、文字通り、体を千切られるような痛みを生ずるでしょうし、それが何度も何度も繰り返すと根本の部分で(原因である娘の存在そのもの)を否定したのかもしれませんね。
本当に久しぶりにコメントができて嬉しかったです。
大変、返事が遅くなって申し訳ありません。
2019/03/18 22:21 きみやす
あぁああ、きみやすさん!!
いらっしゃいませ、お忙しいところコメントありがとうございます!!!
> すみません。闘病ものとして、観ていなかったなぁ・・・と宵乃さんの記事を読み返して改めて思いました。
きみやすさんやmiriさんのお話からよっぽどヘビーなお話なんだろうなぁと心構えができていたので、とつぜん遭遇した場合と比べると冷静に見られたのかもしれません。何にも知らずに観たら、きっと通り魔に襲われたくらいのショックでドラマ部分なんて頭に入ってこなかったと思います(汗)
> いまだに許容したくないし、その後、何かの拍子で思い出しそうですし・・・
> 夫婦生活継続できるのかなって思いました。
私もできれば思い出したくないセリフです。女優さんはよく演じてくれましたよね…。
私が許せないのはどちらかと言うと、奥さんよりもセリフを考えた人かなぁ。
> ただ、愛する存在であるからこそ
あの壮絶な現場にいたら赤の他人であっても逃げ出したくなってしまいますよね。それが愛する存在で、逃げ出すことなんてできなかったとしたら…。想像しただけで胸が苦しくなります。
> 本当に久しぶりにコメントができて嬉しかったです。
> 大変、返事が遅くなって申し訳ありません。
こちらこそ、きみやすさんからのコメントに思わず「あぁ!!」と声が出たほどでした(笑)
返信についても、いつか余裕ができたときに話せたらいいなぁと思ってコメントしたので大丈夫です。というか、よりによってこの作品を選んでしまった私の方が申し訳ありません!!
またゆったり映画・アニメ語りができるようになったらお話しましょうね~♪