映画「傷だらけの栄光」観ました
読み:きずだらけのえいこう
原題:SOMEBODY UP THERE LIKES ME
製作:アメリカ’56 113分
監督:ロバート・ワイズ
原作:ロッキー・グラジアノ、ローランド・バーバー
ジャンル:★伝記/ドラマ/スポーツ
【あらすじ】元ボクサーの父に殴られて育ち、悪さを繰り返し投獄されたロッコ。更生してもまた逆戻りしていた彼は、金欲しさに始めたボクシングで才能を見出される。ノーマという最愛の女性を見つけ、プロボクサーとして真っ当な人生を歩み始めるが…。
スタローンの「ロッキー」は結構好きなんですが、名前の由来はこれだったんですね。あらすじではロッコと書いたけどロッキーとも呼ばれていたし、どっちが愛称なんでしょう?
まあ、それはいいとして。気に食わないことがあればすぐ殴り飛ばしていた彼が、ノーマと出会ってみる間に変わってゆくのが可愛かったです。そこまで送ると言って、着きそうになるともう少し、あとちょっと…と、部屋の前まで来てしまったり。殴り合いが嫌いな彼女が練習を見に来た途端、言い含めておいた相手と「チョコン」「チョコン」と頬に触れる程度のスパーリング?を始めたり。怪我した顔に怯える娘を気遣って、扉のところでそっと顔をのぞかせる様子なんかは、ホントにパパになったんだなぁと感慨深いものがあります。
ストーリーのテンポの良さ、試合の迫力、人情にちょっとしたユーモアと、中身ぎっしりの2時間でした。
<2018/08/01:再見>
以前の感想を読んだら名前について曖昧になってたので調べてみました。主人公の本名はトーマス・ロッコ・バルベラで、ロッキーが愛称でした。リングネームは脱走兵だった時にワインのラベルを見てロッキー・グラジアノと名乗ります。映画「ロッキー」の主人公の本名ロバート・バルボアは、本作へのオマージュでしょう。
奥さんとなる女性とのデートの様子や試合中に家族や知人がラジオ(ロッキーではテレビ)に集中してる様子なども意識しているのがわかりました。
10年ぶりの再見なので内容をほぼ忘れていたんですが、ロッキーの若い頃のチンピラっぷりが酷いですね(汗)
父親に殴られて育ったので仕方ないとは思うものの、母親が精神的に参って何度も入院してるのに馬鹿なことばかり繰り返します。他の方法を知らなかったんでしょう。
一方で彼の妹(弟もいたかも?)たちはみんな幸せそうなんですよ。父親がロッキーにだけ厳しく当たっていたんだとしても、兄が刑務所に入ったり脱走兵になったりしていて、よく文句も言わずに兄に懐いてられるなぁと思ってしまいました。ここら辺は原作者の一人であるご本人の意向でしょうか。ちょっと物足りなさもありました。
今回印象に残ったのは、辛抱強くロッキーを支え続けた母親と奥さんです。ずっと味方だった母親が、心を鬼にして「次にまた裏切ったら親子の縁を切る」と涙ながらに宣言したこと。そして、自分が結婚の条件に「ボクシングをやめること」と言ったために夫を魂の抜け殻にしてしまったんだと息子に告げ、息子の奥さんには「私と同じ過ちだけはおかさないで」と頼んだこと。これらがロッキーの人生にどれだけ大きな影響を与えたか!
奥さんの方も素直に義母の言葉を受け取り、ボクサーの妻として気丈に振舞い、そして明るい笑顔で彼を支えます。
飲んだくれる父親を見て、自分もいつかああなってしまうかもしれないと、真っ当に生きることに自信を持てないでいた彼が、口先だけでなく「何も心配ない」と自分自身でも思えるようになったのは二人のおかげでしょう。
終盤で父親に真正面から思いをぶちまけて「親父のために俺にできることは何だ?」「チャンピオンになれ。俺の夢だった」と言った後の”何も心配ない”の力強さがそれを物語っていました。
「ロッキー」の原点とも言える作品です。