映画「栄光のランナー/1936ベルリン」観ました
原題:RACE
製作:アメリカ・ドイツ・カナダ’2016 134分
監督:スティーヴン・ホプキンス
ジャンル:★ドラマ/伝記/スポーツ
【あらすじ】名コーチ、ラリー・スナイダーと出会った黒人青年ジェシー・オーエンスは、大学の陸上競技大会で世界新3つとタイ記録1つを打ち立しす。オリンピック出場を目前としていたが、アメリカ国内ではナチスに反対してオリンピックをボイコットすべきだと世論が高まり…。
実在のアスリートの半生を軸に、ベルリンオリンピックでのナチスドイツの思惑や人種差別について描いていて興味深い内容でした。
題材にナチスドイツがあるとそれが中心になってしまいそうだけど、この作品ではかなり冷静な目線で描いていてバランスが良かったと思います。ヒトラーは2~3回画面に映るだけで、ユダヤ人迫害の様子も遠めにチラッと見えるシーンと、レースにユダヤ人を出すなと要求してきた時だけ。
一方で、アメリカ国内での人種差別もしっかり描いていて、とくに金メダル獲得は確実と思われている主人公ジェシーに対して、オリンピックの間だけのコーチが「黒人のくせに!(口答えするな)」と罵るシーンが印象的。史上初の金メダル4つ獲得を成し遂げたジェシーがパーティに呼ばれ、ホテルの入り口で「黒人はスタッフ用の入り口を使え」だなんてふざけた扱いを受けるくだりも憤りを感じます。
ベルリンオリンピックに出場すればドイツを認めたことになるとか、選手のチャンスを奪ってはいけないとか偉い人?が話し合っていたのに、肝心のアメリカ国民の間ではドイツと同じように人種差別がはびこっているという皮肉が利いていました。
また、人間ドラマ部分も丁寧に描いていて、元アスリートだった名コーチ・ラリーとの師弟の絆や、彼を支えた妻子との愛情、そしてドイツ人選手でありながら高潔なスポーツマンシップでジェシーと真剣勝負をしたロングとの友情が素晴らしかったです。ドイツ人すべてがナチスのやり方を認めていたわけじゃないし、彼のように命懸けでそれを伝えようとする人もいたんですよね…。彼の存在はジェシーにとっても救いになったと思うし、二人の友情が大会後も続いていたというのが一番感動しました。ナチスにも人種差別にも屈せず、スポーツの世界では自由を勝ち取った二人が熱い。しかもフィクションじゃないなんて。
スポーツって本来こういうものなんだよなと思いました。