映画「続・激突!/カージャック」観ました
原題:THE SUGARLAND EXPRESS
製作:アメリカ’74 110分
監督:スティーヴン・スピルバーグ
ジャンル:★ドラマ
【あらすじ】あと4ケ月で出所という時に、妻ルー・ジーンに唆され脱獄したクローヴィス。彼女の話では、二人が刑務所にいる間に息子が里子に出されたという。二人は息子を取り戻すため、警官もろともパトカーを奪い里親の元シュガーランドへ向う。
たしか「激突」より前に観た作品だと思います。初見時はぼろ泣きで今再見したらどうなるかなぁと気になっていたんですよね。今回やっと再見できて、またもや号泣。配給会社に「激突」の続編みたいな邦題を付けられて損してますが、中身はちゃんとしたドラマでありニューシネマでした。
もうね、警官が主人公たちをみて「(中身は)子供か」というのがすべてだと思うんですよ。普通はこんなことをしたらどうなるのかわかるのに、ルー・ジーンははしゃいでいて我が子と一緒に暮らす未来しか見えてません。そして破滅の道を歩んでいるとわかっていても、子供を取り戻す以外ルー・ジーンが幸せになる方法はないと行動を共にするクロ―ヴィス…。彼女のために自分にできることは何かというと、彼にはこんなことしかできないんですよね。
そんな二人に対して、間近で見ていた人質警官はストックホルム症候群も手伝って彼らを守ろうとするし、警察も相手が大人子供だということや世間体のこともあってなかなか強硬手段を取れません。そして、幼い我が子を取り戻すために命がけで警察と渡り合う犯人たちに、世間の人達は”美談”としてお祭り騒ぎを始めるわけです。
でも、主人公たちがどうして破滅の道を歩むことになったか考えると、なんだか切なくなってくるんですよ。更生施設がきちんと機能していれば若くして道を踏み外した彼らが軽犯罪を繰り返さずに済んだかもしれないし、子供に関する通知が前の住所に送られたせいで気付けなかった時、お役所仕事で冷たくあしらったりしなければ彼らも里親も子供も翻弄されることはなかったかもしれない…。
そして、小さなことでも困った時に親切にしてくれる誰かがいれば、彼らも他人に相談したり頼ることができていたかもしれないと思ってしまいました。
クロ―ヴィスは決して頭が悪いわけじゃありません。警察が彼らに仕掛けた罠も、今まで培ってきた経験で回避しました。もし彼が法律を破らなくても生きていく方法を学んで、社会復帰のための助けがあったなら元の道に戻れた可能性はあるんですよ。ルー・ジーンだって「困った時は役所に相談しろ」というクロ―ヴィスの言い付け守る素直な女性なので、善人に囲まれていれば道を踏み外したりしなかったでしょう。
無声映画で崖から落ちるキャラクターに自分たちの未来を重ねて表情を曇らせたり、今からでも遅くないと自首を進められて「それで丸く収まっても、ルー・ジーンは幸せになれない」と断るクロ―ヴィス、そしてお祭り騒ぎを楽しむ野次馬たちからの贈り物を無邪気に喜ぶルー・ジーンをみていたら涙が止まりませんでした。
そう見えるように撮ってるんだろうけど、彼らを銃で襲撃するアホな民間人や淡々と彼らを狙うスナイパーの方が凶悪犯のよう。
ラスト、事件の後にルー・ジーンは子供を取り戻したと流れ、事件を起こす前に彼女の言い分を認めていればクロ―ヴィスは死ななかったし、里親も子供を奪われずに済んだのに…とやるせなくなりました。
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