映画「チップス先生さようなら(1939)」観ました

読み:ちっぷすせんせいさようなら
原題:GOODBYE, MR. CHIPS
製作:アメリカ’39 115分
監督:サム・ウッド
原作:ジェームズ・ヒルトン
ジャンル:★ドラマ
【あらすじ】1870~1930年代。イギリスのとあるパブリックスクールで教鞭をとるチッピングは、生真面目な性格から生徒への接し方に悩んでいた。だが中年の頃、旅行先で出会い電撃結婚したキャサリンのサポートによって、彼は才能を開花し、優しくユーモアのある先生として生徒たちの人気と信頼を集めていく。
感涙祭第一弾。序盤が退屈だったけど、山で奥さんになる人と運命的な出会いを果たしてからが面白かったです。1969年の作品も観たことがあったのに、ぜんぜん見覚えのない展開。
「美しく青きドナウ」なのに青くない→「ドナウ川が青く見えるのは恋をしている人だけ」のくだりがロマンチックですね。ちょうどラジオで、当時「美しく青きドナウ」には歌詞がついていて、この曲のタイトルも歌詞も社会風刺の意味が込められていたと聞いたばかりだったんですが、このロマンティックな解釈の方がいいかも。
ダンスなんて踊れないと言っていたシャイな彼が、最後だからと勇気を振り絞ってから別人のように変わっていくところも良かったです。幸せそうで自信に満ちていて、元々イケメンだから陰気な雰囲気から一気に主人公らしくなっていきます。
その後のプロポーズも楽しい。「もちろん!」といい返事を貰えたのに、列車は行ってしまって住所も知らないからもう会えないと嘆くところとか(笑)
彼の自信を引き出し、教師が天職だと気付かせる奥さんはまさに妻の鑑でした。
子供たちとの距離が縮まって、誰からも愛される学校の象徴的存在になっていく展開も、こんなことがどこかであったかもしれないと信じたくなるような温かさで、その分、大切なものを失った時の悲しみが大きい…。でも、そんな彼を救ったのも彼女の言葉であり、学校の子供たちなんですよね。
最後の「私には何千人もの子供たちがいる」という言葉に涙が溢れました。
にしても、このチップス先生を演じた俳優さんが、若かりし頃からおじいちゃんになるまで一人で演じていたとは驚きです。画質が良くないから目立たないのもあるだろうけど、本当におじいちゃんそのもので全く気づきませんでした。
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■ Comment
チップス先生、究極の老け役ですよね(^^) もとがあれだけ二枚目なのにあれだけの老け役ができるんだから当時のハリウッドは恐ろしい(^^) まったくもって早逝が惜しまれます。
奥さん役を演じたあの女優さんは、この映画をステップにしてハリウッドでも指折りの名女優になったそうですが、たしかにそれもわかる美しさであり人柄でした。原作が原作だからしかたないのですが、もうちょっと作中で長生きしてほしかったです。ヒルトンの原作の内容を忘れていたので退場するシーンはショックそのものでした。
第一次大戦のツェッペリン飛行船の空爆のシーンは、あれ、制作側としてかなり力を入れていたと思います。なんといっても、空襲による都市の無差別爆撃なんて、あのロンドンが最初ですからねえ。当時としてはかなりショックだったことがわかります。あの映画が作られた時から考えると、スペイン内戦におけるドイツのゲルニカ爆撃に象徴される、一つの村が壊滅してしまうような航空機による爆撃に対する抗議の意味もあったのかもしれません。
で、あの映画が公開されて半年たつかたたないうちにドイツによるポーランド侵攻があって第二次世界大戦が始まるわけですから、人間ってバカですね。ほんと、バカですね。
これ以上書くと映画の感想というより政治的な愚痴になるのでやめておきます(^^;)
2017/04/10 00:18 ポール・ブリッツ
いらっしゃいませ、コメントありがとうございます。
同一人物が演じてるなんて、まったく気付きませんでしたよ。ホント、歴代の老け役の中でもトップクラスだと思います。昔はこんなすごい俳優さんがたくさんいたんですね~。
> 奥さん役を演じたあの女優さんは、この映画をステップにしてハリウッドでも指折りの名女優になったそうですが、たしかにそれもわかる美しさであり人柄でした。
ただ見た目が美しいだけじゃなく、内面から気品や優しさがあふれてました。これをきっかけに名女優になっていったというのも頷けます。私も内容をすっかり忘れていて、奥さんの退場に涙目になってしまいました。
> 空襲による都市の無差別爆撃なんて、あのロンドンが最初
> 一つの村が壊滅してしまうような航空機による爆撃に対する抗議の意味もあったのかも
おぉ、勉強になります。そういう背景があったんですか。日本人でいうと原爆関係のシーンに特別な思いがわいてくるのと同じですね。それは力が入って当然です。もっとしっかり見ておけばよかった!
> で、あの映画が公開されて半年たつかたたないうちにドイツによるポーランド侵攻があって第二次世界大戦が始まるわけですから、人間ってバカですね。ほんと、バカですね。
政治家は映画を観る心の余裕を持った方がいいかもしれません…。
この映画を観て、それでも戦争したがるやつは人間じゃあないかも。
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