忘却エンドロール

素敵映画に出会えた時の感動をそのまま書き綴る、映画感想ブログ.

映画「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」観ました

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
読み:ものすごくうるさくてありえないほどちかい
原題:EXTREMELY LOUD & INCREDIBLY CLOSE
製作:アメリカ’2011 129分
監督:スティーヴン・ダルドリー
原作:ジョナサン・サフラン・フォア
ジャンル:★ドラマ

【あらすじ】9.11アメリカ同時多発テロで最愛の父を失った少年、オスカーは、父の遺品の中から一本の鍵を見つける。それが入っていた封筒には“ブラック”の文字があり、オスカーはそれが父からのメッセージだと確信。NY中のブラック氏をしらみつぶしに訪ねはじめ…。

久々に心臓に負荷のかかる作品でした…(と言っても観たのは2週間くらい前ですが)。感動しつつも、9.11の日の言葉にならないような衝撃に胸が苦しくなります。とくにあの6番目のメッセージが…。私でもああなりそうだし(電話恐怖症なので)、もしあんなことになったらもう何も考えないように目を閉じて耳をふさいで口も閉ざしてしまうかも。
オスカーが「パパとの8分間を永遠に伸ばせるかもしれない」とパパの鍵に合う鍵穴を探す冒険の旅は、繊細で痛くて温かかったです。
向いのマンションに住んでいる祖母と夜中にトランシーバーで連絡し合ったり、472人のブラックさんとの出会いを大切にし、母親に八つ当たりし、祖母の家の間借り人にぜんぶ秘密をぶちまけようとするところも、寂しさや苦しさが彼の心の中でせめぎ合っているんだろうなというのが伝わってきました。
普段は字幕版の方が好きなんですが、この作品は彼が感情のままに早口でまくし立てるシーンがあるので、吹き替え版のオンエアで良かったです。

終盤明かされる真実は感動的で、苦しみを乗り越えようとあがいていたのが自分だけではないとわかり、お互いにこれまでのことや、出会った人たちのことを語り合う姿がよかった。
タイトルの「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」の意味は曖昧で、たぶん見る人によって色んな解釈があるんだろうけど、わたしには、うるさかったのは自分のなかで響く恐怖や自責の声で、ありえないほど近いのは同じように苦しんでいる人々に目を向けたことで、哀しみそのものは消えないけれど、その声がいつしか遠くになっていったという”解決法も自分の中にあった”ということだと思いました。

原作ではオスカーは空想の中で数々の発明をしていて、そのなかにタイトルの言葉が二つとも含まれたエピソードが登場するそうです。要約すると、渡り鳥がツインタワーの窓にぶつかって死ぬのを防ぐため、ありえないほど近くなった鳥を感知し、別のビルからものすごくうるさい鳴き声を出して鳥を引き付ける装置を発明したというもの。鳥はピンボールのようにツインタワーの間を行き来し、ニューヨークから離れていかなくなることに対し、オスカーは「それはいいね」と言っています。
ツインタワーは死や恐怖の象徴で、そこに突っ込んでいく鳥は父親と、死を意識するオスカー自身を表しているのかも?と思ったりしたものの、タイトルはニュアンスが伝わればいいや、くらいの気持ちでつけたんじゃなかろうかという結論に至りました。私の中で。
父親がオスカーに見つけてほしかった「第6区」も、きっとオスカーが自分の殻を破って、周りの人たちが自分と同じように悩み、息苦しさを感じているんだと共感できるようになった時に見える世界のことなんだろうなぁ。本当に素晴らしいお父さんです。

あと、オスカーがつくった調査探検ノート「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」に描かれている、ビルへ跳び上がるパパの仕掛け絵が印象的。
ラストでは苦手を一つ克服し、父親の死も乗り越えて生きていこうという意志が伝わってきます。
また、戻ってきた夫に声をかけることなく、立ち去る途中で自分の荷物をひとつ廊下に置いていくお祖母ちゃんも素敵です。彼女もドレスデンの出来事から、ずっと引きずっているものがあっただろうなと想像させられました。

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「トラッシュ! -この街が輝く日まで-」観た
「リトル・ダンサー」観ました
「僕の大事なコレクション」観ました(同原作者)

■ Comment

こんばんは☆

最近、ちょっと前からかな?
最新記事のご案内にイラストがついて、とっても豪華ですネ!
記事の後の「関連記事」にもイラスト付いてて、とっても見やすいです☆

この映画は2年ちょっと前に見ました。
けっこう楽しみにしていたのですが、見ている最中は良かったんですけど、
終わってしまうとちょっと引っ掛かる部分があって、後で「事実ではなく小説が原作」と知り、腑に落ちました。

>終盤明かされる真実は感動的で、苦しみを乗り越えようとあがいていたのが自分だけではないとわかり、お互いにこれまでのことや、出会った人たちのことを語り合う姿がよかった。

そうでしたね。。。
鍵の事はよく覚えています。
お母さん、お祖母さん、間借り人の正体も、
イラストの坊や、本人よりカッコ良いですネ☆

「ここにドレスデンの空襲まで入れては滅茶苦茶なのでこれで良かったのでは? マックス・フォン・シドーさん いつまで働くのか?(笑)」
私が一番強く思ったことです。

宵乃さんにとって良い作品で、本当に良かったですネ!


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2016/11/15 20:33  miri〔編集

>miriさん

いらっしゃいませ!
サムネ付きの最新記事と関連記事は、公式のプラグインとブログ設定でできるようになったんですよ。にぎやかしにやってた読まれてる記事の一覧を更新するのが辛かったので、やっと解放されました(汗)

> 終わってしまうとちょっと引っ掛かる部分があって、後で「事実ではなく小説が原作」と知り、腑に落ちました。

確か「僕の大事なコレクション」も苦手でしたよね。原作者さんと合わないのかも?
母親が心配しながらも家で待つだけというのは気になりました。ニューヨークだし、時期的にも…。

> イラストの坊や、本人よりカッコ良いですネ☆

ありがとうございます。この子、すごく角度美人なので、よく見えるシーンを選びました(笑)
あと母親目線のシーンだったので。

> 「ここにドレスデンの空襲まで入れては滅茶苦茶なのでこれで良かったのでは? マックス・フォン・シドーさん いつまで働くのか?(笑)」

そうそう、原作が好きだと祖父母のエピソードが削られていることを不満に感じる方も多いみたいですが、映画はこれで良かったと思います。
シドーさんは生涯役者として頑張るタイプの方なんでしょうね~。
コメントありがとうございました。
2016/11/16 07:45  宵乃〔編集

No title

宵乃さんの感動が伝わる記事ですね。
僕は読んでないので、映画に無かった原作のエピソードも書かれていて興味深かったです。
タイトルの意味も色々と考えさせられる映画でしたよね。

>ビルへ跳び上がるパパの仕掛け絵

忘れてしまってます。
また観なおしたくなりました。
2016/11/16 10:13  十瑠

>十瑠さん

いらっしゃいませ、コメントありがとうございます。
本当に色々考えさせられるし、感じるものがありました。ボロ泣きです。

私もタイトルの意味が気になって色々調べたところ、原作の引用文を載せてるブログにたどり着きました。元の文はこんな感じです。

「春と秋の渡り鳥の季節、霧深い夜に鳥たちを混乱させないように塔を照らす明かりが消されるのですが、その結果、鳥たちはビルに飛びこむことになります」「毎年、一万羽が窓にぶつかって死ぬんだよ」と、ぼくはルースに、ツインタワーの窓について調べていたときにたまたま知ったことを伝えた。「けっこうな数の鳥だな」とミスター・ブラックが言った。「窓もけっこうな数よ」とルースが言った。ぼくはふたりに告げた、「そう、それでぼくは、ビルにありえないほど近くなった鳥を探知して、別の高層ビルからものすごくうるさい鳴き声を出して鳥を引きつける装置を発明したんだ。鳥はビルからビルにはねるんだよ」。「ピンボールみたいだな」とミスター・ブラックが言った。「ピンボールって何?」とぼくはたずねた。「でも鳥たちはけっしてマンハッタンを離れない」とルースが言った。「それはいいね」とぼくはルースに告げた、…

再見すると、また何か発見がありそうな作品ですよね。
2016/11/17 08:07  宵乃〔編集

2012年マイベスト5位

渡り鳥がビルに…その話は知らなかったので、なるほどと思いました。ありがとうございます!
再見するのには、多少、積極的にはなれないですが、その気になったら見たいものです。
2016/11/17 09:06  ボー編集

>ボーさん

いらっしゃいませ。
ボーさんの2012年マイベスト5位の作品でしたか。私も今年観た中では印象に残ってる作品です。
良い作品だけど、再見するには心の準備が必要になりますよね~。
2016/11/18 07:26  宵乃〔編集

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2019/11/16 21:33  

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2019/11/16 21:35  

Re: リンク違います

修正いたしました。教えて下さりありがとうございました!
2019/11/17 08:18  宵乃
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「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」
素晴らしい映画。半分以上は泣きながら観ていたと思う。
或る日の出来事|2016-11-17 08:56
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
(2011/スティーヴン・ダルドリー監督/トム・ハンクス、サンドラ・ブロック、トーマス・ホーン、マックス・フォン・シドー、ヴァイオラ・デイヴィス、ジェフリー・ライト、ゾー・コードウェル、ジョン・グッドマン/129分)
テアトル十瑠|2016-11-16 10:03
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