映画「白熱(1949)」を観ました
原題:WHITE HEAT
製作:アメリカ’49 114分
監督:ラオール・ウォルシュ
ジャンル:★犯罪/アクション
【あらすじ】凶悪なギャング団を率いるコーディ・ジャレットは、列車を襲撃し乗務員を殺して現金を強奪した。そして巧みな策略で強盗殺人の罪を逃れ、別の軽罪で刑務所に入るのだった。それを見抜いた捜査当局は、潜入捜査官ファロンをコーディの同房へ送り込み…。
<ネタバレあり>
面白かったです。やはり悪が魅力的な作品は、力強くて見応えありますね~。
マザコンな一味のボス・コーディと、そんな息子をしっかり支える母親コンビが最強!(笑)
人をバンバン殺して強盗から帰ってきた一味が、なんでおばさんに食事の用意をしてもらってるんだろう?人質?とか思ってたら、コーディを凶悪犯罪者に育て上げた諸悪の根源でびっくりしました。
「見つかれば全部しゃべっちまう」とか「連中に弱みを見せるとつけ込まれる」とか悪党の母親らしい助言の数々が頼もしいし、警察の追跡を撒くのもお手のもの。息子が刑務所で命を狙われれば「それ(出所する)まで生かしとく気?私が許さない。年はとってもそれぐらいできるさ」とか殺す気まんまんなんですよ。
息子が弱気になると「世界一になりなさい」と励ます一般的な母親らしさもあり、息子にとってもかけがえのない存在です。
それがあっけなく退場した時は「彼女のことだから生きているに違いない!」と思ってしまいました(汗)
一方、警察の方もやり手がそろっていて、母親が食料買い出しに来るのを待ちかまえ、駐車中に車に目印を付けておいたり、本部と主人公と追跡車両で連携を取って、発信機を取り付けた犯人の車の位置を割り出したりと頼もしい。
潜入捜査官であるファロンは、5年で8回も刑務所に入ってる苦労人なんですが、プロだけあって犯人の信頼を得る手口に唸らされます。あんなふうに命を救われ、弱ったところをかばわれた挙句に「俺はガキの頃からあんたに憧れてた。こんな姿を周りの連中に見せるな」とか言われたら信じたくもなりますよ。
そうやって信頼を得ながら、機転の良さで何度もピンチを切り抜け、粋な方法で警察と連絡を取り、コーディと行動をともにしながらじわじわと彼を追い詰めていきます。
華麗なアクションなんてなくても痺れました。
でもね~、”奥さん”のところに行きたいという主人公に対し、あんな悪党が「寂しいんだな。俺も同じだ。おふくろがすべてだった…」と柔らかな表情で心の内を語る姿を見ると…。すべてを知って「すっかり信用して弟のように思ってた」と自嘲気味に言うくだりも切ない!(涙)
凶悪犯罪を防ぐのにスパイ行為が効果的なのはわかるし、必要なことなんだろうけど。わずかに残った人間的な部分を踏みにじったりしたら、完全にモンスターと化してしまいそう。
裏切る方も、続けていたら人間としての心を失ってしまいそうですよね。
まあ、実際はここまで心を許すことなんて滅多にないのかもしれませんが。
終盤の戦いは、やはり悪党の滅びゆくさまが画になってました。
ジェームズ・キャグニーさんの迫真の演技が楽しめる傑作です。