忘却エンドロール

素敵映画に出会えた時の感動をそのまま書き綴る、映画感想ブログ.

映画「奇跡の人(1962)」観ました

奇跡の人(1962)
原題:THE MIRACLE WORKER
製作:アメリカ’62 106分
監督:アーサー・ペン
原作:ウィリアム・ギブソン
ジャンル:★ドラマ/伝記

【あらすじ】生後19ケ月で熱病に罹り、視力と聴力を失ったヘレン。両親の努力もむなしく、7歳になってもコミュニケーションを取ることは難しかった。そんな時、自身も盲目を克服した女教師アニー・サリヴァンが現れ、暗闇の中にいるヘレンを言葉という光で救い出そうとするが…。

とにかくヘレンの演技が素晴らしくて圧倒されました。本当に目が見えず耳が聞こえないかのような演技です。
そして、サリヴァン先生が食事のしつけを始めてからがさらにすごくて、『ヘレンVSサリヴァン』と題したくなるような壮絶なバトルを繰り広げてくれます(笑)
スプーンを握らせてはヘレンがそれを投げ捨て、すかさず次のスプーンを握らせ…のエンドレスのくだりは、ふたりとも髪を振り乱して本気で闘ってるよう。
激しい演技のぶつかり合いに、もはや『このふたりすげー』としか思えなくて、演技を演技として捉えてしまうのはある意味物語に入り込めてないような気もするけど、それでも目が離せないんですよね。”演技合戦”と”ヘレンとサリヴァンの根競べ”がいい具合に重なって、本気度が伝わってきてるんだと思います。

試行錯誤しながら少しづつ指文字を教えていくくだりもよかった。それが物の名前だということも、自身が求めていたものだということもわからず、ゲームとして覚えていくヘレンと、言葉が彼女に光を与えると信じて根気良く教え続けるサリヴァン先生。
一方両親は、不安や寂しさ、哀れみなどを抑え込みながら、じっと約束の日を待ちます。今まで色んな人に匙を投げられて、もうヘレンが自分たちと同じ人間だとは考えないように…とさえ思い始めていた彼ら(主に父と兄だけど)が、一縷の望みをかけて待っているからこそ、サリヴァン先生の努力を応援したくなります。
ヘレンの兄の心変わりの描写はあっさりしていたものの(弟と同じ名前だったくらいだし、原作ではもっと出番が多そうなのに)、突然やってきた”その時”の描写も感動的でした。
特別なきっかけがあったとかじゃなくて、本当にふいに目の前が開ける感じ。どうして今までわからなかったんだろうと頭の中がクリアになっていくような感覚って、誰でも一度は味わったことありますよね。
その感動に打ち震える瞬間を、パティ・デュークが見事に演じてくれました。
…彼女の演技が突出しすぎて他の人が霞んで見えるくらいでしたが(汗)

しかし、この作品で描いているのはヘレンが言葉を理解するまでなんですね。原題の意味は「奇跡をおこす人」=サリヴァン先生のことだから、ここまで十分ともいえるけど…。ヘレンが社会福祉に身を捧げていく後編とかあれば喜んで観たのに!

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■ Comment

No title

もう10年以上前に書いた記事TBしました。
個人的には☆五つの満点映画で、舞台とほぼ同じと思われるコンパクトなストーリーが良いですね。
ラストの感動が・・・!
仰るように後年のヘレンが社会福祉を行うストーリーも見たいですが、これはまた別の筋書きで作られるべきでしょうね。
2016/02/04 20:10  十瑠

>十瑠さん

コメント&TBありがとうございます♪
そうそう、舞台っぽい雰囲気がありましたよね。ストーリーはすでに知ってるのに、彼らの演技の迫力もあって見応え十分でした。ヘレンの世界が開けた瞬間が本当に感動的です!

> 仰るように後年のヘレンが社会福祉を行うストーリーも見たいですが、これはまた別の筋書きで作られるべきでしょうね。

そうですね~。ヘレンの自伝映画とかないんでしょうか…。
wikipediaを調べたら、ヘレンのお母さんの過激なエピソードがあって驚きました。映画じゃ、あんなに素晴らしい母親として描かれてたのに、婚約者にライフルを向けるなんて(汗)
2016/02/05 10:12  宵乃〔編集

昨日はコメントを有難うございました☆

素晴らしいイラストですネ~感激を新たにしています♪
そして記事内容が、本当に真直ぐ書かれていて、うんうんとずっと頷きっぱなしでした☆

この映画、ずっと前に企画にリクエストしようかな?と思ったこともあったのですが、なかなか難しい感じがして(内容は難しくないのですが、色々な意味で怖いのでね~)宵乃さんが鑑賞されて本当に嬉しいです!

>とにかくヘレンの演技が素晴らしくて圧倒されました。本当に目が見えず耳が聞こえないかのような演技です。

この女優さんというと「この作品」ですものね~まぁ助演なんですけど。
先生の方も主演でWオスカーですものね~凄いわ♪

>”演技合戦”と”ヘレンとサリヴァンの根競べ”がいい具合に重なって、本気度が伝わってきてるんだと思います。

大竹しのぶの舞台の時も、稽古時から凄かったようですが、きっとこの作品が全ての元になったのでしょうね~?

>突然やってきた”その時”の描写も感動的でした。

映画を見ていて良かったと思える瞬間、ですよね~!

>ヘレンが社会福祉に身を捧げていく後編とかあれば喜んで観たのに!

この作品はこれで終わりで良いと思います。 ヘレン・ケラーのその後の話は、何と言うか、申し訳ないけど、代わりになる作品もありそうで・・・笑・・・もし今後作られれば是非見たいとは思いますが、やはり「奇跡の人」は、この作品で、という感じです☆

実は昨日、同じ監督作品を見たのですよ~! もちろん宵乃さんはもっと前に鑑賞されたのでしょうけど、アップされて本当にビックリしました、嬉しかったです(ミズーリ・ブレイク)。


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2016/02/05 14:40  miri〔編集

>miriさん

> 素晴らしいイラストですネ~感激を新たにしています♪
> そして記事内容が、本当に真直ぐ書かれていて、うんうんとずっと頷きっぱなしでした☆

ありがとうございます。
結構ストレートに感動させてくれる作品だったので、感想も書きやすかったです。観る前は、名作な上に「奇跡の人」というタイトルで若干身構えてたんですけど、ぜんぜんそんなことなくて観やすかった♪
きっと企画で観ていたら、みんな素直に感動して盛り上がっていたと思いますよ。
Wオスカーも納得の演技に、実話のすごみ、演出の上手さなど、本当に名作でした。

> 大竹しのぶの舞台の時も、稽古時から凄かったようですが、きっとこの作品が全ての元になったのでしょうね~?

おぉ~、この作品の影響は世界中にということですね。
大竹しのぶさんも、きっとヘレンの世界が開けたあの瞬間を観て、映画や俳優の素晴らしさを再確認したことでしょう。

> もし今後作られれば是非見たいとは思いますが、やはり「奇跡の人」は、この作品で、という感じです☆

十瑠さんに教えてもらったサイトで、ヘレンのその後を紹介した文章を読み、さらにサリヴァン先生こそが奇跡の人だったと思えました。物語とかではなく、ただの紹介文なのに朝から泣けてしまって。(ヘレン・ケラーについては中学?の英語の教科書で読んだだけで、ざっくりしか知らなかったんです。タイトルと表紙は子供の頃から何度も目にしていたけど…)
ヘレンの偉業が輝かしいほどサリヴァン先生のやったことの素晴らしさがわかるし、半生どころか20代から死ぬまでヘレンを支えてきたことすべてが「奇跡の人」と呼ばれるゆえんだと思うので、なんであれで終わりなんだろうという思いが強くなってます(汗)
でも、探したけど見つからないんですよね~。3時間くらいの大作があってもいいのに!

> 実は昨日、同じ監督作品を見たのですよ~! もちろん宵乃さんはもっと前に鑑賞されたのでしょうけど、アップされて本当にビックリしました、嬉しかったです(ミズーリ・ブレイク)。

そういう偶然って嬉しくなりますよね。「ミズーリ・ブレイク」ですか。最近、西部劇をたくさんご覧になってるのかな。
この監督は作品数が少ないし、監督名で観ようと思うこともないので、タイミングが合う確率はかなり低かったと思います!
2016/02/06 11:50  宵乃〔編集
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奇跡の人
(1962/アーサー・ペン監督/アン・バンクロフト=アニー・サリヴァン、パティ・デューク=ヘレン・ケラー、ヴィクター・ジョリイ、インガー・スヴェンソン、ビア・リチャーズ)
テアトル十瑠|2016-02-04 20:00
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