忘却エンドロール

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映画「殺人カメラ」観た

 | コメディ  com(4) 
Tag:イタリア 

殺人カメラ
原題:LA MACCHINA AMMAZZA CATTIVI
製作:イタリア’48 83分
監督:ロベルト・ロッセリーニ
原作:エドゥアルド・デ・フィリッポ、ファブリッツィオ・サランザーニ
ジャンル:コメディ

【あらすじ】イタリア南部アマルフィ海岸の小さな漁村は、網元や流通業者、高利貸し、村長らによって牛耳られていた。気立てのいい写真屋のチェレスチーノは、老人に親切にしたところ”写した相手を殺す秘術”を授けられてしまう。恐れおののきながらも、老人が聖アンドレアだったと思うようになる彼だったが…。

<ややネタバレあり!>
イタリア・ネオリアリズムにそぐわないB級感あふれるタイトルが気になったので観てみました。…うん、これ「DEATH NOTE」だわ(笑)
もちろんストーリーは全然違うんですけど、人を殺せるアイテムを怪しい爺さんにもらって、最終的に独断で処刑を始めてしまう主人公というところがデスノートでした。
ルールとしては、1・標的の姿を写し取れれば被写体は写真でもよい。2・一部分でも映っていれば死ななくても呪いの影響が現れる。3・標的は写真に写ったポーズのまま死亡。
この3番目のルールがコメディ要素になってて、突然変なポーズで動かなくなったり、固まって戻らないから棺おけを特注したというくだりは不謹慎ながら笑ってしまいました。
ただ、主人公が暴走するまでがダラダラしていて盛り上がらないし、サスペンス要素はほぼ無くて、最後までゆるゆるです。肝試し企画とかで観てたら退屈してたでしょうね~。

しかし、今回はネオリアリズム作品を見る企画。どこがどうネオリアリズムなのか考えながら観ることができました。
舞台となる貧しい漁村には、主人公と同じく多くの貧しい人々と、それを仕切って搾取する一部の裕福層がいます。この金持ち連中が自分のことばかり考えている奴らばかりだし、不満を抱える貧しい人々もチャンスさえあれば他人を出し抜きたいと思っている。悪人が一人減っても、別の人間に取って代わるだけ。
じゃあどうするかというと、悪人と一緒に生きていくしかないという超現実的な結論に。物語としては「チャンチャン♪」と聞こえてきそうな顛末になってますが、教訓は得られるから寓話としてはOK。つまるところ善も悪も極端はダメってことですね。悪魔は誰の心にも忍び寄るものだから、こつこつ善行を積み、良く考えて行動しなさいという教訓でした。
いかにも寓話の世界というオープニングや、十字の切り方を教えるくだりもよかったです。

ちなみに、原題の意味は直訳で「悪人を殺す機械」かな。邦題だと無差別っぽいですね。
正直、退屈してる時間も長かったけど、ロッセリーニの珍しいブラックユーモアは一見の価値ありだと思います。

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「あゝ結婚」観ました(エドゥアルド・デ・フィリッポ原作)

■ Comment

No title

宵乃さん こんばんは
次の作品はこれが観たいなー。と思っていたので
びっくりしました。

ネタバレを読まないようガマン、ガマンです。
2016/01/09 18:45  きみやす

>きみやすさん

お、きみやすさんもこちらを見る予定なんですね!
「ドイツ零年」の後だと、とても癒されると思います(笑)
感想楽しみにしてますね~。
2016/01/10 08:02  宵乃〔編集

こんにちは、この映画を見ました☆

明日アップします。

宵乃さんのこの企画のときの記事をチラッと見てからずっと見たかった作品で、見られて嬉しかったです☆

イラスト良いですね~!
見終わってこのイラストを見ると、この主人公の心境まで伝わってきます☆

>…うん、これ「DEATH NOTE」だわ(笑)

自分も手にしたら、と考えてしまいました(笑)。

>3・標的は写真に写ったポーズのまま死亡。
>この3番目のルールがコメディ要素になってて・・・くだりは不謹慎ながら笑ってしまいました。

笑いましたよね~でも、試しにロバさんを殺したのはちょっと許せなかったです・・・まあ、人間で確かめるわけにはいかなかったんでしょうけど・・・。

>ただ、主人公が暴走するまでがダラダラしていて盛り上がらないし・・・退屈してたでしょうね~。

眠くなった時もありました(笑)。

>超現実的な結論に。物語としては「チャンチャン♪」と聞こえてきそうな顛末になってますが、教訓は得られるから寓話としてはOK。

私も「ちゃんちゃん」と思いました(笑)。

>つまるところ善も悪も極端はダメってことですね。・・・十字の切り方を教えるくだりもよかったです。

夢のような始まり方で、この監督には珍しいと思いました。
宵乃さんの書かれた通りですね。

>ちなみに、原題の意味は直訳で「悪人を殺す機械」かな。邦題だと無差別っぽいですね。

あ、そうなんですか、直訳の方が分かりやすいですね・・・
ホントに邦題は無差別っぽいです。

>正直、退屈してる時間も長かったけど、ロッセリーニの珍しいブラックユーモアは一見の価値ありだと思います。

おっしゃる通りでした!

ところで、ヴィスコンテイ監督の「揺れる大地」も今月中に見ますが
記事を書かれてずいぶん時間が経っているのですが
宵乃さん、その映画の事、覚えていらっしゃいますでしょうか?
失礼なこと聞いてすみません・・・。


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2021/07/12 16:34  miri編集

>miriさん

いらっしゃいませ、コメントありがとうございます!
記事のこと、覚えていてくださって嬉しいです。私自身が忘れてたのに(笑)

> 見終わってこのイラストを見ると、この主人公の心境まで伝わってきます☆

嬉しいです。私もなんとなぁく主人公の雰囲気は思い出せそうな感じです。
ロバさんを実験台にしてしまったエピソードはすっかり忘れてましたね。せめて害獣とか害虫みたいな日常でも殺す可能性のある対象を選べなかったんだろうか…。

> 眠くなった時もありました(笑)。
> 私も「ちゃんちゃん」と思いました(笑)。

miriさんも同じように感じられましたか。ネオリアリズム作品なのに、なんだかゆる~い感じでしたよね。監督さんはいつもと違うことに挑戦したかったのかな?
邦題はまるでホラー映画みたいなので、実際に見始めてギャップに驚いた覚えがあります。

> ところで、ヴィスコンテイ監督の「揺れる大地」も今月中に見ます

シチリアの貧しい漁師一家のお話ですよね。今作ってるゲームのテーマが”釣りと猫”で、釣れる魚を決める際に「あの映画でイワシを獲ってたんだっけか?」と思い出してたところです。割と大まかな内容は覚えているし、少なくとも「殺人カメラ」よりかはまともな話ができるかと思います(笑)
2021/07/13 14:02  宵乃
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