忘却エンドロール

素敵映画に出会えた時の感動をそのまま書き綴る、映画感想ブログ.

映画「アメリカン・ビューティー」観た

 | 家族  com(8) 

アメリカン・ビューティー(1999)
原題:AMERICAN BEAUTY
製作:アメリカ’99
監督:サム・メンデス
ジャンル:★ドラマ/ブラックコメディ

【あらすじ】妻キャロリンと高校生の娘ジェーンと平凡な毎日を送っていたレスター。だがある日、勤めていた広告代理店からリストラ宣告を受ける。自暴自棄になりかけていたところ、娘の友人アンジェラを一目見て、すべてがバラ色に。一方で、彼らの歯車は少しづつ狂い始め…。

初見時は、よくわからない悲惨な映画だなぁと思ったこの作品。再見したら、思いがけずしみじみと感動してしまいました。
確かに悲惨であることには違いないものの、ラストは初見時と違って悲壮感をまるで感じなかったんですよ。家族にしてみたら、たまったもんじゃありませんが。
この作品の言いたかったことって結局、リッキーが言っていたこと…「全てのものの背後には生命と慈愛の力があって、何も恐れることはない」つまり裏返すと「世界の美しさ、愛(神の存在)に気付けない人は不幸だ」ということなんだと思います。(神抜きで言うなら「人生を愛せるかどうか」に近いかな?)

冒頭から描かれるのは”ハッピーじゃないけど、とくべつ不幸でもない”という”ありふれた日常”で、それでも彼らは「なんで自分は幸せになれないんだろう」と思っている様子。そしてそれを、身近な誰かのせいだと思ってるんですよね。
レスターは妻と娘が変わってしまったと思っているし、奥さんは甲斐性なしの夫のせいで成功できないと思い、娘は自分に関心を持たない両親を憎んでいる。
どれもあながち間違ってはいないものの、自分から積極的に改善しようともしません。それよりも、別の何かで埋める方が簡単とばかりに(周りに目を向けることは大切ですね)、レスターは女子高生に恋い焦がれ、妻は不倫に走り、娘は自分を見つめてくれるリッキーに興味を…。

中盤になるともう”ありふれた日常”とは言えなくなってきて、時には痛々しいくらい滑稽に、時にはヒヤリと恐ろしくなるほどに、偽りのなかで孤独に苛まれている人々が描かれています。
とくにリッキーの家族はインパクトあって、鬱状態の母親はかろうじて家事はできるものの、いつも心ここにあらずの無表情。こんな生きる屍状態を放置しているというだけで、父親の抱える闇の深さが伝わってきました。

そんな中、ジェーンとリッキーの心が触れ合い、あの台詞が出るんですね。
そしてレスターの方も、唐突にそれを見つけます。
アンジェラの「初めてなの」という告白で、憑き物がおちたかのように彼女への欲望を失ったレスター。それはきっと、彼女の中に無垢な子供と同じような神聖性を見たからでしょう。それが幼い頃の娘に自然と抱いていただろう「幸せになってほしい」という父親としての気持ちを呼び起こしたんだと思います。
アンジェラが傷ついていることを理解し、やさしく抱きしめ彼女を肯定する(あのおじさんもこれを求めていたんだろうなぁ…)。アンジェラを通してジェーンを理解し、父親としての自分を取り戻した彼にとって、もう世界は孤独でも苦痛でもありません。
いるだけで幸せだと思える相手がいることが、どんなに幸福なことか。その幸福をしみじみ実感しながら家族写真を眺める姿に、思わず涙が…。
他人から見て悲惨なラストでも、彼にとってはハッピーエンドだったのではないかとすら思えてきました。

ちなみに、タイトルは原題と同じ「アメリカン・ビューティー」。キャロリンが育てている真っ赤なバラの品種名であり、レスターがアンジェラに抱くイメージであり、その名の通り「アメリカの美しさ」という意味を持つ皮肉めいたタイトルです。
そんな虚栄美を象徴するかのような赤いバラと、レスターの体から流れて落ちる真っ赤な血。その背後にも、生命と慈愛の力が存在していたのでしょうか。
穏やかな表情を浮かべるレスターを見て、笑みを浮かべるリッキーが印象的でした。

■ Comment

No title

こんばんは。
アンジェラのあの台詞で本当に憑き物がおちて、男から父親に戻るシーンが好きです。

一番真っ当なことを口にするのはヤクの売人の彼氏というのが
『アメリカン・ビューティー』というタイトルの皮肉さも感じます。
2015/12/04 (Fri) 20:50  きみやす  

No title

こんばんは。

観たのは、多分前世期のことなので、細かい内容は忘れていますが、忘れているということよりも、そもそもよく分からなかったというのが、正直なところです。

今でも思い出す感想は、アメリカ人も?病んでいる人ばっかりだな~ということです。

アメリカの美しさとは裏腹に、なんて哀しい人ばっかりなんだと。

日本人からすると考えられないような大きな家、庭もでっかい、アメ車を入れるガレージもでかい、物質的には豊なのに、心は寂しい人の話だったな~と、そんな風に覚えています(^_^;)
2015/12/04 (Fri) 21:22  バニーマン  

>きみやすさん

> アンジェラのあの台詞で本当に憑き物がおちて、男から父親に戻るシーンが好きです。

ホント、いいですよね!
ここでぶわぁっと感動してしまって、再見する前はまさかこれを観て泣くとは思ってなかったので驚きました。アンジェラが彼を選んだのも、たまたま近くにいたからだけじゃなくて、こういう根っこの部分の父性を敏感に感じ取っていたのかも。

> 一番真っ当なことを口にするのはヤクの売人の彼氏というのが
> 『アメリカン・ビューティー』というタイトルの皮肉さも感じます。

登場時はかなり不気味で、こんな役だとは思わないですよね。彼が目を潤ませながら”一番うつくしい作品”について語るくだりと、お母さんとのお別れのシーンもよかったです。
「アメリカン・ビューティ」はいかにも彼がつけそうなタイトルで、監督の分身のような存在にも見えました。

コメントありがとうございました♪
2015/12/05 (Sat) 13:14  宵乃〔編集〕  

>バニーマンさん

いらっしゃいませ!
私もたぶん初見はバニーマンさんと同じ頃だと思います。その時の感想は、まさに”良く分からない病んでる作品”という感じで(汗)

> アメリカの美しさとは裏腹に、なんて哀しい人ばっかりなんだと。

ラストもあんなですし、普通だったら気が滅入る作品ですよね…。
かろうじて若いカップルが幸せ掴めそうだったけど、あの後どうなったんだろう?

> 日本人からすると考えられないような大きな家、庭もでっかい、アメ車を入れるガレージもでかい、物質的には豊なのに、心は寂しい人の話だったな~と、そんな風に覚えています(^_^;)

アメリカの白人社会の縮図でしたよね。あれだけ豊かでまだ成功を夢見ている奥さんとか、少し怖いくらい貪欲です。
でも、それがくどいくらいに描かれているから、最後の最後でレスターの心が満たされるところには感動しました。描きたかったのは、ここなんだな、と。
なんとなく再見してみたけれど、気まぐれ起こしてよかった~と心底思いました(笑)
バニーマンさんも、機会があればぜひ♪
2015/12/05 (Sat) 13:28  宵乃〔編集〕  

こんばんわ

ワタシも再見です♪
やっぱりよく分かんなかったんですけど、ラストの主人公の笑みを浮かべる
ところを見て、幸せを実感しながらで良かったなって思いました。
もし1年前に訪れていたら笑みは無かったですもんね。

ぴちぴちのティーンエイジャー2人が眩しかったです~(^^)
2015/12/08 (Tue) 20:39  mia☆mia  

>mia☆miaさん

いらっしゃいませ!
この作品は不思議と再見させる力がありますよね〜。

> ラストの主人公の笑みを浮かべる ところを見て、幸せを実感しながらで良かったなって思いました。もし1年前に訪れていたら笑みは無かったですもんね。

ホント、このタイミングだったのは不幸中の幸いでした。
わかりにくくても何か感じるものがあるというか、気になる作品に仕上がっているところがミソなのかも。さすがアカデミー賞受賞作品!

> ぴちぴちのティーンエイジャー2人が眩しかったです~(^^)

ですね。最初は不健康そうと思ってしまったけど、ほっぺのプニプニ感とか大人を見る目つきとか、ティーンだなぁ若いなぁと思いながら見てました(笑)
2015/12/08 (Tue) 21:23  宵乃〔編集〕  

この映画を見ました☆

有名な作品で見たかったんですが今まで機会がなく、
やっとオンエアがあったので見ました☆
内容を全然知らなかったので、非常に楽しめました。

>再見したら、思いがけずしみじみと感動してしまいました。
>確かに悲惨であることには違いないものの、ラストは初見時と違って悲壮感をまるで感じなかったんですよ。

以下、宵乃さんのご感想は、とてもまっすぐで頷く事が多かったです。

私は悲壮感は全く感じませんでした。
しみじみと感動、まではいかなかったけど、
非常に出来の良い作品で、役者も全員うまいし、脚本が良いのだと思います。

>とくにリッキーの家族はインパクトあって、鬱状態の母親はかろうじて家事はできるものの、いつも心ここにあらずの無表情。こんな生きる屍状態を放置しているというだけで、父親の抱える闇の深さが伝わってきました。

私が一番注目したのは、あのリッキーの母親です。
両親の事を少しだけ理解していた彼が「お父さんを頼む」と言って
出ていく宣言を、あのように受け止められたので、
彼女は実際は宵乃さんの書かれたような人物とは思えなかったです。
このラストシーン後を考えると、私的には、彼女が「大活躍」すると思えるのです(笑)。 

>アンジェラの「初めてなの」という告白で、憑き物がおちたかのように彼女への欲望を失ったレスター。それはきっと、彼女の中に無垢な子供と同じような神聖性を見たからでしょう。それが幼い頃の娘に自然と抱いていただろう「幸せになってほしい」という父親としての気持ちを呼び起こしたんだと思います。

まぁそうだとは思うのですが、ココが多分皆さんと違うところで
ジェーンを幼少時と変わらずにずっと毎日普通に愛していれば、
反抗期があったとしても、アンジェラなどいなくても
自分がどれほど幸せな父親なのかが分かるはずなのでね・・・
妻とは仕方ないけど、子供はね、やっぱ許せないです(笑)。

上記2件以外は、宵乃さんの仰る通りだと思います☆
やっと見られて嬉しかったです!

イラストが印象的で記事を覚えていたのですが、
この場面か~!と、大感激しました♪
この作品で一番良いシーンですネ!


.
2016/02/28 (Sun) 10:06  miri〔編集〕  

>miriさん

お~、こちらをご覧になったんですね!
再見してえらく気に入ってしまい、miriさんにも観てほしいなぁと思っていた作品です。
楽しんで頂けてわたしも嬉しいです♪

> 私は悲壮感は全く感じませんでした。
> しみじみと感動、まではいかなかったけど、
> 非常に出来の良い作品で、役者も全員うまいし、脚本が良いのだと思います。

本当に良く出来た作品で、アカデミー賞も納得でした。
初見時はそれがぜんぜんわからなかったんですよ~。劇場で観なくてよかったと思ったくらいで(当時理解できなかったんだから正解でしたが 汗)

> 両親の事を少しだけ理解していた彼が「お父さんを頼む」と言って
> 出ていく宣言を、あのように受け止められたので、

このシーンはとても印象的でしたよね。miriさんと全く同じようには受け止められなかったけれど、確かに彼女の中には母親としての強さというか、しなやかさは残っていたと思います。あれから変わっていく予感もあって、でもそれは必要とされることで鬱状態から回復するのかなと。

> ジェーンを幼少時と変わらずにずっと毎日普通に愛していれば、
> 反抗期があったとしても、アンジェラなどいなくても
> 自分がどれほど幸せな父親なのかが分かるはずなのでね・・・
> 妻とは仕方ないけど、子供はね、やっぱ許せないです(笑)。

あはは、確かにダメな父親であることには変わらないですよね~。たぶん「自分もこういう部分があるかも…」と思ってしまうと、彼を否定し続けるのが難しくなるんだと思います。私もそんな感じでした(汗)

> イラストが印象的で記事を覚えていたのですが、
> この場面か~!と、大感激しました♪
> この作品で一番良いシーンですネ!

覚えていて下さって嬉しいです!
もう涙ボロボロのシーンでした。ケヴィン・スペイシーのファンになりそうです。
コメントありがとうございました♪

**********
鍵コメの方もありがとうございます。
相変わらず目ざといですね~、気付くのが早くて驚きましたよ(汗)
企画自体は続けていくのでご安心下さい。ただ、今までのやり方だと私にも皆さんにもプレッシャーになってるかな?と思ったので、やり方を変えようかと。
私からリクエストは募集せず、絶対に続けるのは季節ものの4企画だけにして、後は要望があった時だけにしようかなと思ってます。なのでとりあえずメールフォームは閉じました。リニューアルしてまた開くかもしれないけど、コメント欄でも用は足りますし。
まあ、まだ時間はあるのでゆっくり考えて、年末には告知記事で発表しようと思います!
2016/02/28 (Sun) 12:08  宵乃〔編集〕  
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