映画「青春群像」観ました

原題:I VITELLONI
製作:イタリア・フランス’53
監督:フェデリコ・フェリーニ
ジャンル:★青春/ドラマ
【あらすじ】アドリア海沿岸のとある町。美人コンテストで優勝したサンドラは、突然の不調で遊び人ファウストの子を身篭ったと確信した。彼の厳格な父親のおかげで、めでたくふたりは結婚。だが、間もなくファウストの浮気の虫が騒ぎ出す。それを心配そうに見守るサンドラの兄モラルドだったが…。
邦題どおりの内容で、話の中心にもなってるファウストはクズ野郎なんだけども、なんだか目が離せなかったし最後はホロリときました。
色々と印象に残るシーンもあって、とくに故郷を去るモラルドの目に浮かぶ、友人たちの眠るベッドが次々と過ぎ去っていく光景は良かったです。どうしようもないところもあるけど、やっぱり自分を形作ったものはすべてここにあるんだ…という感じで。
あとは、天使像を預けられた浮浪者?が、それを海岸に立ててにっこり微笑むシーンとか、モラルドが駅で働く少年と語らうとこ、レオポルドが老俳優にからかわれたり、労働者を馬鹿にして追いかけられるくだりなども印象に残ってます。赤ちゃんも可愛かったし。
それに、浮気症のファウストの心理が意外とわかりやすく描かれてて、浮気してしまう理由ってこういうことなのか~と納得できました(誰もが彼と同じ理由とは限らないし、納得できたからといって許せるわけじゃないけど)
とりあえず彼の場合は、結婚してから家庭のことでも仕事のことでも惨めで満たされない状態にあって、代わりに別の何かで満たそうとした時、彼にとって一番手っ取り早いのが浮気だったということなんでしょうね。女好きというだけじゃなく、女性に評価されることで満足できる、みたいな。
失敗を盗みや嘘で取り繕うとするのも、彼にとって他人の評価が大きく、評価してもらえるなら中身がともなってなくても構わないという事だと思うし、中身がともなってないから自信が持てず、他人の評価を気にしてしまうという負のスパイラルはわからないでもないです。
後半はしみじみ「こいつクズだなぁ」と思いつつ、彼を突き放せないモラルドの気持ちもわかる気がしました。
浮気癖はそう簡単には治りそうもないけど、「次は私がぶん殴る」と宣言したサンドラと「それでいいんだ」と嬉しそうに笑うファウストを見たら、そんな心配は必要ないようで(笑)
ふたりとも社交的だし、小さな民宿でも始めればいいんじゃないでしょうか。美人のお客に見惚れるファウストに、3倍くらい横に大きくなったサンドラが「何よそ見してるのよ!」バシーン!!みたいな未来を想像したら楽しかったです♪
ちなみに、原題は”雄牛、乳離れしない仔牛”のことで「のらくら青年」を表すリミニ(フェリーニの故郷)の方言なんだとか。
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■ Comment
細かいイラストで・・・体調はすっかり宜しそうですね?
まぁ、なるべくのんびりやりましょう!
この映画、2年ちょっと前にザ・シネマで見たのですが、良くなかった印象が強くて(笑) 今回のBS3のオンエアはとりあえず録画して、宵乃さんが記事書かれたら再見しても良いな~と思っていました(笑)。 ドンピシャリ☆
映画の内容は、自分の感想文読んでも、宵乃さんの記事読んでも、いまいち思い出せないです・・・。
>代わりに別の何かで満たそうとした時、彼にとって一番手っ取り早いのが浮気だったということなんでしょうね。女好きというだけじゃなく、女性に評価されることで満足できる、みたいな。
浮気以外でも軽犯罪系の理由の多くがきっとこういう事なのでしょうね~?(笑)
>美人のお客に見惚れるファウストに、3倍くらい横に大きくなったサンドラが「何よそ見してるのよ!」バシーン!!みたいな未来を想像したら楽しかったです♪
ほほほほほ・・・
自分の感想には「あぁいうのは治らない」と暗くしか書いていないので、宵乃さんの明るい表現がとっても良いと思います♪
>ちなみに、原題は”雄牛、乳離れしない仔牛”のことで「のらくら青年」を表すリミニ(フェリーニの故郷)の方言なんだとか。
いつも勉強になります! ありがとう☆
では、今月中に再見して、またお邪魔させて頂きますね~!
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2015/11/08 18:55 miri〔
編集〕
フェリーニの映画では「甘い生活」けっこう好きです。惹句を見たときには「わけのわからん退屈な芸術映画なんだろうなあ」と思ってましたが、実際に見たら「わけのわからん芸術映画だけど妙に面白い」作品で。
この映画も見たいけれど、これ以上DVDを買うと押入れが(^^;)
あ、それと1936年版「雪之丞変化」見たであります。感想はこちら。伏見直江さん演じる悪女のお初がかわいい! http://crfragment.blog81.fc2.com/blog-entry-2723.html
YOUTUBEの音源がアレなので、もし見るとしたら無理せずイヤホンを使ったほうがいいですね。
2015/11/08 21:25 ポール・ブリッツ〔
編集〕
いらっしゃいませ!
イラストは張り切りすぎましたかね。ちょっと疲れて、今日は昼寝してました(笑)
> 宵乃さんが記事書かれたら再見しても良いな~と思っていました(笑)。 ドンピシャリ☆
おぉ、さすが。お見通し!
索引にリンクが張ってなかったから、あんまりよくなかったんだろうなぁとは思ってました。
> 浮気以外でも軽犯罪系の理由の多くがきっとこういう事なのでしょうね~?(笑)
あとは依存症とか。こういう時、趣味など何かしら打ち込める物があるというのは大切ですね。
> 自分の感想には「あぁいうのは治らない」と暗くしか書いていないので、宵乃さんの明るい表現がとっても良いと思います♪
いつもなら私もネガティブに捉えそうですが、終盤の彼を見たら奥さんの中に母親も見つけたようにみえて、もう大丈夫だと思えました。
お父さんは悪い人じゃなかったけど、父親の期待に応えられなくても”変わらない母親の愛情”があればあそこまで自信喪失してなかったでしょうし。(母親を早くに亡くした?)
きっとこれからは、奥さんの気を引くために女の人にちょっかい出すことはあっても、陰で浮気ということはないと思います♪
いらっしゃいませ!
「甘い生活」はけっこう前に一度観てます。結婚が男をダメにすると信じてる男の話ですよね?
あまり女性が見て楽しい作品ではなかったような(汗)
「わけのわからん芸術映画だけど妙に面白い」といえば、「フェリーニのローマ」がまっさきに思い浮かびます。法皇さまのファッションショーが最高でした♪
> この映画も見たいけれど、これ以上DVDを買うと押入れが(^^;)
いつもの図書館でリクエストとか受け付けてないんでしょうか?
いつか観られるといいですね。
あと、さっそく「雪之丞変化」をご覧になりましたか。わたしも明日中には見たいと思います!
記事の方には鑑賞後に伺いますね~。
そういう映画でしたっけ? 「甘い生活」って。
知的だけどモラルがちょっと変な男が、それに輪をかけてモラルが変な人間たちと変なやりとりをするブラック・コメディとして見てましたが。
ネオレアリズモではロッセリーニの「無防備都市」のシナリオにかかわり、あの「道」を撮ったフェリーニが、作中で主人公が新聞記者から「ネオレアリズモは死んだと思われますか?」とインタビューされるという自虐的なブラック・ジョークを飛ばしているくらいですから、あの作品の大半は、シリアスなシーンも含めて、監督の「ギャグ」ではないかと考えるであります。腐った魚が打ち上げられて終わりというラストシーンなんか、「投げっぱなしギャグ」としか思えないですし。
……わたしがひねくれてるだけかな(^^;A)
2015/11/09 21:30 ポール・ブリッツ〔
編集〕
> 知的だけどモラルがちょっと変な男が、それに輪をかけてモラルが変な人間たちと変なやりとりをするブラック・コメディとして見てましたが。
う~ん、20代の頃に観たきりで、なんとなくしか覚えてないんですよ。
前は観た映画のあらすじだけ記録していて、それに「しがないゴシップ記者のマルチェロ。婚約者エンマは彼との穏やかな生活を望むが、彼は”結婚は男を駄目にする”と信じていた。」としか書いてなかったり(汗)
それに彼の作品は「青春群像」と「フェリーニのローマ」以外で好きなものもないし…。どちらかというと苦手な監督なんです。
> 「ネオレアリズモは死んだと思われますか?」とインタビューされるという自虐的なブラック・ジョーク
監督の背景を知ってる人にしか通じないジョークですよね(汗)
そういうのを覚えるのが苦手なので、映画はその作品だけでわかるようにするか、パロディ映画のように予備知識が必要だとわかりやすくしてほしいなぁ…。
再見する時はそれを念頭に観たいと思います。教えて下さってありがとうございました!
終盤を書きなおしたので、2件削除お願いします☆
早速、再見しました☆
初見は一昨年8月、評価は「〇」、主演はモラルドって書いてありました。
>とくに故郷を去るモラルドの目に浮かぶ、友人たちの眠るベッドが次々と過ぎ去っていく光景は良かったです。どうしようもないところもあるけど、やっぱり自分を形作ったものはすべてここにあるんだ…という感じで。
そういうふうにも思えなくもないですネ~。
>あとは、天使像を預けられた浮浪者?が、それを海岸に立ててにっこり微笑むシーンとか、
あれってこのヒトの後年の「カサノバ」に、ふくらまかしてアップしてあります・・・このヒトって自分大好き人間だから、あちこちの作品でそういうのをやっているというか、どうしても「自分」から離れる事の出来ないヒトのようでして(笑)。
あ、私も最初から知っていたわけではなく、いくつか作品を見るうちにだんだん気付いたんです・・・。
>モラルドが駅で働く少年と語らうとこ、レオポルドが老俳優にからかわれたり、労働者を馬鹿にして追いかけられるくだりなども印象に残ってます。赤ちゃんも可愛かったし。
書かれたところは、全部良かったと思います☆
>ファウストの心理が意外とわかりやすく描かれてて、浮気してしまう理由
・・・これは申し訳ないけど、先日のお話はお話として、このファウストなる人物は、あれは一生涯治らない病気なんですよね~泥棒も含めてね~。
>後半はしみじみ「こいつクズだなぁ」と思いつつ、彼を突き放せないモラルドの気持ちもわかる気がしました。
これが女性版だとビリーを好きでいて、どうしようもない奴だと分かっていても、嫌いになりきれない(初恋だし)あのメガネちゃんになるのだと思います☆
>3倍くらい横に大きくなったサンドラが「何よそ見してるのよ!」バシーン!!みたいな未来を想像したら楽しかったです♪
・・・ごめんなさい、想像できなかったです。
一番大きい理由は、妻がいなくなって、自分の実家にすぐに相談に行けない人間だからです・・・
ある程度の年齢までお母さんは生きていて、妹を産んで亡くなったのでしょう・・・お父さんは妹を育てながら必死で、彼にはどこにも居場所がなかったかもしれない、
でも、あの病気でさえなければ、サンドラとその家族とうまく生きていけたと思うんですよね~ファウストは、申し訳ないけどいずれ失踪して野垂れ死にかと思います。
>「のらくら青年」を表すリミニ(フェリーニの故郷)の方言なんだとか。
この映画を再見して一番思ったのが、これは「アマルコルド」の後日談か?ということでした。 初見時に何故気付かなかったのか?今となっては分かりませんが、フェリーニ(を投影した主人公)は「アマルコルド」で、お母さんを亡くすのですが、もう滅茶苦茶で・・・
この作品ではファウストだけではなく、全員に(特に劇作家に?)自分を投影していたのでしょうね~?
普通、2・3年前なら再見すれば少しは何か出てくるのですが、この作品は全くかすりもせず、やっとお店が出てきてやっとそういえば店内を覚えている?かも?くらいでした・・・印象にないというか・・・。
宵乃さんのお好きな作品なのに、失礼いたしました!
あと、セントエルモスの彼らの大学時代ですが、私は大学には行ってないけど、高校時代でも「何であの子ら仲が良いのか?」と、疑問に思うんだけどずっと仲良くしている子たちはいました、優等生と不良がその中に一緒にいたんですよ~。
特にメガネちゃんはビリーをずっと好きだったので(初恋だし、くどいけど・笑)彼が結婚していても何となくたまにお茶とかしていたのではないでしょうか?自分から誘ってね・・・ビリーは今まで女性に不足したことがなかったので、メガネちゃんの事は女性とは見ていなかったように思います。
このたびの2作品、なんとなく時代も国も違うけどリンクしていてお話できて嬉しかったです☆
最後になりますが、イラストのシーン、よく見直しました♪
切ないシーンでした、アホを待つって大変です・・・。
こういう時間を使うのが友情・愛情なんですよね~。
「何してる?」はないよね~ホント病気です。
送ってくれた駅で働く少年の名前がグイドというのも、ビックリでした☆
(8 1/2の主人公の名前です・・・まぁよくある名前かもしれないけど?)
宵乃さんのお陰で、一度で終わりだったはずのこの映画を再見して、いろんな事を考えられました、本当に有難う!!! 長々失礼いたしました(ペコリ)。
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2015/11/10 19:39 miri〔
編集〕
いらっしゃいませ、さっそく再見してコメント下さってありがとうございます♪
> あれってこのヒトの後年の「カサノバ」に、ふくらまかしてアップしてあります・・・このヒトって自分大好き人間だから、あちこちの作品でそういうのをやっているというか、どうしても「自分」から離れる事の出来ないヒトのようでして(笑)。
そうなんですか~。彼の作品は意外と観てないものが多いので、他作品との繋がりは教えてもらわなきゃ気づけなさそうです。
こういう遊びというか、自分の目印みたいなのを折り込むのが好きな監督は、自由奔放に自分の好きなものを撮ってそうなイメージあります。ある意味、監督として必要な素質なのかも。
> これが女性版だとビリーを好きでいて、どうしようもない奴だと分かっていても、嫌いになりきれない(初恋だし)あのメガネちゃんになるのだと思います☆
まあ嫌いになりきれないのはわかるけど、セックスはしたくないですね~。彼の顔を見ても”性病”しか思い浮かばないです。
> でも、あの病気でさえなければ、サンドラとその家族とうまく生きていけたと思うんですよね~ファウストは、申し訳ないけどいずれ失踪して野垂れ死にかと思います。
そこまで(笑)
私はやっぱり、父親を失望させるのが怖くて相談できなかっただけで、サンドラに母親を見た後はもう子供が嫉妬するくらい甘えまくってると思います。彼女がいなくなって、夫としても男としても(父親に見限られ)息子としても何も残らない空っぽ人間になると気付いたからあんなに焦燥してたんだし。少なくとも彼女を失うほどの裏切りはしないと思いますね。
将来的にはバシーンと殴られて「快感♥」と思うくらいには調教されてそう…というか調教されたい願望が彼にはあります!ドMです、絶対に!(笑)
> この作品ではファウストだけではなく、全員に(特に劇作家に?)自分を投影していたのでしょうね~?
「アマルコルド」は未見なのでよくわかりませんが、全員に投影というのはわかる気がします。あのラストの過ぎ去っていくくだりに良く表れてました。
> 特にメガネちゃんはビリーをずっと好きだったので(初恋だし、くどいけど・笑)彼が結婚していても何となくたまにお茶とかしていたのではないでしょうか?自分から誘ってね・・・
情が薄い人間なので、あんまり初恋への思い入れとかわからないんですよね~。
そこがあの作品に共感できなかった理由なのかな?
でも、私もこの2作品のことをmiriさんとお話できて楽しかったです。こうやって話してなかったら、たぶんあの”いい子ちゃん”にイラッとしたまま終わってたと思うので…。
本当にコメントありがとうございました!
> 最後になりますが、イラストのシーン、よく見直しました♪
> 切ないシーンでした、アホを待つって大変です・・・。
> こういう時間を使うのが友情・愛情なんですよね~。
ありがとうございます。ホントですよね~、あそこでよくあんなことが言えたものです。辛抱強い彼がそのご「臆病者!」と怒るのも当然です。彼の表情を見て「描くならここしかない」と思いました。
> 送ってくれた駅で働く少年の名前がグイドというのも、ビックリでした☆
> (8 1/2の主人公の名前です・・・まぁよくある名前かもしれないけど?)
あぁ、そういえば同じ名前でしたね!
監督さんにとって思い入れのある名前なんでしょうか。あの少年から「8 1/2」の主人公にはなってほしくないけど(笑)