映画「レイルウェイ 運命の旅路」観た
読み:れいるうぇいうんめいのたびじ
原題:The Railway Man
製作:オーストラリア・イギリス’2013 116分
監督:ジョナサン・テプリツキー
原作:エリック・ローマクス
ジャンル:★ドラマ/戦争
【あらすじ】列車の中で出逢った女性パトリシアと恋に落ち結婚した初老男性エリック・ローマクス。幸せな結婚生活を送る2人だったが、彼女はエリックが第二次大戦のトラウマに苦しんでいることを知る。やがて彼が憎む日本軍の通訳・永瀬隆が今も生きてタイに暮らしていると知り…。
コリン・ファースとニコール・キッドマン主演の実話を基にしたドラマ。
序盤は男女二人が列車で出会って恋の予感な微笑ましい雰囲気で始まるんですが、結婚して彼がまだ戦争のトラウマを引きずっていると判明してからガラッと印象が変わります。ローマクスにとってかけがえのない最愛の人のはずなのに、過去に触れられそうになると冷たく突き放してしまう…。苦しんでいるからこその行動だと理解しつつ、このままでは一緒にいられなくなってしまうと行動を起こす妻パトリシア。短時間の中でこの二人の苦悩はしっかり伝わってきました。
彼の退役軍人仲間から聞き出した過去のエピソードは、「戦場にかける橋」と同じく泰緬鉄道の建設にまつわるものです。”死の鉄道”と呼ばれ「枕木一本につき作業員が1人命を落とす」とまで言わしめた過酷な強制労働が行われたようですが、本作ではそこよりもローマクスが体験した執拗な拷問が中心に描かれています。弱った仲間たちを励ますため、部品を集めてラジオを作ったのをきっかけにスパイ容疑をかけられてしまうんですね。
そして彼のトラウマに深く根付いているのが日本軍の通訳の青年ナガセでした。拷問を行った本人よりも彼らの詰問を通訳し続けたナガセの方がトラウマと結びついていきます。
この作品を手放しにオススメできないところは、ナガセへの憎しみは持っていても、それが間違っているとローマクス自身が自覚していると伝わってこないところでしょうね。彼が書いた原作ではしっかりそこは強調していて、ナガセが小声で何度も彼を励ましていたことも書かれているそうです。でも、この作品ではそこが省かれていて、見終わっても戦時中のナガセの心情はほとんど伝わってきません。
また、実際は1年半もの間手紙でやり取りして和解しているのに、この作品では彼に決着をつけさせるために退役軍人仲間が自殺して、それをきっかけに復讐するつもり(に見える)でナガセに会いに行くという謎の改変が。自殺エピソードは観てる間も「え、実話を基にしてるんじゃなかったの?」と違和感がありました。こういうショッキングな脚色はいらないよ…。
とは言え、自分ではどうしようもできなかった憎しみや恐怖、トラウマを乗り越え、相手を許すに至った人がいたという事実には驚かされました。誰もがこんなふうに乗り越えられるわけじゃない、それどころかほとんどの人は向き合うことすらできないような出来事だと思います。でも、それでも実際に乗り越え、お互い心を許せる友人になれた人がいたという事実は、戦争の悲劇を減らすことに繋がると思えました。エンディングで実際の二人の様子に心打たれます。
脚色が気になるところもあったものの「真実を知り、分かり合うことが大切」というメッセージは伝わってきたので、見た後に事実関係を調べようという気になったわけだし、映画の役割はきちんと果たしていたかと。
永瀬さんのことをもっと知りたいですね~。