原題:THE HAPPENING
製作:アメリカ’08
監督:M・ナイト・シャマラン
ジャンル:サスペンス/ミステリー
【あらすじ】ある日、NYのセントラルパークで突然、人々が自らの命を絶った。その不可解な出来事は、やがてアメリカ全土へ拡がっていく。人々がパニックに陥るなか、フィラデルフィアの高校教師エリオットは、妻のアルマたちと共に安全な場所を求めて避難を開始するが…。
ミステリー企画第一弾の作品は、なにやら巷では評判の悪いらしいこの作品にしてみました。普通に面白かったです。
まあ、人に勧められる作品じゃないし、何度も見返したい作品かというとそうでもない…。でも、ホラースイッチ入った私的には、悪趣味ながら十分ハラハラさせられ、最後まで引っ張ってくれる(妄想を掻きたてる)ホラー寄りミステリーでした。
残酷描写が苦手な人や、シャマラン監督と聞くと反射的に”どんでん返し”を期待するような人には向かないでしょう。あと、残酷描写目当てにホラーとか見る人には、逆に物足りないようで…。
確かにB級っぽさはあって、自殺に至るまでが想像できないようなシーンがあったり(ロープを手に外に出て木に登ってから首吊った?)、みんなまるで経験者のようにテキパキと確実に死んでいく様子は、その画を撮りたい気持ちが先行してる感じがしました。私はB級作品好きだからいいけど。
良かったところは、目に見えない何かに怯え、必死に生き残る道を考える主人公たちや、恐怖から保身的で攻撃的になる人々の姿、何かが起こっていると感じさせる風の不気味さなどかな。自分でもよく分からないけど、終末モノって妙に惹かれるんです。
危機を乗り越えていくうちに心のわだかまりを解消し、夫婦の絆を取り戻す展開はベタながらホッとしました。通信管ごしの会話がロマンティック!
ラストは意味深な感じで収束するんだけども、そんなことより妊娠したとわかって家の前でルンルンしながら待ってる奥さんが可愛すぎて、これだけでも観る価値あるかなぁと思ってしまいました。
「生半可な気持ちで娘の手をとるな」というようなことを言われ、それに応えるように最後まで頑張った奥さんなら、愛する家族と一緒にこれから起こる危機も乗り越えられると思えます。
<以下、ネタバレ>
植物が攻撃を仕掛けるのは、人間がたくさんいる場所か、怒りを発している人間の周りだけだったので、最後に彼らが助かったのは”丁度収束した時だったから”だけではなかったと思うんですよ。
エリオットとアルマが忘れてしまったという”愛の色”は、おそらく黄色でしょう。前半でジェスに「黄色は笑いたいときの色だ」と言っていたけれど、あれは彼女を元気付けるための出まかせで、あの時の彼女の感情は”母親に会いたい。ずっと一緒にいたい”というものだったはず。
それはエリオットのムードリングが黄色だった終盤も同じですよね。
人間が愛を感じた時、誰かと一緒にいたいと強く望んだ時に起こる体の反応こそが、毒を中和する特効薬だったのかもしれません。
<書き忘れ>昔から「グリーン・レクイエム」という作品が大好きで、その中に「植物は太古の昔、地球を支配するほど繁栄していたが、その時代の生物には有毒だった酸素を大量放出して死の星にするところだった」というような台詞があるんですよ。
それが印象に残っていたのでこの映画の設定もすんなり受け入れられたし、太古の生物が偶然ミトコンドリアを細胞に取り込み酸素を無害化できたように、偶然よくわからないまま主人公たちが生き延びたとしてもおかしくないと思えました。
また、”わからない”ことはとても恐ろしくて、強引でもいいから推測と憶測に基づいた推理を展開し「助かるための行動をとっているんだ」と自分を安心させる主人公には共感できます。