映画「駅馬車(1939)」観ました

原題:STAGECOACH
製作:アメリカ’39
監督:ジョン・フォード
原作:アーネスト・ヘイコックス
ジャンル:★西部劇
【あらすじ】アリゾナのトントから、ニューメキシコのローズバーグ行きの駅馬車が発車しようとしていた。乗客は銀行家ヘンリー、婦人会に追い出された女性ダラスと酔っ払いの医者ブーン、ウイスキー行商人ピーコック、大尉の妻ルーシーの5名。そして、護衛として保安官カーリーと賭博師ハットフィールドがつき、出発するが…。
集中力がない時に見たので、最初の30分くらいで付いていけなくて最初から見直す破目になったけど、とても優れた群像劇でした。
駅馬車に乗り合わせた8名の道中を描いた作品なんですが、旅の様子や人間模様を無駄なく濃密に描いているんですよね。100分未満の作品とは思えないくらい、観終わった頃にはそれぞれの人生が見えてくるような。
実際にはそれほど彼らの背景を詳しく説明しているわけではなく、ダラスがなんであそこまで嫌われていたのかとか、ハットフィールドが何者だったのか、ルーシーがあまり幸せそうに見えない…などなど、色々気になる点は残ったものの、言葉以外の部分で丁寧に描写されているので、どことなく前から知ってる人のような感じがしてくるんですよ。
例えばダラスがどんな問題を抱えていようと、彼女が聖母のように赤子を抱く姿(銃撃戦時は必死に庇って!涙)、表情を見たら、深い愛をもった優しい女性なのだとわかるし、ハットフィールドが絶体絶命の時にルーシーにしようとしたことは、彼なりに彼女を本気で守ろうとしていたことが伝わってきます。頑なだったルーシーも、最後はダラスに心を開こうとしてたし。
大変な旅のなかで、それぞれの生き様を垣間見ることができました。
印象に残ったのは、ダラス以外では飲んだくれブーンと酒商人ピーコックさんですね。
ブーンの方は、何があって飲んだくれになったのかはやっぱり謎のままでしたが、医者として自分以外の健康と幸せを願ってるひとでした。終盤、リンゴーとダラスの行く末を見守る姿は父親のよう。
赤ん坊を取り上げなければならないという時になって、コーヒーをがぶ飲みして一生懸命、酔いを醒まそうとしてるくだりも良かったです。
そして、個人的に誰よりも好印象だったのが酒商人のピーコックさん!
安全のために”急がば回れ”を実行したかったのに、飲んだくれに目をつけられ強引に馬車旅を続ける破目になった気弱な人です。
でも、自分の身が心配な一方で、きちんと冷静に状況を見て、周りに対して思いやりのある言動をとっているんですよね。5児の父親として、出産直後のルーシーのために出発は遅らせたほうがいいと、控えめながらきっぱり意見するシーンはカッコよかったです。
彼が矢を受けたシーンでは本気で心配してしまって、この時代の映画らしく即行で矢を引き抜くシーンでは「うわぁー、やめてー!」と声をあげそうになりました(笑)
ダラスとリンゴーの行く末より、彼の無事が気になって仕方がなかったです。
インディアン襲撃シーンが有名らしく、当然見応えある映像で手に汗握ったものの(河を渡った時、馬車に水は入らないのかな?)、やはりメインは旅の中で描かれる人間模様だったと思います。名作でした。
ちなみに、原題「ステージコーチ」は、4頭の馬が引く屋根つきの馬車のことで、都市間などの長距離移動に使われたもの。駅馬車と乗合馬車の違いは、列車とバスの違いみたいなものなんですね、知りませんでした。
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■ Comment
イラストのシーンも分からなくって、申し訳ありません。。。
>駅馬車に乗り合わせた8名の道中を描いた作品なんですが、旅の様子や人間模様を無駄なく濃密に描いているんですよね。100分未満の作品とは思えないくらい、観終わった頃にはそれぞれの人生が見えてくるような。
ひと言でいえばこういう作品でしたね~!
いつもながら、さっすが~!!!
>実際にはそれほど彼らの背景を詳しく説明しているわけではなく、
ホントにそうでした(笑)。
多分、当時はこの程度で良かったんだと思います。。。
>赤ん坊を取り上げなければならないという時になって、コーヒーをがぶ飲みして一生懸命、酔いを醒まそうとしてるくだりも良かったです。
ココはハッキリと思い出しました!!!
>5児の父親として、出産直後のルーシーのために出発は遅らせたほうがいいと、控えめながらきっぱり意見するシーンはカッコよかったです。
あぁここも! 私も同意見だったので・・・
宵乃さんが詳しく書いてくれたので、
上記2点以外もちょっと目に浮かぶ気がします。
>インディアン襲撃シーンが有名らしく、当然見応えある映像で手に汗握ったものの
ここが、再見時に「えっ?こんなに短かった?」と特に強く思った場所です。 初見時はここの印象が強くて! よく覚えていたのに、再見時はあまりにも「あっという間で」ビックリしました!
>ちなみに、原題「ステージコーチ」は・・・以下・・・
いつも勉強になります、有難うございます☆
BS3の美しい映像を保存したので、いつか見たいと思います。
またその時には宜しくお願いしま~す♪
.
2015/09/17 19:24 miri〔
編集〕
TB&コメントありがとうございました。
ひょっとして宵乃さん、この名作は初めてでしたか?
100分足らずの映画なのに、観終わってみると満腹感があるんですよね。これぞ傑作!
>ルーシーがあまり幸せそうに見えない
これは僕も謎で、大きなお腹を抱えて遠路遥々ご亭主に逢いに来るって、どうしても逢いたかった理由がそこにあるとしか思えません。何なんでしょうねぇ?
2015/09/17 20:58 十瑠
放送局はスターチャンネルでしたね? m(_ _)m
2015/09/17 22:06 miri
宵乃さん、こんばんは
酒商人ピーコックさん
>流石、目の付けどころが違う!
サンプルの酒をブーンにタカられる可哀そうな人って印象でしたが、仰るとおり、ちゃんと芯の有る人でしたよね。
黒澤さんの「七人の侍」は、この作品の影響を強く受けてるけど、彼は左卜全演じる与平のモデルかもしれません。
「七人の侍」絡みで言えばハットフィールドは久蔵。
ちゃんと日本にモデルは居ますが、ハットフィールドも入ってると思います、そして、それがルパン三世の五エ門になり「荒野の七人」のジェームス・コバーンに繋がる。
映画にも歴史の流れがある気がして、面白いです。
いらっしゃいませ!
イラストのシーンはインディアンの襲撃を受ける直前だったかな?
巻き戻しながらよさげなシーンを探したので正確にはわかりません。ピーコックさんが赤ん坊に手を置きながら「キリスト教徒のなんたらを~」と言ってました。
人物の背景だけでなく、この時代のこともあまり説明してなかったので、現代の日本人では理解しにくいところも多かったですね~。
> >5児の父親として、出産直後のルーシーのために出発は遅らせたほうがいいと、控えめながらきっぱり意見するシーンはカッコよかったです。
> あぁここも! 私も同意見だったので・・・
嬉しいです♪
ピーコックさんの普通ながらよき家庭人という感じにホッとしました。
> ここが、再見時に「えっ?こんなに短かった?」と特に強く思った場所です。 初見時はここの印象が強くて! よく覚えていたのに、再見時はあまりにも「あっという間で」ビックリしました!
かなりスピード感あって、初見時は圧倒されますよね。
再見だと、驚きが薄れる分、時間の短さが感じられるのかな?
スピード感を出すためにコマ落としをしてたようで、実際にあの距離を疾走するより短時間になってると思うし(笑)
> いつも勉強になります、有難うございます☆
いえいえ、自分用の備忘録も兼ねてるので。
こうやって気付いたことをシェアしあって、より作品を理解していけたら楽しいですよね。
> ひょっとして宵乃さん、この名作は初めてでしたか?
> 100分足らずの映画なのに、観終わってみると満腹感があるんですよね。これぞ傑作!
そうなんですよ、タイトルだけは知っていてずっと気になっていたんです。
観終わった後は満足感に浸りつつ、こんな名作を観ていなかったなんて~と悶えました(笑)
> これは僕も謎で、大きなお腹を抱えて遠路遥々ご亭主に逢いに来るって、どうしても逢いたかった理由がそこにあるとしか思えません。何なんでしょうねぇ?
やはり気になりますよね~。赤ん坊が生まれてからも心ここにあらずで…。
どことなく悲壮な表情だったので、ここは言葉で説明されなかったのがじれったかったです。
ただ、どこぞのコメントで「護衛の騎兵隊の隊長と別れる時の意味深な眼差し」みたいなことが書かれていました。…あいにく録画を消した後だったので確認できませんでしたが。
いらっしゃいませ。
ピーコックさん良かったですよね。前から知ってるような気がするキャラで、鉦鼓亭さんの”与平のモデルかも”という言葉で納得しました。黒澤監督にも影響を与えた作品だったとは!
> 「七人の侍」絡みで言えばハットフィールドは久蔵。
> ちゃんと日本にモデルは居ますが、ハットフィールドも入ってると思います、そして、それがルパン三世の五エ門になり「荒野の七人」のジェームス・コバーンに繋がる。
おぉ、久蔵ですか。確かに改めて考えてみるとハットフィールドのニヒルな感じと似てるかも。
ホント、繋がってるんですね~。
鉦鼓亭さんとお話できなかったら気付けなかったと思います。
コメントありがとうございました!
こんばんは。
なんとこの作品は劇場で観ました。
って、勿論リバイバルみたいなものですよ。
封切り当時は生まれてもいませんから・・・(^_^;)。
でも、30年以上前のことなので、内容は忘れています。
インディアン襲撃シーンはなんとなく凄かったなーという記憶はあるのですが・・・。
今はこのインディアンの扱いがヒドイと非難されているようですが、アメリカ映画って結局今でもどこかの国のことをメチャクチャに描いているので、変わっていないじゃんと思うのですが。
こちらもコメントありがとうございます♪
この作品を劇場でご覧になったことがあるとは羨ましいです!
こういう名作は何度でもリバイバル上映していいですよね。
> でも、30年以上前のことなので、内容は忘れています。
> インディアン襲撃シーンはなんとなく凄かったなーという記憶はあるのですが・・・。
小さいテレビの画面でもすごいシーンだったので、劇場の大画面だったら本当に度肝を抜かれそうです。
たまにオンエアがあるようなので、機会があったら再見してみてはいかがでしょう。劇場での感動も思い出すかもしれません。
> 今はこのインディアンの扱いがヒドイと非難されているようですが、アメリカ映画って結局今でもどこかの国のことをメチャクチャに描いているので、変わっていないじゃんと思うのですが。
ですね~、これより酷い描き方をしてる作品はたくさんありますし、今でも差別はあるのに表面上だけないように取り繕っても…。
この撮影の裏話をどこかで見かけたのですが、監督と出演したネイティブ・アメリカンの方々は深い絆で結ばれているそうです。監督の好感度アップでした!