映画「コンテイジョン」観ました

原題:CONTAGION
製作:アメリカ’2011
監督:スティーヴン・ソダーバーグ
ジャンル:★サスペンス/パニック
【あらすじ】香港から帰国した女性が2日後に急死した。同じような事例が世界各地で相次ぎ、WHOや疾病予防管理センター(CDC)は、ワクチン開発や感染ルートの解明に奔走する。そんな中、フリー・ジャーナリスト、アランはブログで情報を発信し…。
パニックものですが、怖そうだから肝試し企画用に録っておいた作品を鑑賞。
実際、いつこんな規模のパンデミックが起こるかわからないので、かなり背筋がゾクっとする内容でした。
パンデミックだけではなく、人々の間で恐怖が広まり、暴動や流言、強盗、殺人などのパニックに発展していく様子も静かに描かれています。宣伝文句の「【恐怖】は、ウイルスより早く感染する。」がピッタリ!
でも、そんな人間のエゴを浮き彫りにするタイプの作品の中でも、この作品は人間の醜さより”愛”寄りのエゴを描いているので、あんまり絶望的な気分にならないんですよね。
わかりやすいのが”多くの人を守るためにやむをえない対処”を行っているエリスが、自分の愛する人だけは特別扱いしてしまうエピソード。同じ立場なら誰でもやってしまうだろう行動ですが、彼はその後に一つの償いをします。
黙っていてくれた掃除夫に対する義理と、自分と同じ大切な人を想う気持ち、そして部下が死んだのに、自分はリスクを冒すことなく命令だけしていたという罪悪感もあったでしょう。
掃除夫と握手するシーンではホロリとしました。
また、序盤で悲劇に見舞われた父親ミッチの、がむしゃらに娘を守る姿も印象に残ります。
感染の可能性があれば娘の彼氏だって家に入れないし、こっそり会おうとすれば問答無用で追い払う。
でも、この状況が彼を頑固オヤジにしてしまっただけで、本当は誰よりも娘の幸せを願っているんですよね。彼氏にウイルスの危険がなくなったとわかれば、すぐさま娘のために粋なプレゼントを用意してしまう素敵なお父さんでした。
彼については、他にも「それで妻とはいつ話せますか?」と聞き返すシーンは彼の動揺がひしひしと伝わってきたし、自分を責める娘に「それは違う。お前に何もなくて本当によかった」と必死に伝えるシーン、娘が笑顔を取り戻しホッとしたところで、やっと悲しみが押し寄せてくるシーンなど、心に残る場面がたくさんあります。
群像劇ということで一人ひとりに割ける時間は少なめなんですが、行間を読ませるのが上手いというか、スムーズに登場人物たちの気持ちを追うことができました。
あと、細かいところでリアルなんですよね。
(医療費が高く)家で治そうという人が多くて感染拡大に繋がるところや、クリスマス商戦が近いからといって市民への注意喚起が遅れてしまうのがいかにもアメリカらしい…。
ひとりものすごく悪い奴がいて、まったく悪びれもしなくて救いようがない奴なんだけど、今の時代、本当にこういう奴は現れそうです。
まあ、調査中に亡くなった女性は、感染の恐れがあったはずなのに何故防護服どころかマスクすらしないの?って感じでしたが…。
ウイルスの専門的なことはよくわからなかったものの、まるで本当にこんな出来事がどこかで起こっているかのようでした。
突然始まって、いつの間にか収束していく…。その上、始まりはホント些細なことなんです。
現実もきっとこんなもんで、だからこそ人間は右往左往するしかないんだろうなぁ…としみじみ感じました。
タイトルには「(病気の)伝染」という意味の他に、「(好ましくない思想・感情などの)蔓延、伝染」という意味もあるそうです。
この映画の教訓は「手洗いはこまめに!」「ネットの情報を鵜呑みにするな!」ですね~。
にしても、マット・デイモン、グウィネス・パルトロー、ジュード・ロウ&ケイト・ウィンストレット(彼女だけうっかり忘れてました 汗)っていったら「リプリー」の4人じゃないですか!?
いつものことですが、観てる間はジュード・ロウしか気付かなかったです。とくにマット・デイモンはちょっと観ないうちにすっかり太めの中年男に…。役作り?
パルトローさんは、別の似た雰囲気の女優さんと未だに区別が付かないです(汗)
でも、私でも知ってる顔が多く、群像劇にもかかわらず見分けやすくて良かった♪
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■ Comment
たしかにこの企画にもピッタリな作品でしたね~!
>「リプリー」の3人じゃないですか!?
ついでにケイト・ウィンストレットさんも出ていたので、4人ともですよ~笑。
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宵乃さんの記事は読みごたえがあり、仰る通りと思えますし、
そのように考えさせられ、ハッとさせられ、良い作品でした。
・・・が、私はこの映画を見るちょっと前に同じ監督の「トラフィック」を見ていて、比べると言っては申し訳ないのですが、こちらの作品は上映時間も短く、なんでミッチの家には食料があるのだろう?とか思ってしまって(笑)。。。 「トラフィック」は麻薬関係でエグイ作品でしたが、より良かったので・・・ホント申し訳ないけど、ちょっと劣りました。
この監督の群像劇は本当に上手だと思います☆
この作品では特に、香港の方の村の描写が、ありえないような感じはしたけど、良かったです。 あの酷い人物についてはマジどうしようもなかったですね~。 明日は現実にならないとも限らない。。。そういう意味では、一番のホラーだと思います♪
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2015/08/09 14:20 miri〔
編集〕
妙にリアリティがあって、近い将来ほんとうにこのようなことが
起こりそうで怖かったです。
ジュード・ロウみたいな人はいっぱい出てきそうですね!
グウェネスを贅沢な使い方してるなぁと思ったのですが、最後に「1日目」を持ってきたんですよね。それでちょっと納得。
2015/08/09 16:40 mia☆mia
手洗い・うがいの重要さを再確認ですねっ
普段全く意識してないもんなあ
豪華キャストでしたが、
みなさん楽しんで役作りにはげまれてたように思います
とくにグゥイネス、皮べろんは、一回されてみたい(笑)
中々リアルなパンデミック蔓延映画で、日本の感染列島とかが激しくへぼくみえてしまいます;
そういう怖さを、いちばん感じますよね。
最近でも、アフリカや韓国で起きた病気の流行が日本に来たら…と不安に思ったものでした。
映画としては、私は、あんまり…
> ついでにケイト・ウィンストレットさんも出ていたので、4人ともですよ~笑。
あ!あの上流階級のお嬢様でしたっけ。若干印象薄くて忘れてました(汗)
記事に加えておきます…ごめんね、ケイト!
> なんでミッチの家には食料があるのだろう?とか思ってしまって(笑)。。。 「トラフィック」は麻薬関係でエグイ作品でしたが、より良かったので・・・ホント申し訳ないけど、ちょっと劣りました。
食料の件は私も思いました(笑)
銃みたいに知り合いの空き家からかき集めたのか…、防災意識が高くて保存食をまとめ買いしてあったのか?
「トラフィック」はずーっと前(「鳥」を初見した後くらい)に観た記録が残ってるんですが、まったく思い出せません。同じ監督の作品、しかもお得意の群像劇だったんですね~。機会があったら再見します!
> この作品では特に、香港の方の村の描写が、ありえないような感じはしたけど、良かったです。
> 明日は現実にならないとも限らない。。。そういう意味では、一番のホラーだと思います♪
人質が子供たちに勉強を教えてる風景が和みました。これも一種のストックホルム症候群かな?
あの女性が引き返せたのかわかりませんが(道を知らない?)、あのまま村で犠牲者が出ないことを祈ります。
ホント、背筋が寒くなる作品でした!
いらっしゃいませ!
ホント、いつこの規模のパンデミックが起こらないとも限らないので怖いですよね…。
しかもSNSが浸透してる今では、ここで描かれている以上にデマなどによる被害がでそう!
> グウェネスを贅沢な使い方してるなぁと思ったのですが、最後に「1日目」を持ってきたんですよね。それでちょっと納得。
あれが何気に印象深くて、女優としてはしてやったという感じかも?
しばらくしてからこの映画を思い出したら、まず彼女の頭の皮ベロンが思い浮かびそう(笑)
> 普段全く意識してないもんなあ
そうそう、人は毎日2,000回以上、顔に手で触れると聞いて、驚いてしまいました。
そこらじゅう”バッチイ”と思ってるくらいじゃないと、こういった感染は防げないのかなぁ…。
> みなさん楽しんで役作りにはげまれてたように思います
> とくにグゥイネス、皮べろんは、一回されてみたい(笑)
きっと脚本を見ただけで「なんかすごそうな映画だぞ」と気合が入ったんでしょうね。
あの皮べろん、いたずらグッズとかで出せば売れるかも(笑)
> 中々リアルなパンデミック蔓延映画で、日本の感染列島とかが激しくへぼくみえてしまいます;
観たことないけど、「日本沈没」と似たようなもんだろと思ってました。
「コンテイジョン」と比べると激ヘボってことは、比べなければ割りと普通ってことですかね?
まあ、今となっては観る価値なしってことか(汗)
> そういう怖さを、いちばん感じますよね。
> 最近でも、アフリカや韓国で起きた病気の流行が日本に来たら…と不安に思ったものでした。
エボラは死に方も悲惨ですもんね…。この作品の引き合いに出されてる「アウトブレイク」を観た時も怖くなったものです。
うがい・手洗いの大切さを訴えかける作品として、子供に見せたら…トラウマになるかな?
コメントありがとうございました!
宵乃さん、こんにちは!
なかなかご訪問できなくて本当にごめんなさい。久しぶりにお目にかかれる~♪と思ってやってきたら、"お空"がなくてビックリしました。今ここにコメントを書いていても「・・・ここ、宵乃さんのブログだよね??」とちょっと不安になっています(笑)。
だんだんと機能的&シンプルで、見やすいブログに変化していくのですね!何といってもここの主役は、宵乃さんの驚くほど美しいイラストと、映画を観た後に読ませていただくと改めて再発見ができる宵乃さんの鋭くも優しいレビューですもんね♪
この映画、観たのはずっと前なのですがかなりインパクトが強くでよく覚えていました。群像劇なのにこうやってキャラクター一人一人を覚えているということは、宵乃さんの仰る「行間を読ませるのが上手い」映画であり、本当に巧く構成された作品なのだと改めて思いました。ソダーバーグ監督って"職人芸"的に映画の作り方が巧いなーと思っていて、個人的に(勝手に)すごく信用している監督さんです。
ネット情報の鵜呑みとか、それらしい噂からくるパニックとか、人間だから最後にはどうしても公平性よりもエゴが出てくるとか、異常事態の時には人間の奥底にあるものが露呈してくるものですよね(そうえいば、311の時のスーパーなどでも似たような思いをしたのを思い出しました)。
でも、宵乃さんが書かれていてハッとしたのですが、この映画は「人間の愛寄りのエゴ」が描かれているから観ていてもどこか救われるんですね。すごく素敵な見方だなと思いました。
あー!それと、私、この映画のグウィネス・パルトローには本当にビックリさせられました。単にキレイに撮って欲しいと思っている女優さんだとばかり思っていましたが、冒頭からいきなりスッピン眉毛なしの土偶みたいな顔で泡吹いてぶっ倒れている姿を見て、これは本物の女優だな!と感動してしまいました。この作品以降、パルトローさんへの見方が180度変わりました!(笑)
2015/08/26 10:43 はなまるこ〔
編集〕
>「・・・ここ、宵乃さんのブログだよね??」とちょっと不安になっています(笑)。
あはは、驚かせてしまいましたね。見やすいと思っていただけたなら幸いです。
イラストを載せるのに背景画像があるのはなぁとずっと考えていたんですよ。これからはシンプル・イズ・ベストで行きたいと思います!
> ソダーバーグ監督って"職人芸"的に映画の作り方が巧いなーと思っていて、個人的に(勝手に)すごく信用している監督さんです。
そうそう、群像劇でこれだけ登場人物をしっかり印象付けるって、すごい技術ですよね。
前は”名前がスピルバーグに似てる監督”という覚え方をしてたんですが(笑)、最近では”見応えある作品を撮る監督”に変わりました。作品数も多いみたいだし、これから少しづつ観ていきたいです♪
> そうえいば、311の時のスーパーなどでも似たような思いをしたのを思い出しました。
それは怖かったでしょう…。日本でも震災の後に多少は暴動寸前みたいな状況もあったようですし、自分の身は自分で守らねばという意識が強い海外では、ホントこういう暴動が怖いんだろうなぁと思いました。
> この映画は「人間の愛寄りのエゴ」が描かれているから観ていてもどこか救われるんですね。すごく素敵な見方だなと思いました。
共感していただけて嬉しいです。
パニック映画の中には心が荒んでいく描写をメインで描いているものもありますが、やはり人間どんな時でも愛は必要だし、なくならないですよね。そういうところも描いているソダーバーグ監督は人間が好きなんだろうなぁ。
> あー!それと、私、この映画のグウィネス・パルトローには本当にビックリさせられました。
ビックリですよね~!
土偶みたいな顔(笑)もすごいけど、その上、頭皮まで!!
出演時間の短さに関わらず、彼女が一番印象に残ったかも。代表作になったりして(笑)
コメントありがとうございました♪