映画「グエムル -漢江の怪物-」観た
読み:ぐえむるはんがんのかいぶつ
原題:THE HOST/怪物
製作:韓国’06
監督:ポン・ジュノ
ジャンル:★パニック/ドラマ/ホラー
【あらすじ】ソウルの漢江(ハンガン)河川敷で売店を営むパク一家。ある日、いつものように人々が河川敷でくつろいでいると、突然、正体不明の巨大生物が人々を襲い始めた。そして、パク家の長男カンドゥの娘ヒョンソまで怪物に連れ去られてしまう。悲しみに暮れるパク一家だったが、携帯にヒョンソから助けを求める電話が入り…。
gyaoで観賞。久しぶりに再見したら、もう涙ボロボロで…。誰にも共感してもらえないけど、ダメダメな家族がひたすら少女を救うために体張って突っ込んでいく姿に泣けるんですよ。失敗しても失敗しても諦めない…あれらの描写が”笑わせようとしてる”と捉えられているのがよくわかりません。
ヒーローでも特別な力や頭脳を持ったわけでもない一般人が、実際に怪物を前にしたら、パニクってあんなもんだと思うんですよ。ハッキリ言って、銅メダリストのナムジュ以外は、普通だったらモブキャラでしょう。
そんな無力な彼らが、愚かしいほどにまっすぐ愛する人を救おうと必死にもがく姿に、泣けて泣けて仕方がないんです。
とくに、お父さんが銃で化け物を撃ち殺そうとした時、抜けてる息子が数え間違えたせいで残弾がないことに気付くくだり。普通なら焦ったり、怒ったり、ショックを受けたりするだろうに、彼はまっさきに息子にジェスチャーで「早く逃げろ」と伝えようとするんですよ。怪物を倒せない=自分の死ではなく、”このままじゃ息子が危ない”になるところに父親の愛情を見ました。
息子が自分のせいで脳の発達障害になったという罪悪感だけでは、こうはいきませんよね。
また、ことの始まりである”米軍が漢江にホルムアルデヒドを流す”エピソードは、信じられないことに実際にあった在韓米軍の”ホルムアルデヒド大量投棄事件”を基にしてるんだとか。アメリカの言いなりで、とんちんかんなことばかりやってる韓国政府の描写もあって、風刺が効いてます。
この映画がきっかけで在韓米軍基地撤去運動が起こったというのだから、映画の影響力の大きさがうかがえますよね。
そして、今見てもアグレッシブに動くモンスターのCGはなかなかのものでした。モンスターの造形が「パトレイバー」のパクリと言われてますが、この投棄事件後に漢江で発見された奇形魚を基にしてるそうです。
っていうか、あんなモンスター、ずっと前から似たようなのはいっぱいあったと思うし、陸で人を襲う魚の突然変異モンスターの映画をつくるとして、どれだけのひとがオリジナリティのあるモンスターをデザインできるんでしょう?
そして、その恐ろしいモンスターに捕まったヒョンソの闘いも、見てて胸が苦しくなりました。大きな排水構の中で、行き止まりの穴に隠れて化け物をやり過ごす恐怖、食べるものもなくじわじわと迫りくるタイムリミット。その状況で、幼い少年だけでも助かってほしいと願う少女の悲壮感。
そんな娘の気持ちを真っ先に汲み取ったカンドゥの父親らしい行動…最後まで涙が…。
誰が何と言おうとも、私にとってこの作品は家族愛を描いた名作です!
<以下ネタバレ注意!>
ちなみに、死因はおそらく肺が圧迫されたことによる窒息死でしょう。少年が生き残ったのは、彼女の腕と肩の骨でちょうど三角形の隙間ができてその中にいたから。でないと片方だけ生きてるのはおかしいし、拳銃じゃああの怪物の厚い皮膚を破って中まで到達するのは難しいはず。それらしき出血もなかったです。
もちろんツッコミどころは他にもたくさんありましたが、細かいところは気にせず観られました。