映画「風立ちぬ(2013)」観ました
製作:日本’2013
監督:宮崎駿
ジャンル:★ドラマ/ロマンス/青春
【あらすじ】大学卒業後、晴れて少年時代からの夢だった飛行機の設計士となった堀越二郎。1933年夏、ドイツとの技術差を痛感していた彼は、以前助けた菜穂子と軽井沢で運命の再会を果たすが…。
評判が微妙だったので期待してなかったけど、とても良かったです。宮崎駿監督作品で楽しめたのは「千と千尋の神隠し」以来かも。
アニメ的な表現が「何かに没頭する人」の感じを見事に再現していたし、「風立ちぬ」のタイトル通り風を感じる作品でした。
小説「風立ちぬ」の映像化作品はまったく入り込めなかった私ですが、この作品のロマンス部分は不思議と抵抗なかったです。花嫁衣装をまとって花の舞うなか歩くシーンは、美しすぎて泣けてきたくらい。
純粋可憐なジブリヒロインらしく醜さなんてひとつも描かれないけども、紙飛行機を飛ばして無邪気に笑い合っていた様子を思い浮かべると、それでもいいかなと思えてしまう。
少なくとも、彼らは限られた時間を「目一杯美しく幸せな時間」にしようと意識して過ごしてたのは伝わってきて、それが逆に描いてない醜い部分の存在を意識させなくもない…ような?
あと面白かったのが主人公のキャラですね。交通事故に遭わないか心配になるくらい「ふらっ」と夢の世界に入ってしまう人で、飛行機の事となると子供のように目を輝かせるところや、設計している時の真剣な表情、素直で端的な台詞回しがしっくりきます。
正直彼の声は好きではなかったものの(せめて学生時代にもう一人…)、彼の言動が面白くてそれだけで笑ってた時間が結構あったり。さばの骨の曲線を見て「美しい…」とか「牛は好きだ」とかツボでした(笑)
他には、効果音をボイスパーカッションでやっているところが凄いです。凄い=素晴らしいではないけども、地震の地響きを表現するくだりは恐怖を煽る感じで良い。ただ、プロペラ音などところどころ違和感があったので、使いどころをもっと限定した方がよかったとは思いました。…ボイパの人、口が疲れただろうなぁ。
好き嫌いが分かれそうな作品ですが、個人的には「美しいものを作りたい!」という情熱に共感できたし、その情熱のせいで最愛の人を最優先できない事、情熱の産物が多くの人の命を奪ってしまうという事への葛藤、罪悪感も、何度も描かれる彼の心象風景からしっかり伝わってきて、見ごたえある作品だと思いました。
映画じゃなく主人公への批判ばっかり書いてる人がいるけど、いつの時代にも、なりふり構わず好きな事に没頭して何かをやり遂げる人がいて、この作品はそれをよく描いていたと思います。
こういう天才タイプは生まれた時代に左右されず自分の使命を果たそうとするし、だからこそ科学技術の急速な発展があって、その恩恵(戦争ではなく天才の)にあずかっている以上、彼らの行動に対してまったく無関係とは言えないと思うんですよね。
責任の事を言うなら、主人公・堀越二郎ではなく戦争を起こしてしまう人間そのものにあると思います。
彼の飛行機だって時代が違えば人のためになっただろうし、戦時中だってパイロットを守るために性能を良くしようと頑張ったはずで、結局は使い方しだいでしょう。
別にこの作品は彼の行為を肯定しているわけじゃないと思うし、私はこの作品から、本来なら美しいものを作り出す才能を汚してしまう戦争なんて二度とごめんだ、という思いを感じました。
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■ Comment
手放しに賞賛出来ない作品ではあるのですが
確かに何かに情熱をもつ、夢を追いかける人というものはよく現われていましたね
それが、監督自身の事なのかどうかは別にして。
どうも、最後の作品にして飛行機設計者をもってきたところから、宮崎監督の趣味全開を意識してしまいました^;
まあ、いいんですよ 最後の作品だし
そこははりきっていきましょうという感じです
ただ夢のシーンが私はどうも好きになれなかっただけです
あまりにも主人公がそつなくこなしていくのも、天才ゆえんかもしれませんが、設計上の大きな壁にぶち当たるといった描写も欲しかったかもしれません
宵乃さん、こんばんは
ジプリを立ち上げ、自分の描きたい世界を送り出していった宮崎駿監督。
「ナウシカ」以降、「それで、いいんか?」が僕にとって多い監督でもあります。
抵抗感が少なかった作品は、「千と千尋の物語」と「風立ちぬ」くらいかもしれません。
(「となりのトトロ」も好きと言えば好き)
嫌いという訳でもないのですが、微妙で、自分にとって何か「こだわり」を感じる監督です。
宮崎監督、作品にユーミン使うからかも、僕はみゆき派と言うか「みゆき信者」
もしかしたら、そんなツマラン事で生理的に反発しちゃったりして。(爆)
> それが、監督自身の事なのかどうかは別にして。
> どうも、最後の作品にして飛行機設計者をもってきたところから、宮崎監督の趣味全開を意識してしまいました^;
飛行機が大好きなのもあるけど、やはり何かを生み出す事ができる人ですから、美しいものを作りたいという情熱の方に自分を重ねたんじゃないかなぁと思いました。
夢のシーンは抽象的なところもあって、受け取り方は人それぞれ違ってきそうですね。私的には、あのシーンだけで苦悩も後悔もぜんぶ補完できた気になってます(笑)
> あまりにも主人公がそつなくこなしていくのも、天才ゆえんかもしれませんが、設計上の大きな壁にぶち当たるといった描写も欲しかったかもしれません
空中分解しちゃったくだりはもう少し掘り下げても良かったかも…。ただ、それを乗り越えて完成するものがアレなので、それで盛り上げにくかったのかもしれません。静かに訴えかけてくる、特攻機の墓場のような心象風景が印象に残りました。
いらっしゃいませ、コメントありがとうございます♪
> ジプリを立ち上げ、自分の描きたい世界を送り出していった宮崎駿監督。
> 「ナウシカ」以降、「それで、いいんか?」が僕にとって多い監督でもあります。
アニメーターとしても映画監督としても凄い人ですが、決して万人向けではないですよね。”自分”が色濃く出てしまう人だと思います。
> 嫌いという訳でもないのですが、微妙で、自分にとって何か「こだわり」を感じる監督です。
わかります。私もどちらかというと苦手ですね~。天使すぎるヒロインとか、ロボット兵とか、巨神兵とか…。腐海、王蟲、メーヴェ、天空城、ねこバス、ジジ、飛ぶ描写は好きです。ハッキリ好きと言えるのは、鉦鼓亭さんが挙げた「千と千尋の物語」と「風立ちぬ」で、魔女宅以前は”好き”より”懐かしい”が大きいかな。
> 宮崎監督、作品にユーミン使うからかも、僕はみゆき派と言うか「みゆき信者」
> もしかしたら、そんなツマラン事で生理的に反発しちゃったりして。(爆)
父もみゆきさん好きです。この作品は音楽はあまり良かった印象がないですね。悪くはないけど、無難な感じで…。ラピュタとか聞いてて”ぶわぁ~”っとくるものがありませんでした。
あの「音」はボイスパーカッションだったんですね!
ボクは非常に好きでしたよ。
関東大震災が起こる直前の禍々しさなんてたまりません!
もうここだけで一本の映画を撮ってくれよ!
って感じでした(笑)
そうなんですよ、ボイスパーカッションだったんです。
私も関東大震災のくだりはゾクゾクしました。
でも、プロペラ音などは結構違和感あったかな~(笑)
> もうここだけで一本の映画を撮ってくれよ!
> って感じでした(笑)
確かに、あの大震災をジャパニメーションでまざまざと描いて1本の作品にしたら、それだけで凄いものが出来そうですね!
コメントありがとうございました♪
この映画は、映画館で見ました。
技術的にも画期的な試みがあったみたいで、そのせいか映画館を後にして、疲れ感が少なかったです。
音も良かったです。
別世界へいざなってくれた感がありました。
みなさん色々な感じ方があるんだな〜と感心してましたよ。
いらっしゃいませ、映画館でご覧になったんですか。飛行機や震災のシーンは大迫力だったでしょうね〜。
> 技術的にも画期的な試みがあったみたいで、そのせいか映画館を後にして、疲れ感が少なかったです。
> 音も良かったです。
お〜、そんなすごい試みがあったんですか。テレビだったので、伝わってこないところもあったかも?
ボイスパーカッションは劇場で聞いたら、さらにインパクトありそうです。
> 別世界へいざなってくれた感がありました。
> みなさん色々な感じ方があるんだな〜と感心してましたよ。
この宮崎さんのうみだした別世界を楽しめるかどうかで、かなり好き嫌いがわかれそうですよね。
ホント、色々な捉え方のできる作品だと思います。
そうだ、録画したのをチェックしてみましたよ。
なんとなんと、かえるめがねのシーンは番組のトリでした。すご〜い!!
来週、全国放送があるなら詳しく書かない方がいいですね。
旦那さん、プロって感じで素敵でした♪
全国放送をご家族で見られるといいですね〜!
こんばんは。
TVで観ました(^_^;)。
観終わって、恋愛映画部分は感動すらしました。
ただ、観終わって、数日経つのですが、結構悩める作品です。
うまく考えがまとまりません。
でも面白かったです。
絵もきれいだったし・・・。
ボイスパーカッション! 知りませんでした。
スゴイですね。
いらっしゃいませ、バニーマンさんもオンエアをご覧になったんですね!
> 観終わって、恋愛映画部分は感動すらしました。
> ただ、観終わって、数日経つのですが、結構悩める作品です。
色々と考えさせられる作品ですよね。私はダメなところのある人を真正面から描いた作品って好きなので(依存症ものに弱いです)、これも大丈夫でした。
原作に忠実な「風立ちぬ」を見てもまったく泣けなかった気がするのに、こちらはウルウルで…。
> 絵もきれいだったし・・・。
青い空に白い飛行機が映えてましたよね。風を描く描写もバリエーション豊かでよかったです。
> ボイスパーカッション! 知りませんでした。
> スゴイですね。
クチがとても疲れそうです(笑)
コメントありがとうございました!