映画「ヒトラーの旋律」観ました
一瞬だけお互いの立場を忘れられそうだったタバコ休憩。
原題:GHETTO
製作:ドイツ/リトアニア’06
監督:アウドリアス・ユツェナス
ジャンル:戦争/ドラマ
【あらすじ】1941年ナチ占領下のリトアニア。ユダヤ人のビルニュス・ゲットーを担当しているのは、芸術を愛するが冷酷な若きナチ将校キッテルだった。彼はユダヤ警察の隊長ゲンツを使い、ユダヤ人たちに劇場のステージでの上演を命じ…。
Gyaoで鑑賞。ネタバレもあるよ。
青年将校の気まぐれひとつで殺されかねないゲットーで、彼の思いつきから劇場を蘇らせ、死と隣り合わせの舞台をやる…という実話を基にした作品。
調べたところによると、すでに強制収容所でリトアニアのユダヤ人の大半が殺された後で、ドイツの物資不足を補うためか、生き残りをゲットーに集めて働かせていた時期の終盤頃が舞台みたいです。
働けば給料も支払われて、工場が稼動してからは食事にもそれほど困ってない様子だったのが不思議に見えました。
たくさんの死を見てきただけあってみんな生き残るために必死なんだけども、そんな中でも自分さえ良ければいいという人と、危険を顧みず同胞を救おうとする人たちがいます。
たくさんの人たちを救うために、ドイツにとって必要とされる生産性のあるゲットーでなければならないと、働けない老人や病人を選別して処分したゲンツの苦悩と覚悟に泣かされました。
そして、赤ん坊を助けるために身代わりになった女性にも…。
若き将校キッテルは、確かに残忍で狂っているけれども、彼を狂わせたのも戦争だというのが伝わってきます。時折見せる、年相応の表情、感情が哀しい。
ヒトラーなんてまるで尊敬していない彼が、唯一愛していたのは音楽だったのか…?
女性を撃った後の手が微かに震えていたように見えた事や、銃を棄ててサックスを持って行くのが印象的でした。
音楽がなければ観てられなくて、”命をかけた偽りのステージ”であっても音楽があるひと時は彼らにとって多少の救いになっていたというのが皮肉かも。彼の最後の置き土産は、そんな救いなんてかき消してしまうようなものだったけど…。
ところどころ(日本人には?)説明不足で状況がわからない事もあるものの、最後まで目が離せないものがありました。
ヒロインを演じる「暗い日曜日」のエリカ・マロジャーンをはじめ、キッテルやゲンツ、腹話術師やその相棒、金の亡者のヴァイスコフなど、俳優陣はみんな良かったです。
原題はゲットーで味気ないので、この邦題は良かったと思います。