製作:日本’65
監督:内田吐夢
原作:水上勉
ジャンル:★ドラマ
【あらすじ】昭和22年に青函連絡船沈没事故と北海道岩内での大規模火災が同時に起きる。火災は質屋の強盗殺人事件の犯人によるもので、その犯人のうち二人の遺体が転覆した連絡船から見つかった。函館警察の弓坂刑事は、事件の夜に姿を消した犬飼多吉の行方を追うが…。
いつか再見しようと思ってたらちょうどよい機会がめぐってきたので企画にかこつけて再見。しかも、藤田進さんの出演作を見ようという企画なのに、八重さんを描いちゃいましたスミマセン。でも後悔はしてない!
今回のお目当てである藤田さん演じる署長は、ホント渋くてかっこ良かったです。事前に”お茶を立ててた署長さん”と教えてもらってなかったらわからなかったと思うけど(笑)
ホント彼がいなかったらきっと捜査はグダグダでしたね。っていうか、DNA鑑定ができない時代であれは決め手にならないワケで、あの警察署はヤバイ。まあ、時代なんでしょうが。
で、イラストを描かずにいられなかった八重さんですが、なんか犬飼に出会った時からすでにテンションがおかしい。雷が苦手な犬飼をからかう様子はラリッてるようにしか(笑)
見知らぬ老婆にたばこを与える姿を見て一目ぼれしたのかな。本人的には証拠隠滅のつもりだったろうけど。
そして、惚れた男に大金をもらって救われて、辛い時は彼の優しさを心の支えにして、10年想い続けて神格化していったんですね。
じっくり再見してみたら、確かに彼女の想いが犬飼に届かないのは哀しい。彼女が必死に警察の目をかいくぐってきたおかげで彼の成功があるのに…。まあ、告げ口したら使ったお金を返さなければならなくなるかもしれないので、どちらにしろ彼女は苦労する運命で。でも、そう考えると犬飼という支えがあった分、今の方が幸せか。
あと、八重さんが娼妓になったのって、就職で悪い人に騙されたからなんですね?
遺体確認に来たお父さんが泣きながら「八重が村の娘たちとどこそこで働きたいと言い出し、信頼できるところと思って許したがひと月もしないうちに娼妓に」とか言ってたけど、初見では聞き取れてなかったみたい。
たぶん集団就職でいい働き口だと思って行ったら、怖い人たちに架空請求されて、払えないなら花屋で働け~という感じだったんでしょう。今でも外国人女性を連れてきて高額な渡航費を請求して娼婦として働かせる手口があるし。
一方、犬飼はというと、八重さんへの優しさはもちろん、脚が不自由?で身寄りのない流産をしたことがある女性を妻にしたのも、貧しい人たちに寄付したのも、同情はあっただろうけど、いざという時に自分をかばってくれる人が欲しかったんだと思う。
でも、そんな相手も信じられなくて…。
再見して、彼が火事や強盗、強盗犯殺しはしてないというのは信じられたものの、極貧を味わったというのも原因の一つとはいえ、誰も信じられなかったのは彼の心の弱さゆえだと思いました。
ただ、これだけは言いたい。「殺さなくても八重さんはあんたの秘密を守り通しただろう。そんな彼女を何故!」というふうに言ってた刑事さんも、取り乱してすがりつく八重さんを目の当たりにしていたら、「これじゃ仕方ないか」と思うはず(笑)
あれは何度見ても狂気ですね。犬飼じゃなくても、思わず突き飛ばして事故死させる可能性が数%はあると思います。
相変わらず私の中の八重さん像はヤンデレで、ラストで犬飼を海に呼び寄せたのは彼女だと思ってますが、もしかしたらそれも犬飼を助けるためで記憶喪失にでもなって別の土地に漂流してるかもと思ったり。
再見して、ますますこの作品が好きになりました!