映画「忠臣蔵外伝 四谷怪談」観ました
製作:日本’94
監督:深作欣二
原作:鶴屋南北
ジャンル:★時代劇/ロマンス/ホラー
【あらすじ】赤穂藩が取り潰しとなり、2カ月前に召し抱えられたばかりの伊右衛門は再び浪人の身に。彼はひょんな事から湯女宿のお岩と知り合い同居生活を始めるが、伊右衛門が吉良家家臣の孫娘・お梅に気に入られた事で彼の心は揺れ動き…。
gyaoで鑑賞。
忠臣蔵と四谷怪談がどう混ざるのかと思ったら、伊右衛門は浪士の一人だということです。っていうか、もともと四谷怪談って忠臣蔵のサイドストーリーだったのね。忠臣蔵は好きじゃないけど、これは面白かったです。
こちらのお岩は娼婦で、伊右衛門に惚れて妊娠して転がり込んでくる情熱的な明るい役でした。前に観た「東海道四谷怪談(1959)」では武家の娘で伊右衛門の一面しか知らずに騙された感があったけども、こっちは彼の悪い部分、ダメな部分も知っていて惚れてるから、それだけで伊右衛門の悪人度が軽くなった感じ。
この伊右衛門も10代の頃から金のために辻斬りするような残虐な男なんですが、悪い事する時の動機が”自分の居場所を失う恐怖”なんですよね。
辻斬りをしたのは、お金がないと病気の父親が死んで自分ひとりになってしまうと思ったからだし、お梅との結婚を取ったのは、自分のせいで赤ん坊と美しい顔を失ったお岩が、今まで通り自分を愛し、自分のために働くことができないと思ったからで、暗殺を引き受けたのは、もう他に自分の居場所がなかったからでしょう。
要するに、意気地なしで保身ばかりが強いダメ男なんですよ。
しかも、一度気を許した相手には意外と情を感じているのが、お岩の爛れた顔を隠すシーンや大石内蔵助と話すシーンから伝わってきて、そこがまた哀れ。
わたしが知ってる伊右衛門は本当に心の底から冷酷なサイコパスだったので、それと比べると自分の悪事を後悔して怯えるこちらの伊右衛門は人間味あって、恐さより哀れむ気持ちが沸いてきました。
罪悪感や復讐の恐怖に怯えて死に救いを見出したのが、伊右衛門だけでなく吉良も同じだったと言うのも、一緒のタイミングで死ぬのも印象的。
琵琶の音で赤穂浪士たちを見送るシーンは、どこか寂しげで、でも憑き物が落ちたようで爽やかささえありました。
あと、お岩さんが冷静に華麗に自分の敵討ちをしていくのがいいですね。必殺技を出す時のアクションが格ゲーみたい(笑)
そして、何よりもインパクトが強いお梅さんの狂いっぷりが最高でした。祝言の時だかに踊り狂うシーンは不気味ながらだんだんとキレイに思えてくる魔力!
きっと化け狐が人間社会に溶け込んでたんでしょう。どう見ても物の怪なのに弱いし(笑)
巷ではこの作品というと”おっぱいおっぱい”言われてますけど、確かに高岡早紀さんのおっぱいはすごかったけども、何気に人間の弱さが描かれていて結構お気に入りの映画になりました。