忘却エンドロール

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映画「アメリカ アメリカ」観ました

 | ドラマ  com(4) 
Tag:エリア・カザン 

アメリカ アメリカ
読み:あめりかあめりか
原題:AMERICA, AMERICA
製作:アメリカ’63 170分
監督:エリア・カザン
ジャンル:★ドラマ

【あらすじ】19世紀末のオスマン帝国、圧政に苦しめられていたギリシャ人の青年スタヴロスは、親友のアルメニア人バルタンから聞いた自由の国アメリカに憧れていた。だがある日、バルタンが殺されスタヴロスはこの国を見限る。一族で国を脱出するという父イザークの計らいで、彼はコンスタンティノープルへ旅立ち…。

3時間近くある作品な上に、めちゃくちゃ辛い展開が続くけど引き込まれる作品でした。エリア・カザンの自伝をもとにした作品で、主人公は彼のおじさんであるスタヴロス。
彼の人生がもう波乱万丈というか、ついてないというか…。友人を政府に殺され、一族の希望を背負って旅立ったら悪党に全財産を騙し取られ、頼りにしていたいとこは小物で、必死に働いて稼いだお金を娼婦に盗まれ…。
何度も何度も絶望の淵に立たされ、それでもなおアメリカへ行けば変わるはずだと希望を胸に立ち上がるんですよね。それはもう、何をしてでも必ず行ってやるというギラギラした決意と共に。

見ていて痛々しくて、もうそこらで妥協してもいいじゃないと思うことがしばしばありました。金持ちのお嬢さんと出会った時はとくに。不器量な娘として紹介されたけど、ぜんぜん不器量じゃないし気立てがいいし、なおかつ彼を愛してくれる女性です。彼自身、彼女のことを好いていたのに…。

それもこれも自分を信頼してくれた父の期待に応えるため。序盤で描かれるこの父親がとても素晴らしい人で、母親は頼りない息子に嫌味を言ったりするんですが、父親は息子をきちんと一人の人間として扱うんですよ。叱らなきゃいけない時は叱るし、でも人前で叱らずわざわざ部屋を出て叱る配慮。一族の命運をかけた大きな仕事を任せて、母親が心配で仕方ないと言えば「息子が失敗するようなら、そう育てた私たちは滅びる運命だったのだ」と諫めます。
旅先から送られてくる手紙に一喜一憂する様子から、息子なら必ずやり遂げると信じているのが伝わってきました。

他に印象に残ったのは、彼の同志とも言える青年ホハネスとの友情です。ボロボロの姿で旅をする彼と出会い、徒歩で金もなくアメリカを目指すと笑顔で言うホハネスに、スタヴロスは自分を重ねます。彼の姿に希望を持つんですよね。自分の靴をあげて旅の成功を祈るシーンが印象的。
金持ちの娘と出会って旅の資金を得た時にも、再会した彼のこともなんとかしてアメリカに行けるよう協力していて、色々自分勝手なところもあるけど憎めません。
だからこそ、ホハネスもああいう決意をしてしまったんでしょうね…。

全てを賭けて、それでもダメだったと狂ったように踊り続けるスタヴロスと、それを嗤う裕福な人たち。そして彼の叫びに気付いて周りを止めようとする女性に、悲痛な決意を固めるホハネス…。
無事アメリカに入国して心から嬉しそうにしている彼の心には、ホハネスの想いに報いるための覚悟があったと信じたいです。何十年もかけて親族をアメリカに呼び寄せたた事実からも、彼の決意の強さがうかがえます。

タイトルは、口を開けばアメリカへの憧れを語る主人公のことを、雇い主たちが「アメリカ アメリカ」と呼んでいたことから。
赤狩りで”密告者”となったエリア・カザンが、どういう思いでこの作品を撮ったのか、考えながらの鑑賞となりました。

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■ Comment

こんばんは☆

最近鑑賞されたのでしょうか?
私は6月22日で、もうすぐひと月になりますが
ある意味、忘れられない作品ですよね~!

イラストはまた涼しくなってから描かれるのでしょうか?
もしそうなら、楽しみにしています。
(もちろん、無理しないでね)

>3時間近くある作品な上に、めちゃくちゃ辛い展開が続くけど引き込まれる作品でした。

すごい作品でしたよね~。
私は私的映画と思ってしまいました。

>それでもなおアメリカへ行けば変わるはずだと希望を胸に立ち上がるんですよね。
>それはもう、何をしてでも必ず行ってやるというギラギラした決意と共に。
>見ていて痛々しくて、もうそこらで妥協してもいいじゃない
>ぜんぜん不器量じゃないし気立てがいいし、なおかつ彼を愛してくれる女性です。彼自身、彼女のことを好いていたのに…。

この辺まではそれなりに見ていたのですけど・・・。

>序盤で描かれるこの父親がとても素晴らしい人で、

あの土地で亡くなったそうで、筋を通す人でしたよね☆

>他に印象に残ったのは、彼の同志とも言える青年ホハネスとの友情です。

・・・友情・・・だったのでしょうか・・・。

>自分の靴をあげて旅の成功を祈るシーンが印象的。

ここは本当に応援していたと信じています。

>だからこそ、ホハネスもああいう決意をしてしまったんでしょうね…。

でもどうしてもここがね・・・許せないんですよ・・・私は・・・。

>無事アメリカに入国して心から嬉しそうにしている彼の心には、ホハネスの想いに報いるための覚悟があったと信じたいです。

宵乃さんのように思えればそれが一番良いのだと思いますし、私もそう思えれば良かったのに・・・。

>何十年もかけて親族をアメリカに呼び寄せたた事実からも、彼の決意の強さがうかがえます。

この事実は物凄いことで、それこそ何でもやったんだろうな・・・と、当時の移民の事を思い・・・。

>エリア・カザンが、どういう思いでこの作品を撮ったのか、考えながらの鑑賞となりました。

そうなんですよ、ここなんですよね・・・あの人の作品にはいろいろと恐ろしい思いが感じられるから、この人の甥なんだなあと思いました。

追伸:「白鯨との闘い」のこと勘違いしててすみませんでした。「あのこと」を書いたのかどうかは、その小説を読まないと分かりませんが、読むことは一生涯ないと思うし、私は書かなかったと思いたいのですが。。。


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2018/07/20 19:18  miri〔編集

>miriさん

いらっしゃいませ。この作品は本当に強烈でした!
見たのは6月24日ですね。最近、見てから記事にするのが遅くて…。miriさんの記事を探したんですが、見つかりませんでした。
イラストは涼しくなってから描く予定です。

> あの土地で亡くなったそうで、筋を通す人でしたよね☆

きっと少しづつ親族を送り出して、そのたびに息子を誇りに思っていたでしょうね。
あの時代、あの場所で彼らが生き抜くには、この父親のような真っ直ぐさと、主人公のような粘り強さが必要だったんだなぁと思いました。

> ここは本当に応援していたと信じています。

彼と出会ってアメリカを目指していると知った瞬間、主人公は彼との出会いを天の啓示か何かだと思ったんでしょう。友情というか、彼を自分と同一視してしまったんだと思います。

> でもどうしてもここがね・・・許せないんですよ・・・私は・・・。

miriさんは受け付けないだろうなぁと思ってました。
私的には、彼の決意よりも結核?の彼がアメリカに行けるように手伝ったことが引っかかってます。いくら彼を放っておけないと言ってもねぇ…。
この主人公の行為が悲劇を引き起こし、悪魔からの贈り物のような”幸運”に繋がったのかと。こういうところに監督の意図が感じられました。

> この事実は物凄いことで、それこそ何でもやったんだろうな・・・と、当時の移民の事を思い・・・。

そうですね、過去の罪を暴かれるきっかけになりかねない、復讐者を生み出すような犯罪には手を出さなかったと思いますが、あの女性のように冷酷な仕打ちを受けた人はたくさんいたかもしれません。
監督の両親がニューヨークで絨毯の輸入販売を行っていたらしいので、結局従兄と手を組んだということかな?

> ・・・あの人の作品にはいろいろと恐ろしい思いが感じられるから、この人の甥なんだなあと思いました。

この作品の前に「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」を見ていなかったら、私もmiriさんと同じように、この作品を受け入れられなかったかもしれません。トランボの「誰もが被害者だった」という言葉があったので、まっとうなやり方では生き残れない状況、そこに置かれた人の苦しみを考えながら見られました。おじさんの話を若い頃から聞いていただろうし、そういう精神は受け継いでいるでしょうね。

> 追伸:「白鯨との闘い」のこと勘違いしててすみませんでした。~私は書かなかったと思いたいのですが。。。

いえいえ、いつも言葉が足りなくてこちらこそすみません。小説にはさすがに書かなかったと思いますが、話が伝わってるということはどこかで話した人がいるんでしょうね…。死に際に孫にでも話してしまったのかな…。
2018/07/21 08:01  宵乃〔編集

夢の国アメリカ ?

こんにちは。
私も観ましたよコレ。
生まれた国を捨てる、ってのはよほど強い想いがなきゃできないことだよなぁとつくづく思いました。
そして何よりこの作品をドナルドだいとーりょーに観せたい、とも思いました。
2018/07/25 16:48  ケフコタカハシ〔編集

>ケフコさん

いらっしゃいませ!
ホント、そうですよね。世界各国で移民問題が課題になってますが、移民の人たち一人ひとりに様々な背景と強い想いがあるんだろうなぁと考えさせられました。今こそ多くの人に見てもらいたい作品かも。

> そして何よりこの作品をドナルドだいとーりょーに観せたい、とも思いました。

まったくです。ぜひ感想を聞いてみたいですよね。
コメントありがとうございました。
2018/07/26 07:53  宵乃〔編集
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