映画「アメリカ アメリカ」観ました
読み:あめりかあめりか
原題:AMERICA, AMERICA
製作:アメリカ’63 170分
監督:エリア・カザン
ジャンル:★ドラマ
【あらすじ】19世紀末のオスマン帝国、圧政に苦しめられていたギリシャ人の青年スタヴロスは、親友のアルメニア人バルタンから聞いた自由の国アメリカに憧れていた。だがある日、バルタンが殺されスタヴロスはこの国を見限る。一族で国を脱出するという父イザークの計らいで、彼はコンスタンティノープルへ旅立ち…。
3時間近くある作品な上に、めちゃくちゃ辛い展開が続くけど引き込まれる作品でした。エリア・カザンの自伝をもとにした作品で、主人公は彼のおじさんであるスタヴロス。
彼の人生がもう波乱万丈というか、ついてないというか…。友人を政府に殺され、一族の希望を背負って旅立ったら悪党に全財産を騙し取られ、頼りにしていたいとこは小物で、必死に働いて稼いだお金を娼婦に盗まれ…。
何度も何度も絶望の淵に立たされ、それでもなおアメリカへ行けば変わるはずだと希望を胸に立ち上がるんですよね。それはもう、何をしてでも必ず行ってやるというギラギラした決意と共に。
見ていて痛々しくて、もうそこらで妥協してもいいじゃないと思うことがしばしばありました。金持ちのお嬢さんと出会った時はとくに。不器量な娘として紹介されたけど、ぜんぜん不器量じゃないし気立てがいいし、なおかつ彼を愛してくれる女性です。彼自身、彼女のことを好いていたのに…。
それもこれも自分を信頼してくれた父の期待に応えるため。序盤で描かれるこの父親がとても素晴らしい人で、母親は頼りない息子に嫌味を言ったりするんですが、父親は息子をきちんと一人の人間として扱うんですよ。叱らなきゃいけない時は叱るし、でも人前で叱らずわざわざ部屋を出て叱る配慮。一族の命運をかけた大きな仕事を任せて、母親が心配で仕方ないと言えば「息子が失敗するようなら、そう育てた私たちは滅びる運命だったのだ」と諫めます。
旅先から送られてくる手紙に一喜一憂する様子から、息子なら必ずやり遂げると信じているのが伝わってきました。
他に印象に残ったのは、彼の同志とも言える青年ホハネスとの友情です。ボロボロの姿で旅をする彼と出会い、徒歩で金もなくアメリカを目指すと笑顔で言うホハネスに、スタヴロスは自分を重ねます。彼の姿に希望を持つんですよね。自分の靴をあげて旅の成功を祈るシーンが印象的。
金持ちの娘と出会って旅の資金を得た時にも、再会した彼のこともなんとかしてアメリカに行けるよう協力していて、色々自分勝手なところもあるけど憎めません。
だからこそ、ホハネスもああいう決意をしてしまったんでしょうね…。
全てを賭けて、それでもダメだったと狂ったように踊り続けるスタヴロスと、それを嗤う裕福な人たち。そして彼の叫びに気付いて周りを止めようとする女性に、悲痛な決意を固めるホハネス…。
無事アメリカに入国して心から嬉しそうにしている彼の心には、ホハネスの想いに報いるための覚悟があったと信じたいです。何十年もかけて親族をアメリカに呼び寄せたた事実からも、彼の決意の強さがうかがえます。
タイトルは、口を開けばアメリカへの憧れを語る主人公のことを、雇い主たちが「アメリカ アメリカ」と呼んでいたことから。
赤狩りで”密告者”となったエリア・カザンが、どういう思いでこの作品を撮ったのか、考えながらの鑑賞となりました。
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